7—25 チームBその6
「これ、ヤバいな……」
上空から闘いを観ている晴は呟いた。
瞬間的に巨人化して攻撃を繰り出す汐梨だが、近くにエルやヒメが居ると連続して攻撃が出来ない。
ヒメは近接戦闘を得意とし、大きなハンマーで殴り掛かるのだが、目の前のイアだけでなく他の仲間の攻撃を邪魔しないように注意しなくてはならない。
それはエルも同じで、3人の連携は絶望的に取れていなかった。
イアはそれを利用しておちょくるかのように立ち回り、汐梨たちの攻撃を一瞬だけ躊躇わせる。
完全に遊んでいた。
「作戦ターイム!!」
「認めよう」
たまらずヒメが叫ぶとイアは動きを止め、話し合いの時間を与えた。
「気が散って闘えないんだけど、先輩たちはどうです?」
輪になってヒメが2人に質問を投げる。
「夜なのもあって、皆んなの姿が見え難いわね」
「そうなのか」
「どうしても攻撃のタイミングが重なる事があるし、初めての連携ってこんなに合わないんだなーって」
「考えてる事は同じのようだがな」
「———って、何混ざってんの!?」
エルが側にいるイアに向かって叫ぶと、イアは不思議そうにエルを見た。
「あまりにもお粗末だったから意見しようと」
「誰も求めてないよ!?」
「タイムを取ったら輪に混ざるだろ?」
「それ審判! プロ野球じゃないんだわ!!」
「お主たちの答えなぞ1つしかなかろうて、話し合いなどムダムダ」
イアはあくびをしながら言い放つ。
確かにその通りである。
3人は互いを見合って、拳を出した。
「「「最初はグー! じゃんけん———」」」
互いが邪魔にしかならないのなら、取る選択肢は一つ。
1対1で闘う事。
じゃんけんに勝ったエルは前に出て、他の2人は移動する。
「久々の戦闘だったのに」
唇を尖らせて不満そうなヒメを宥めるように汐梨は肩を抱き寄せた。
「エルちゃんは、じゃんけん強いからねぇ」
「あんな確率の勝負に強いも弱いもあるのか?」
「んー、記録はしてないから正確な事はわからないけど、ヒメちゃんはよく負けてる印象ね」
「なにをー!」
「汐梨先輩!!」
「うわビックリしたー!」
背後からの呼びかけに汐梨ではなくヒメが驚きを見せた。
汐梨はゆっくりと声の主の方へ視線を向けると、血塗れの羽海を背負ったまもりが、息を切らしながらそこに立っていた。
「まもりちゃん! どうしたの、羽海ちゃんは」
「重症でして、回復スキルとか持ってないですか!?」
「持ってないわ」
「私は持ってるぞ」
「! ヒメちゃん本当?! だったら——」
「ただし、広い場所限定でな……ここだと闘いの邪魔になるし、あの吸血鬼が攻め込んでくる可能性もある」
「どのくらいの広さがあればいいの?」
汐梨はヒメを背後から抱きしめ、頭に顎を乗せながら質問する。
「城が建つくらい」
「そんな、時間が無いのに」
「待って、ここから離れた広い土地ならいいのね?」
ヒメは無言で頷き、汐梨は全身を巨人化させた。
右の手のひらにヒメとまもりと羽海を乗せる。
「いくわよ」
「! 何だあれは、何をしている?!」
「陣大先輩…?」
戦闘中のエルとイアも巨大化した汐梨に気付く、汐梨は遠投するように大きく振りかぶり、ヒメたちを投げた。
「ちょっと、どゆこと!?」
晴が汐梨の顔の横まで来て聞くと、汐梨は晴を鷲掴みにするとヒメたちと同様に投げた。
「何やら悲鳴が聴こえたが、味方を投げて何をしている?」
「あら、エルちゃんはどうしたんですか?」
「衝撃波で飛んでってしまったわ。戻って来るまで暇での」
「……そうです———かッ」
「ぅおっと!」
汐梨は蚊を払う時のように下から上へ右手を動かす、イアはそれをスレスレで躱す。
「ほんと、静から動が速いな……会話の途中でもお構いなし、かッ」
パンッ
蚊をつぶすように勢いよく両手で挟む。
「蚊みたいにすばしっこいですね」
「くははっ! ならば捕まえてみろ」




