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8—3


 ヒメの城内部に敵が侵入したというので、莉衣奈(りいな)たちは探す事にした。


 

 一階の廊下を歩いて行くと中庭から声が聞こえてきたのでそちらを覗いてみる。


「ふっ」


「あーっ」


 ボールをドリブルしていた紅葉(もみじ)はディフェンスしていたイズナの横を抜けてシュートを放つ。綺麗な放物線を描いたボールは、仮で用意されたゴールを通過した。


「おー」


 パチパチと莉衣奈たちは拍手を送った。


「リーダー! 一緒にバスケどうですか?」


 爽やかな笑顔で紅葉は話しかけて来た。


「んーん、今侵入者探ししてるんだけど、2人は見てない?」


「いやー? 見てないね、侵入者って??」


 莉衣奈は2人に説明した。


 その間、柑奈とセミノはボールの取り合い(?)をしていた。


「その偽物って、見分けがつくんですか?」


 ボールをセミノにスティールされた柑奈はこちらに振り返って一言。


「直感だよ!」


「んー難しいですね」


「こっちでも探してみるよー」


 莉衣奈たちはイズナと紅葉と別れて捜索を再開した。


 一階には他には居らず二階へと移動した。


 すると声が聞こえて来た。


「リーダー! コイツがいきなり襲って来たんですけど!?」


「う、羽海(うみ)ちゃん!?」


 廊下でうさぎの首根っこを掴んで、ご立腹の羽海がそこに居た。


「偽物か確かめただけだし!」


「なーにを訳の分からない事を言ってんだこのウサギは!」


「目が……覚めたんだね…ぐす」


「…………え? 何ですか? この空気」


 涙を流した莉衣奈を見て羽海は困惑する。


 柑奈や風香(ふうか)同様に目頭を抑えて感動していた。


「え?! そんなに寝てたんですか??」


 説明を聞いた羽海は驚きの表情を見せ、自分の身体をチェックし始めた。


「うっわ、マズイですこれ。風呂ってどこですか?」


「あ、まもりちゃんって、どうしてる?」


「まもり? ベッドの横の椅子で寝てますよ」


 羽海はお風呂場の位置を聞くと、うさぎを雑に下ろしてから向かうのだった。


 柑奈は羽海が寝て居た部屋のドアを開くと、まもりが一人で寝て居た。


 毎日ずっと付き添って居たので、疲れて寝ているのだと思いその場を後にした。


 他の部屋を確認すると、(ネコネ)(メリイ)が重なるように眠っていた。


「ふかふか気持ち〜……すぅ」


「い〜なぁ私もあそこで寝たい!」


 気持ち良さそうに眠る(ネコネ)を見て、柑奈も吸い寄せられそうになる。


「別に寝て来てもいいぞ? こっちは捜索続けるから」


「そんな事言わないでよーまきちゃん」


 その他だと、イアが寝ている部屋だが。


「そろそろ大丈夫かな…?」


 あの日以来、まともに口がきけなくなってしまったイアは、部屋から出て来なくて引き篭もっている。


 食事は持って来ては居るが、手をつけた形跡が無く困っている状態だ。


 身体の傷は癒せても心の傷は癒せない。何かきっかけがあればいいんだが。


「イアちゃん、入るよ?」


 莉衣奈はドアをノックして、そっと開ける。


 閉めっきりのカーテンで中は暗く、中の様子がわからない。


「電気、つけるね?」


 声をかけてから、スイッチを押す。


 部屋が明るくなると、奥のベッドで布団をかぶって蹲っているのが分かった。


 同期のイズナやマホ、優帆(ゆうほ)にアミが何度か声を掛けているが返事が返って来る事は無かったそうだ。


「ふむ」


 その様子を見た真希(まき)は、ツボを出現させると調合を始めた。


「まずは、部屋の空気を変える。そして、コレだ」


 甘くて食欲を掻き立てられる香りが部屋に充満する。速攻で柑奈のお腹が鳴る。


「昼飯前にこれはヤバいよ」


「それから」


 ガバッと布団を剥ぎ取ると、顔色の悪いイアが虚ろな目でこちらを見て居た。


「起きてるじゃないですかー! 口を開けてくださーい」


 もの凄い空腹の音がイアのお腹から鳴る。


 小瓶に入った液体を口に垂らすと、イアの目がかっぴらかれた。


「荒療治で色々言われそうだが、これが一番ですよ」


「———ぁ」


「何があったか軽く聞いた程度ですけど、取り敢えず食える物食いましょう。ぐっすり寝たけりゃメリイの毛をオススメしますよ先輩」


「———ぅ……ぅ…」


 イアは久しぶりの涙を流した。


 莉衣奈たちは落ち着くのを待っている間、柑奈がキッチンへ行って優帆を連れて来た。


 後のことを任せて、莉衣奈たちは再び捜索を始めた。


 ちなみに、まだ城から出た者は居ないと、うさぎの見張り妖精で確認している。


「あんまり人が居ないね」


 他の部屋は外出中で誰も居なかった。


「んー……偽物、居ないね。他の場所ってある?」


 寝室以外の場所も確認したので、お手上げ状態である。


「あ、地下がありますよ。研究室」


「研究室?」


 風香が思い出したように言うと、すぐそっちに向かう事になった。




 チュドーン!!!


「なにごと!?」


 その研究室の扉の前に立つと中から爆発音が聴こえて柑奈が驚きながら扉を開ける。


「ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」


 煙の中から不気味な笑い声が聴こえる。


「こ、琥博(こはく)?!」


「あ! 実験体(柑奈)先輩! 良い所に」


「今。変な呼び方しなかった???」


「気のせいですよー! あ、真希先輩とセミノちゃんも! うさぎ先輩も久しぶりですねー」


「ここで何してるの?」


 莉衣奈が琥博の正面の机に置いてあるモノを指差して尋ねる。


「飲めば身体能力爆上がり! 禁断の薬ですよ」


「そいつはヤベーな」


 真希が覗き込むように、その薬を見る。


「皆さんはどうしたんですか? 実験台になりに??」


「んなわけ無いだろ」


 柑奈はジト目でツッコんだ。


 説明中………


「なるほど! でも誰も来てませんよ」


「他に地下を利用してる人は?」


「薬の以来をしに来る人くらいですかねー、今日は来てませんけど」


「ここも外れかー」


 研究室を後にすると、一旦食堂に戻った。


 するとテーブルの上に紙が置かれていた。


———ご飯、美味しかった。また会おう諸君。追伸、いくら見張りを付けても俺には無駄だよーうさぎちゃん。


「なに飯食ってんだああああぁぁああ!!」


 柑奈は紙をくしゃくしゃに丸めた。


 うさぎは無言で壁を殴った。



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