7—29 チームBその10
「おおーまさに壮観だね」
「感動しますかこれ?」
柑奈が頷きながら言うと、エルは疑問に感じた。
無数のゾンビが石化して動かなくなっている。
エルが上空から石化の光を浴びせた結果である。
ただこれには、後ろの柑奈や響にリアと避難している村人を巻き込む恐れがあったが、柑奈のカードスキルで運良くか都合良くか、それらを包み込む巨大な雪のかまくらで全員を守ってくれた。
「あの石化したゾンビたちには触れないように」
リアの先導で村人たちが移動を始める。
「向こうがどうなったか、見てきます」
エルは上空からそう言うとイアの方へと飛んでいった。
「…………」
ミカは気を失っているイアを観察していた。
「ヒメちゃんの治癒終わったよー汐梨ちゃん先輩」
「ありがとうネコネちゃん、後はミカちゃんのだけど…ミカちゃん?」
晴が往復しながら助っ人を連れて来ており、治療できるネコネを優先に他何人かは、あちこちで行動を開始している。
「あ、すいません。起きた時の様子が気になって……」
「そーよねーイア先輩は果たして、私たちの知ってるイア先輩なのか、先ほどの吸血鬼なのか…気になるわよね」
汐梨もイアの方を見る。
仰向けに倒れているのは変わらず。
その間ネコネはミカの治癒を黙々と進めていた。
「申し訳ございません姫様。何のお役にも立てずに」
「何を言う、駆け付けてくれて嬉しかったぞ! して、兵たちはどうしてる?」
「はい、逃げ遅れた者が居ないかの捜索と避難した者が向かったとされる西側へ向かっています」
「おーい! 闘いはどうなったー?」
そこへエルが上空から降下して来た。
「見ての通り終わったぞ先輩」
「それは良かった、柑奈先輩たちにも伝えてくる」
エルは再び上昇して飛び去って行ったのだった。
そして血相を変えて戻って来た。
「何だ忘れ物か? 先輩」
「ヒメとメイドさんっ来てほしいんだけどっ!」
「何事?」
「ね、ね、私悪くないよね!? ね!?」
「んーまー事故っちゃ事故……かなぁ」
救助に来た兵士、およそ50人が石化したゾンビに一人が触れたことにより連鎖的に石化してしまったのだ。
柑奈が大声で呼び掛けたところに起きた出来事である。
「ひびきちゃんの歌で何とかならないかな!?」
「解除はされるだろうけど、ゾンビも一緒に石化治ると思うんだけど…?」
「あ゛」
そこにヒメたちを抱えて飛んでいるエルが戻って来た。
「これは?!」
「触らないで!!」
手を伸ばそうとしたアーニーとヒメにエルが叫んで止める。
無事に合流した柑奈たちは、ヒメたちに説明した。
「絶対に触れないで、大変な事になるから。その注意で兵士の一人が触れて石化したと。あやつか」
ヒメがやれやれと首を振った。
「ダメと言われればやってしまう好奇心旺盛の馬鹿者が居るのですよ」
アーニーも呆れたように空を見上げた。
「どうしよう? ひびきちゃんの歌だとゾンビも復活しちゃうし……」
「んー……イア先輩が起きたらゾンビたちをどこかへ誘導してもらうしか……」
「どゆこと?」
ヒメの呟きに柑奈が反応した。
兵士もゾンビも復活させた所に、おそらく命令権があるであろうイアに人里から離れた場所にゾンビを誘導してもらう。という考えである。
「イアちゃんが居るんだ!」
「あ、そこからでしたか」
エルが軽く柑奈たちに説明した。
イアが目覚めたのは翌日のことだった。
「んーよく寝たー!」
イアは大きく伸びをしあくびをし、二度寝に入った。
「よく寝たんじゃないんかーい!!」
晴が勢いよく突っ込んだ。
「んー? あれぇセーちゃん…今何時ー? 打ち合わせって何時だっけぇ…」
「何を寝ぼけてんスか? 異世界に打ち合わせもレッスンも無いっス! ミカーイア先輩起きたぞー起きろー」
晴は後ろでカックンカックン船を漕いでるミカに声をかけてる。
「んあ? 寝てない寝てない、起きてるー」
イアがいつ目覚めるか分からなかったので、ずっと起きて見張っていたのだ。
「セーちゃん、ここどこ?」
「異世界で、大陸は分からんけど王都の近くっス」
「意味が分からないよ…え…? 夢の中? 私、昨日ダンスレッスン行って…」
「何ヶ月前の話っスか?」
「———は?」
「晴ちゃん、それ以上はいけない」
イズナが晴の肩をポンと叩いた。
「イズナ! 嘘だよね!? 夢だよね!? 感触がリアルなだけでっ———この血はナニ? 口の中……」
「…………夢は夢でも、悪夢だね」
「———ッ!? 嫌ああああああぁぁぁぁああああああああああああぁぁああぁぁあぁあアアアアアアァァァァアアアアアアアア!!!」




