7—26 チームBその7
ヒメが目を開ける。
目の前にアーニーの顔があった。
「おはようございます、姫様」
「のわぁ!?」
ヒメは勢いを付けて横に転がる。アーニーの膝から落ちたようだ、少し痛い。
アーニーは残念そうに立ち上がりヒメに手を差し出す。
「何故お前がここに居る!?」
「さあ?」
「さあ? とはなんだ! 自分から来たのでは無いのか??」
「村の中を散策していた所、目の前に眠っている姫様のお姿が! 理由はわかりませんが、取り敢えず膝枕で姫様成分を摂取しておりました」
「意味が分からんわ! って、村の中? ここが?」
見渡すと、どこかの一室でベッドがそこにあり羽海とまもりが並んで寝ていた。
そこでヒメは思い出した。
汐梨に投げられ(豪速球で目が開けられない)。
岩や森が無い所でヒメのスキルを発動。
すると城が現れ、吸い込まれるように中へ。
それから、それから……
「気を失っていたのか……」
「姫様、こちらの重症の方は…?」
「そのまま寝かせておいて、この城内に居る限り体力と傷は回復するから」
「かしこまりました」
お辞儀をしたアーニーを見て、ヒメは気付いた。首から下がっているのは渡した″王族の指輪″。
「その指輪……」
「そのまま放置も出来ず、取り敢えずここに」
「ん……はっ」
羽海の隣で寝ていたまもりが勢いよく上体を起こした。
「ここは?!」
キョロキョロと辺りを見回したまもりはヒメと目が合う。
「私のスキルで出した城の一室で、羽海先輩を救うにはここが一番です」
「素晴らしいです姫様! まるで神…いえ、女神様です!!」
「そちらのメイドさんは…?」
「私が以前勤めていた城の付人で、何故かここに居る」
「親友のアーニーと申します、以後お見知り置きを」
「こちらこそ、よろしくお願いします。岸まもりです」
「まもり様ですね、姫様とはどういったご関係で?」
「え、えと、ルピナスというアイドルグループの先輩と後輩の関係…です。はい」
「アイドル…とは?」
「お客さんの前で歌ったり踊ったりする…感じですかね、CD…は言ってもわかんないか」
アーニーはぶつぶつと何かを呟くと、ヒメの手をガッと掴んで言った。
「歌いましょう」
「断る」
「なぜ!? 姫様の美声を聴けばどんな傷でもたちまち回復しますよ」
「ならんわ! 大体アイドルは一人ではなく複数人で歌うのがメインよ! 馬鹿な事言ってないで早く戻らねば…」
「そうです姫様! 避難民はどこに?」
「たぶん、村の西側かと…」
アーニーの質問に、まもりが答え、簡単に状況を説明した。
「吸血鬼に単体で挑むのは危険です、姫様も再三注意されていましたよね?」
「仕方ないだろう? 連携が取れなくて邪魔になるんだから」
「嘆かわしい……そちらの、まもり様ですか?」
「いや、他の2人たが……何を鼻息を荒くしている?」
「私ならば姫様と連携を取れます! 実績もあるのでお分かりでしょう?!」
アーニーは鼻先が当たるくらいに顔を近づけ、ヒメは仰反って距離を取る。
「しかし、ここからどう戻るか……割と遠くまで飛んだしな」
ヒメは「うーん」と唸ると、アーニーは「それならば」と、白鳥を抱えてヒメに見せた。
「こちらのお友達の方にご協力頂いては? 飛べるのですよね」
「何で晴先輩がここに居るん!?」
ヒメの大声に反応したのか晴が目を覚ました。
目の前にアーニーの顔があり、それに驚いた晴は羽をばたつかせ、その勢いでアーニーは晴から手を離した。
「アタっ」
結果、晴は床に落下した。
そして晴に戻りたいと伝えると、すぐに城の外に出ようと1階に降りる。と、その前に
「私がここを離れても城はそのままだから安心して休んでいて大丈夫です」
それだけ言い残しヒメは部屋を出る。
先行していた晴とアーニーに追い付くと、その対面に大勢の人が見えた。
「ヒメちゃん! ここはヒメちゃんのお家かい?」
そこには、イズナやネコネ達が居て…
「随分と大所帯ですね」
アーニーがヒメに言うと、ヒメは苦笑した。
「いきなり城が建ったー! と思って来てみれば、ヒメのか? 凄いね」
陽子ら他のメンバーからの質問攻めにヒメは手をパンと叩いて
「急いで向かう所があるんで、質問は上の階に居るまもり先輩にお願いします!」
「おーそうなのかい? 邪魔してごめんよー」
イズナは謝りながら端に寄って道を作る。
「行きますよ晴先輩……って何してんですか?!」
晴はアミと優帆に揉みくちゃにされていた。
「助けてー! イズちゃん先輩ー止めさせてー」
「こらー急いでるって言ってんでしょーが! ユーちゃんもアーちゃんもやめなさーい」
アミと優帆は渋々と晴を解放する。
「気を取り直して、行くぞ! アーニー」
「はい!」
パッ
アーニーが城から一歩外へ出た瞬間、消えた。
「え…? 消えたんですけど!?」




