エピローグ
君たちが初めて食べたものって何?
僕が初めて食べたのは”言葉”だった。
物心が着いた頃には本を破いては口に入れていた。
図鑑や絵本は色が綺麗なサラダ、
推理小説は煮込み料理、
恋愛小説は甘酸っぱいベリーやスカッとする炭酸飲料の風味がした。
沢山本を食べた…けど、僕は満足できなかった。
空腹だった。
そして、その渇きを癒してくれるのをずっと待ち望んでいた。
あの日までは……
ХХХХХХХХХХХХХХХХХХ
警笛の鳴り響き、人が波のように犇めく駅の構内。
自分の何倍にもなるであろう大きなスーツケースを持ち汽車から降り立つ少年……袮恩はその体格に不釣り合いなずり落ちる丸メガネを落としそうにながらホームに立つ。
「お待ちしておりました。袮恩さま」
言わせたのはグレーのスーツを着た男性。
飾らず気取らず……彼を例えるなら紳士なのだろうか、
「遅れたのはこちらの不手際だ、謝ることでは無いよ」
僕はそう彼に告げる。
そして、彼について行き駅前でタクシーに乗ると目的地に向かった。
「今回の依頼ですが……」
言葉を続ける彼をそっと静止する。
「わかっている」
そして、僕たちは目的の場所に着いた。
そこは大きな豪邸。
玄関をあけ、軋む階段をのぼり子ども部屋へとたどり着く。
音を立てない様に扉を開けると、ベットに横たわる少女がいた。
しかし、その子はただ寝ているわけではない。
黒い帯のようなものがぐるぐると彼女の周りを不規則に回っている。
「……呪いか」
それは呪い誰かが彼女に向けて放った忌々しい負の感情。
このような現象が起きるようになったのは1つの出来事が原因だった。
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〜南極の氷が溶けきった。
そのお陰で、海面は上昇。
人々はその時、2つの選択肢を迫られた。
1つ、標高の高い所に生活を移すのか?
もうひとつ、全てを捨てて月に行くのか?
金持ちはこぞって月に向かったそうだ、
そして、地球はというと……その驚きの再生能力で気温が下がったそうな
で、なんでその話が繋がるかと言うと……おやおや、察しのいい人は助かるよ。
物語へ戻ろう。
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今にも泣きそうな、スーツの男。
「む、娘は助かりますか?」
藁にも縋る気持ちで尋ねる。
僕は言った。
「大丈夫、すぐ済ませます」
口元を覆っていたマスクを外し、
左手でその帯を掴む。
帯は摘まれると釣り上げた魚のように微動するが気にしない。
そして、それを…口に持っていき、
「パクっ」
食べる。
「?!」
スーツの男は驚きを隠せない。
僕はゆっくり咀嚼して飲み込む。
帯はまだある今日はおなかいっぱいになりそうかな?
「ん……言葉喰いの食事シーンを見るのは初めてですか?」
スーツの男は首を縦に振る
「そっ、それ美味しいんですか?」
僕は答える。
「……魚の肝のようなもの、と思っていただけると(パック!)」
そして、数分で僕は完食する。
帯の無くなった少女は目を覚ます。
「パパ?」
スーツ姿の男を目で探す。
「ジュリィ!……あぁ、ありがとう」
僕は一言。
「これで依頼はおしまいです。依頼料は銀行かクレジットカードで」
男はありがとう、ありがとうと娘を抱いて感謝を述べている。
僕は邪魔しては行けないと目に見えた、その”ありがとう”
をひとつ摘んで口に入れた。
そして、その場を屋敷を歩いて去った。
帰り際に食べた言葉は一言で言うなら、
「あぁ、なんて”暖かい”だろう~」
余韻に浸りながら帰っていると、スマホが微動する。
僕は今は出たくないのでそっと電源ボタンを押すが、
再度、また微動。
さすがにキレた……
「はい、こちらNo.9!」
電話越しの声は女性のような男性のような、どっちつかずの中性な声。
「袮恩?連絡ついわ。次の依頼なんだけど……」
電話相手は内容を的確に伝える。
「わかった。向かえばいいね、」
そっと、通話を止め、辺りを見渡した。
「……」
どこだ?ここ……周りは草原の広がる荒野だった。
つづく??




