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「頼まれてた物、これで全部?」
「あと、アミセンパイから抱き枕が欲しいって頼まれてるっスよ」
晴は大量の荷物を抱えながら、買い物メモを見ている陽子に尋ねた。
「抱き枕ぁ? 使ってる人、見た事ないんだけど」
「いやアミセンパイは普段から抱き枕を愛用してますよ? こっちの世界では知らないっスけど」
「まー探してみるかぁ……てか吹雪とヒメはどこ行った?」
晴は周りを見渡すが人混みで姿が見えなかった。
「吹雪は本屋だったかな…ヒメはわからんスね」
「あー…取り敢えず、吹雪のトコに行くぞ! 少しは荷物待ちしてもらわんと!」
「虎になったら背中に乗っててくれるんスよねー」
「バカやろう! 街中で虎になったら騒ぎになるだろーが!!」
「冗談ッスよじょーだん!」
出店のある街区から離れた城に近い貴族などの金持ちが住む街区まで来たヒメは、晴たちが居ない事に気がついた。
「あれぇ…皆んなどこ行った? まったく、はぐれちゃダメとあれ程……」
踵を返し元来た道を戻ろうとした所で、人影を見た。
気になったヒメは、その影を追う事にした。
曲がり角を何度か曲がった先で、ようやく影の人物が誰なのかが分かった。
「———ユメ…?」
見覚えのある後ろ姿に声をかける。
その人物は、ゆっくりと振り返ると冷たい視線でヒメを見た。
一瞬恐怖を感じたが、仲良しなのだからと気にせず話を続ける。
「久しぶり、ずっと会いたかったよ」
「…………」
ユメは一言も喋らず。
ヒメは一方的に話し続けた。
「結構メンバーも集まって、全員揃いそうなんだ! ユメは他のメンバー…愛弓先輩とか美月先輩とか見てない?」
「…………」
「…………なんで、何も言ってくれないの?」
ヒメはユメに向かって歩き出して———
「———ヒメ、メンバーは全員で何人だ?」
「………………へ?」
ヒメは頭の中で数える。
「今合流してるのは3じゅう———」
「違う、全体の人数だ」
「———34人」
「———っ…………そうか」
「それが何———ユメ…?」
どこか寂しそうな表情でユメはヒメに向かって歩いて来る。
至近距離まで来るとヒメの額に手を当てた。
突然の出来事にヒメは恥ずかしそうに視線を彷徨わせる。
「———ここであった事は全部忘れるんだ。ヒメは夢を見ていたんだから……」
「———え?」
ヒメの視界がぐにゃりと歪んで、眠気が襲って来る。
ユメは一言「バイバイ」と告げると、踵を返して去って行く。
「ま……って……」
遠ざかる背中に手を伸ばすが届かない。
ヒメはふらついて、近くの壁にもたれ掛かる。
そのままズルズルと下がって行き、そこで意識が途絶えた。
「———きろ」
まどろみの中、身体を揺すられ声が聞こえる。
「起きろヒメ!」
ヒメはゆっくりと目を開けると、真正面に晴の顔があった。
軽く頬をぺちぺちと叩かれる。
「ふわぁぁぁああぁ……」
大きくあくびと伸びをしながら、ヒメは起きた。
「ったく、空から探さなきゃ見つかんなかったぞ、何でこんな所まで来てんだよ」
「え…?」
寝起きでぼーっとする頭をフル回転して考えるが答えは見つからなかった。
「………さあ? 何で??」
「こっちが聞いてんだわ! まあいい、陽子達ん所に戻るぞ」
「おんぶして〜」
「自分で歩きなさい」
頭がモヤモヤするが、寝起き直後だからと納得してヒメは歩き出した。
そう、何も覚えていない。




