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「ふぅ………」
湯船に浸かりながら羽海は脇腹をさする。
穴が空いたと聞いた時は「そんなわけ」と思ったが、薄っすらと記憶に残っている。
傷跡は残っておらず、特に痛みや違和感などは無い。
こっちの世界で丈夫な身体じゃなかったら、助からなかっただろう。いや、そもそもこんな状況にはならなかったか。
「………おしっ」
両頬をペチンと叩くと羽海は風呂から出た。
向かった先のドアをノックする。
返事を待たずに開けて入室すると、優帆が目の前に居た。
「あっ羽海ちゃん!」
「おー優ちゃん! 合流してたんだー久しぶりです」
驚いた優帆の両肩を羽海はポンポン叩く。
そして右側を見るとベッドがあり、簡易的なテーブルの上にある料理を食べているイアと目が合った。
「……………」
イアは目を見開いて固まる。
「良い匂いがすると思ったらー美味しそうな焼肉定食ですかー?」
「………あ、羽海ちゃんも食べる? 食堂に行けば——」
「食べる食べる!ここで食べるから持って来てくだい!! イア先輩とお話ししたいので」
「———あ………わかった、持ってくるから待っててね」
「お願いしまーす」
パタン
優帆が部屋から出ると静まり返る。
「やーお久しぶりですね、イア先輩」
明るいトーンで羽海は話しかけながらベッド横まで歩いて行く。
「これだけは最初に言っておきたいのがあるんですよ」
「…………」
怯えた目でイアは羽海を見上げる。
「アタシは全っっっっっ然気にしてませんから!」
「………っ」
「正直ぼんやりとしか覚えて無いですけど、コロされかけた事…アタシは気にしません」
羽海はイアに手を差し出し、イアがそれを恐る恐る握るとぐいっと引っ張って抱き締めた。
「アタシは以前のように一緒に買い物したり映画観に行ったり食事しに行ったり仲良くしたいです! 少しずつでもいい! あの関係に戻りたいんです」
「———羽海……ちゃんっ」
「食事が終わったら、一緒にお風呂に入りましょうね!」
「おい」
「何がとは言いませんが、入りましょ? お背中お流ししますよー」
「臭いのか? 臭いってことなのかっ??」
「あっははは! アタシも同じですから!」
「うぅ〜〜今からひとりで入って来る!」
「ちょっとちょっと! これからアタシと食事するんだから! そらにまだ途中じゃないですかー!」
コンコン
その時ドアがノックされ、羽海は元気よく返事をする。
優帆がワゴンから料理を取り出しテーブルに並べる。
羽海は運ばれて来た料理に感動し舌鼓を打った。
優帆はイアが先程より元気そうにしているのを見て驚きつつも涙を浮かべて笑顔になった。
食事の後、二人は一緒にお風呂に向かった。
その時、食堂に居る莉衣奈たちの元にマホが慌てて帰って来たのだった。




