7—34 チームCその5
「いったい何だったんですかね?」
扉を潜り再び一本道の通路になった所で、琥博は納得行かないとばかりに不満そうに言った。
それは他のメンバーも同じではあるが、莉衣奈は一つの仮説を立てた。
「さっきの、入口にテリトリーの結界みたいなのがあって、それを破壊したのが決定打だったって事…なのかな」
「それを踏んだ沙智と、扉を勢いよく開けて結界を壊し掛けた風香を失格者として参加させず、美しく歩いたマホ先輩を卒業生として排除しようとした…それ以外が在校生。ってやっぱ分かりませんね」
椿芽も言ってて混乱していた。
「結局、風香ちゃんが扉を破壊したんだから、失格者ってなんだったんだろーね?」
「それは風香が光の力を持っていたからだと思うぞ!」
最後尾を歩いていた沙智の後ろからひょこっと凛々が顔を出した。
「どこ行ってたんだよー」
「やー、試練には参加出来ないからさ。避難してたんだよねー」
沙智の撫でようとする手を躱しながら前へと進み出る。
「この先が魂が封印されている場所なんで、もうひと頑張りお願いしますね!」
「おう、任せろ!」
風香が元気よく返事をした。その姿を、莉衣奈と椿芽はじっと見ていた。
「………あの鬼の態度が一変したのが気になるんだけど、椿芽ちゃんは見てた?」
「………いえ、マホ先輩で手一杯だったので…」
「そっか………」
「すみません、私が頼んでおきながら…」
「ううん、私が気にしすぎなだけだから」
マホを交えて盛り上がっている風香たちを観察してみる。
やっぱり何も分からなかった。
次の扉を見つけて、風香はそっと両扉を開けて中を覗く。
中は真っ暗で何も見えなかったが、椿芽が覗き込むと
「中央付近に箱がありますね」
「じゃあ、入ってみますよ?」
「風香ちゃん、ちょっと待って」
中に入ろうとした風香を莉衣奈が呼び止める。
「……何ですかリーダー?」
「凛々ちゃんがアクマの力を持っているなら、光の力を待つ風香ちゃんは近付かない方がいいんじゃないかって思って」
「そう、何ですか? 凛々、どう??」
「んー…私の魂があるから、もしかしたら消滅しちゃうかなぁと」
「……そっか、分かりました! 大人しくしてます」
ゆっくりと開けられた扉を潜ると、周囲に灯りがパパパパと点き始めた。
足音が響く。
ズゥウウウゥゥゥゥン………
上から降ってきたのは、ミノタウロスのような化け物が一体。10メートルは超える。
片手には巨大な斧。
オォォオォォオオオオオオオォォォオォォ
頭に響くような咆哮。
ダンッッッ
高く跳び上がると、莉衣奈たちの頭上から降って来て、一目散に散り散りに避けた。
ミノタウロスは大きく斧を振り上げた瞬間、その腕に椿芽はムチを絡ませて止める。
そこに琥博が試験管を投げ付け、顔面で破裂すると液体から煙が出てミノタウロスが悶える。
そのタイミングで沙智が接近して跳び蹴りを喰らわし、さらに宙返りで顎を蹴り上げた。
上を向かせて背筋が伸びた所に椿芽が翼を広げて無数の羽を背中に突き刺す。
続けて莉衣奈が、間髪を入れず斬りつけた。
そしてトドメとばかりに、マホのファイヤーボールがミノタウロスに直撃する。
「凄い連携……普通の敵ならこれで終わりですね」
風香が軽く拍手をしながら言う。
「普通の敵、ならね」
近くに居た琥博がそれに答えると同時に、ミノタウロスは咆哮を響かせ、さらに身体が大きくなった。
ミノタウロスは腕のムチを掴み、逆に椿芽を引っ張り出そうとしたので椿芽は手放しそれを回避する。
するとミノタウロスは方向を椿芽に合わせて、猛スピードで突進し始めた。
椿芽は上空へと飛び上がり躱そうとしたが、ミノタウロスもジャンプし、椿芽の高さを超え、斧を振り下ろした。
「ぐッ!?」
斧の攻撃を受けたらひとたまりもないのは分かってはいるが、受け身の体勢を取らざるを得なかった。
そこへ間一箒で加速したマホが間に合い、攻撃を避けた。
「ありがとうございます!」
「礼はいらない! 来るよ!」
加速する箒に追い付きそうな速度でミノタウロスは走る。
斧を振り下ろしたり振り上げる事で風圧が発生し、空気の斬撃も飛んでくる。
沙智は影を移動し、ミノタウロスの背後に接近すると琥博から渡された注射器を背中に突き立てた。
「リーダー!」
沙智に呼ばれるよりも先に、莉衣奈は駆け出していた。
狙いは左脚。
薬を打たれた事により動きが鈍くなり、追い付いた莉衣奈が斬りつけるとバランスを崩し倒れ込む。
「まだ足りない」
莉衣奈は徐々に、感覚が研ぎ澄まされてくるのを感じた。
「遅い、もっと速くっ」
「リーダーも、闘いを楽しむタイプなんですね」
そんな沙智の言葉も聞こえないくらいに集中し、薬の効果で動きが鈍くなっていくミノタウロスとは対照的に斬撃の速度を上げていく莉衣奈。
「リーダー!!」
「———ぁ」
気付いた時にはミノタウロスは消滅していた。
「意識が、持っていかれそうになってますね」
「………風香、ちゃん?」
いつの間にか背後に来ていた風香に振り返ると、風香の右手が莉衣奈の胸に当てられて
「失礼しますね———はっ」
莉衣奈の身体から黒いオーラが放出され、中央の箱が勝手に開かれた。
「え、と…?」
「説明は後です、とにかく魂を回収して凛々を復活させましょう」
そう言うと、風香は箱の方へと歩いて行った。




