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王都から北西に向かった場所の荒野にユメは居た。
その上空、気付かれない距離で椿芽は見ていた。
椿芽の後方にマホとエルも居り、ユメの動向を観察している。
「………凄いユメがワープしているように見える」
エルがぽつりと呟くと、マホも頷く。
「あれがジナちゃんの能力なんだろうね」
椿芽はユメがヒメを眠らせたのを目撃してから尾行を開始し、一緒に王都に来ていたマホたちに連絡をとった。
駆け付けたエルからの視点では、ユメが数人にも見えたり突然別の場所に移動したようにも見えたりと混乱しているようだ。
そして、そのユメの影には沙智が潜んでおり様子を伺っている。
ユメが立ち止まると、目の前に巨大な門が出現し中から3人の人物が現れた。
「男の隣に愛弓先輩、その斜め後ろに美月先輩の姿を確認。マホ先輩、リーダーたちに連絡を」
椿芽が伝えるとマホは急いで引き返した。
「お帰り、彼女たちには会えたかな?」
男の言葉にユメは首を振った。
「いえ、誰にも」
「………そうか、しかしネズミは何匹か連れて来たようだよ?」
「!?」
男が手を挙げた瞬間、椿芽の頬を掠めるように弓矢が通過した。
「椿芽後ろ!」
エルの叫びと同時、矢が旋回して椿芽の背中に向かって来て突き刺さる寸前に鞭で防いだ。
「まずは挨拶代わり。次は本気で射るよ」
弓を手にした愛弓が第二射の体勢に入る。
「………何で着いてきちまったんだよ、沙智!」
ユメが振り返って沙智の潜む影を睨み付けた。
「最近話題になっているアイドルがよく来る街に、元お仲間さんが行ったら誰かしら釣れると思ったんだよな……」
サングラスの男の口元がニヤけている。
キッとユメは男を睨むが、気にした風もなく喋り続けた。
「魔王様の命令でな、不本意だがお前らの再会を許したって訳だ」
何を考えているのか判らず、椿芽たちはどう動くかを考える。
戦闘開始には早い。
あの男をどうにかして、3人を連れて帰る。
その為には……
「考えるまでもないだろ? 一度拠点に戻って作戦を練って来いよ」
「………何を考えているんだ?」
「きっちり4人で相手してやるからな。そうだな、鬼でも連れて来るといいな」
鬼…?
紅葉先輩のことか?
「…………っ」
「あまり考えてる余裕は無いぜ? さっき頬を掠めた矢には遅効性の毒が塗ってあってな。そろそろ身体が痺れて、動けなくなるぞ?」
先程から椿芽の顔の感覚がおかしい。
男の言った言葉は本当なのだろう。
椿芽はエルに拠点に戻る話をして、沙智にも連絡をとった。
そして、先に拠点に戻っているマホとも連絡をとり、話し合いをする事になった。
戻る前にエルは愛弓たち3人を見る。
正気を失っているとか、操られているとか、そういったものは感じられなかった。




