表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天使とサイナス  作者: 七数
5章 【破】
116/119

110話 「これだけ」

ヨーセルとディシはホールディングスの前へと戻ってきていた。

ヨーセルとミリィノがギャラリスと戦っていた場所。

ディシの両腕にはアレルがおり、既に動くことは無い。

そして、地面に膝をつけるヨーセルの前にはアレル同様動かなくなったミリィノがいた。


「…ミリィノ。ありがとう。

あとは…任せて。」


死してなお剣を離さないミリィノの手をヨーセルは両手で優しく包み込む。


「アンレグのことも連れてくる。

ここで待っていてくれ。」


「分かりました。ゼレヌスさんは…?」


「原型をほぼ留めていなかった。

連れて行くのは困難だし、メアリー女王には少し辛すぎると思う。」


「そう…ですか。」


冷たい判断であるが私はそれが正しいと思ってしまった。

ゼレヌスさんならばきっと恨んだり憎んだりはしないだろう。


ヨーセルとディシはこれからザブレーサへ向かう。

メアリー女王達はザブレーサへ向かっている最中だろう。

幸いなことに馬車はまだ一台、こういう時のために残しておいてくれていた。

二人は死んでしまった三人の死体を馬車の荷台へと乗せ、馬車を走らせ始める。


「ディシさん…スタシアの件で、、」


「…」


「あの時は言いすぎてしまいました。

すみません。

ディシさんは既にスタシアを見送っていた…それなのにもう一度見送るようなことをさせようとしてしまった。

すみません」


「いや、違うよ。俺は悪我との戦いで一度死んだ。

けど次に目が覚ました時にスタシアがいてさ、綺麗な青空と透き通った水が靴底くらいの高さまであってさ。

スタシアに聞くとそこは自分の心の中とか言うんだ。

普通は疑うところ、変に納得しちゃったんだよな。

だってスタシアの心と同じくらい綺麗で心地が良かったから。

そしてそこで少し思い出話とかをして一緒に天国でも地獄でも行こうみたいな話をした矢先、スタシアはもう一度俺に想いを伝えてくれた。

だから…今度はちゃんと答えたよ。」


「なんて…ですか?」


「ごめん、俺には好きな人がいるって」


「好きな人…」


「スタシアは泣いていた。

でも言葉を続けてくれた。

笑顔で そっか って。その後に『ディシくんにはやるべきことがあるでしょ?』って言ってさ。

サイナスで俺を生き返らせた。

だから、思っていた形とは違うけどちゃんと俺に対する想いについても返事はできたし、話もできた。

見送ることも出来た。

ありがとう…ヨーセル」


「いえ…私は何も。

先駆の意思を宿ったのに結局、ミリィノさんもアレルさんもアンレグさんも間に合わなかった。

私は…いつも上手く行かない。」


「ヨーセルは頑張ってるさ。凄くな」


「私はこの全ての原因は空虚の意思だと思っています。

スタシアが我慢ばかりし続けなければいけないくらい辛い人生を歩むことになったのも、アンバーが人を殺さなければいけない理由を作ったのも。

全て…全て…空虚の意思だと思います。」


(アンバーはきっと妹を殺した騎士団を始末した後、自分も死のうとしていた。

それなのにそうは出来なかった。

空虚が唆したから。)


「そう思う根拠はあるのか?」


「先駆を宿った時に私はアシュリエル・ミレー女王とお話しました。」


「!!」


「あの御方は英雄なんて呼ばれているがただ感情を殺された戦闘兵器でしかないと自分で仰っていた。

今ならその気持ちがわかる気がします。

先駆を宿ってから感情の起伏があまり起こらない。

ミリィノさんとアレルさん、アンレグさんの死に改めて直面しても悲しいとは思ったけど涙は出なかった。

ただスクリムシリを殺すことだけが私のすべき事と考えてしまう。

ディシさん…これが人のあるべき思考なのでしょうか。

私は戦闘兵器になんてなりたくない…」


「…もし感情が表に出せないのにどうしようもないほど辛くなったら俺のところに来い。

いつでも胸を貸してやる。」


「…ありがとうございます」


感謝を述べたあと、ヨーセルは馬車を操縦するディシとの距離を詰めて座り、ディシの太ももに顔をつける。

涙も弱音も吐くことなくただその場で動かなくなる。

ディシはそんなヨーセルの頭を優しく撫でる。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

二人は数日をかけ、ザブレーサに着いた二人。

荷台を見られた際に、警戒されたが二人の服装と騎士団紋章からユーランシーの者であると説得し中に入れてもらった。


「まずはメアリー女王を探そう。

恐らく中心地近くか中央城にいるだろう。」


「天恵感知で探してみます」


「無駄だ、メアリー女王はスクリムシリや天帝から身を隠すために天恵による感知を遮断している。

アシュリエル家のみに許された芸当だ。

スタシアでも見つけることが出来ないんだよ。」


「そう…ですか。」


「中央城に行けばアダル王がいるだろう。

ひとまず行ってみよう。」


馬車を走らせながら二人は街並みを見ていた。

活気溢れており笑顔がある。

以前よりも幸福度が増しているとディシは感じていた。

ヨーセルは初めて見る街の構造に少しだけ興味を唆られながら街を見渡していた。

国内でここまで綺麗な水を保つことが出来るのに驚いていた。

中央城に着くまでの時間で二人の間には会話は無かった。

互いに疲れているだろうという気遣いからだった。


そして中央城の門前に着く。

ディシとヨーセルは馬車を降りて中央城護衛兵にユーランシーからメアリー女王の護衛兼側近である旨を伝える。

その際に護衛兵二人がヨーセルを見て酷く脅えていた。

ヨーセルはそれに気づきショックを受けながらも、平静を装う。

護衛兵の一人が城の中へ入っていき、しばらくした後に出てきて門を開けてくれる。

馬車を中に入れ、護衛兵二人に荷台に乗っている三人を運ぶのを手伝ってもらう。

ヨーセルはミリィノを抱え、ディシはアレルを抱え、

護衛兵の一人がアンレグを抱える。


そして三人を許可を貰い、医務室に寝かせる。

ディシとヨーセルが日毎に交互に天恵による保護を行っていたため腐敗などはしておらず、できる限り綺麗な形を維持させた。


三人を寝かせた後、護衛兵と別れ二人はアダル王の側近の案内の元、メアリー女王とアダル王が待つ部屋へと着く。

そして部屋をノックしてから中に入ると、メアリー女王、アダル王が席に座っており、レイがメアリー女王の後ろで立っていた。


ヨーセルとディシの顔を見た瞬間、メアリー女王は立ち上がり二人に近づきまとめて抱きしめる。


「よ、かったっ、ご無事で…良かった…」


「メアリー女王もご無事で何よりです。」


アダル王はその様子を見ながら少しだけ頬を緩め、

レイは姿勢を崩さずに涙だけを流す。


ディシとヨーセルは空いている二つの席に座りユーランシーでのことを報告する。


「ユーランシーを攻めてきたのは事象、縛毒、悪我

の三人の天帝です。

縛毒はミリィノとヨーセル、悪我は俺とアンレグ、

事象はアレルとゼレヌスさんが相手取りました。

まずは悪我との戦いを俺の方から説明します。

正直、俺とアンレグの二人がかりでも全くと言っていいほど敵いませんでした。

こんなことを自分の口から言うのは気が引けますが、

スタシアが死んだことによるショックで

俺は全く本調子ではありませんでした。

それを考慮したとしてもあそこまで歯が立たないとは思いませんでした。

そして、俺とアンレグは心臓を破壊されて死にました。」


「「!?」」


「な、なら、何故…?」


「俺が次に目を覚ました時、スタシアに会いました。

その時は死んだんだなと思いながらスタシアと会話を交えながら歩いていたんです。

そして目的の扉間で着いた時にスタシアにこう言われました。

『好きだ』と。

俺はスタシアが息を引き取る前にもその旨を伝えられて答えられずに後悔を残していました。

そしてしっかりとそこで返事をしました。

それを聞いたあと、スタシアは俺にサイナスを使いました。

スタシアのサイナスは簡単に言うならば 死者の蘇生。

俺はそれで生き返ることが出来、二度目の悪我との戦闘の末に互いのサイナスの攻防により勝利しました。

俺からの話は以上になります。」


「ありがとうございます…そうですか、スタシアさんが。

本当に…あの子には、、助けられてばかりですっ、」


メアリー女王は涙が溜まる目を指で軽く擦りながら優しく言う。


「本当に…スタシアには感謝してもしきれません。

…ヨーセル、縛毒の方は頼む」


「はい。

私達はメアリー女王も知っているかと思いますが、早めにホールディングスの会議室に到着していました。

私が会議室に入った際に既にミリィノさんが座っており、私はその対面に座りました。

そこで軽く会話を交わした際に違和感を感じたんです。

目の前にいる人はミリィノさんでは無いのでは?と。

だってミリィノさんが私の前で弱音を吐くことなんてないし、ディシが辛い時でも最終的に立ち上がると信じるのがミリィノさんです。

けど目の前にいる女性は全く見当違いなことを言っていた。

だから あなたは誰ですか? と問いたと同時にミリィノさんが会議室入ってきたんです。

その瞬間に戦闘が始まりました。

最初はやや押され気味でした。

ですがミリィノさんが意志を使ったことで反撃のチャンスが出来たのですが同様に縛毒も意志を使い対抗してきました。

縛毒の意志は自身の通った道と自身の周囲に麻痺毒を出現させるものでした。

ミリィノさんは私を庇い、その毒の影響を受けかなり弱体化しました。

その際にミリィノさんは私にアレルさんの援護を行くように言い、それを拒否しました。

少しの口論の末にミリィノさんが折れてくれて、行かないなら私の事だけを見て、私の為だけに動いてと言うふうに言ってきたため、同意しもう一度戦闘が始まりました。

さっきまでやや押され気味だったのに弱体化したミリィノさんと私でどんどん縛毒を押し始めていきました。

あと一撃で殺せる…そう思った時に縛毒はサイナスを発動しました。

縛毒のサイナスは完全には理解できませんでしたが、

発動者と対象を精神空間へ隔離、そこの空間では縛毒が思い描いた構造物を生成することが出来る。と言ったものでした。

生成された構造物の全てに意志と同じ毒が適応されていたと思います。」


「ミリィノはサイナスを使わなかったのか?」


「まだその時は毒を完全に解毒できておらず、サイナスを使用しても縛毒との一対一は勝てないと思われたのかと…

そこでは一方的に縛毒押されました。

ミリィノさんは腹部を縛毒が生成した構造物によって刺され、私は大剣を腹部に刺し貫かれ毒を体内に大量に流し込まれました。

縛毒はそこでサイナスを解除し私を近くの建物へと投げ飛ばし、そこで意識を失いました。

意識を失っている時の状況は分かりませんが、

私が次に起きた時に全くの見慣れない光景がありました。

ホールディングスの作りであるのに微妙に今と違った部屋の形をしていたりと、、」


「…違った作り…ですか?」


「はい、…私はそれが他者の記憶だということをすぐ理解しました。

そしてそれが誰のなのか。

そんな時に目の前に私と同じ髪色をしたメアリー女王と酷似した女性が現れました。

アシュリエル・ミレー女王です」


「!?」


「そこで沢山の話を聞きました。

ミレー女王の 起こったこと、思い、そして…

先駆の意思のこと。

ミレー女王は意思は髪色が大きく関係していると仰っていました。

そんな中でも天命の意思である先駆、空虚、信愛の三つはそれが明確になると。

生まれつき純白の髪色の人は信愛の意思の資質があり、

毛先が白で他が黒の場合は先駆の資質がある。

毛先が赤で、他が黒の場合は空虚の資質があるということ。」


「事象の意思は無いのですか?」


「一応あるみたいなのですがミレー女王曰く、事象の意思は天命の意思の三つと比べると太刀打ちが出来ないほどに劣ると言っておられました。

現に私は事象の意思者から一撃も攻撃を喰らうことなく殺しました。」


「ちょ、ちょっと待ってください!

ヨーセルさんは…先駆の意思を宿っているのですか…?」


「順に追って説明するつもりでしたが言ってしまいますね。

私はミレー女王から先駆の意思を継ぎました。」


「そ、うなんですねっ、、ヨーセルさんがっ、、

本当にっ、、すごいお方です…」


「お話を続けます。

髪色には意味があると言いましたがそれは本質的なモノみたいです。

純白は優しさの塊

白と黒は微かな優しさと微かな正義

赤と黒は微かな悪意と微かな正義

純赤は悪意の塊

純赤は先駆と空虚のみがなりうる可能性のあるモノだと教えてくれました。

そして、ミレー女王は私には先駆の意思の資質があることと自分の意思を継いで欲しいことを言いました。

ですがそこで躊躇う理由もありました。

ミレー女王は感情の起伏が無くなり、笑いもせず泣きもせずただの戦闘兵器となってしまったと。

世界がまるで楽しく無くなった…そう言ってるようでした。

ですが、ミレー女王は切実に、何故意思があるのか、スクリムシリの存在意義、天恵とは何かを私に先駆の意思を使って突き止めて欲しいと頼んできました。

そこで…私は、、」


ヨーセルは両手をそれぞれ握りしめる。

怒りでもあるし悲しさでもある。

ヨーセルのその圧はその場にいる者だけではなくこの大陸内全てに悪寒と恐怖を本能的に感じさせるほど。


「ヨーセル…落ち着け…、、大丈夫だ。

ここに敵はいない。」


ディシの言葉で冷静を取り戻し謝罪をした後に言葉を続ける。


「私は…大切なモノを何から何まで奪っていったスクリムシリ…天恵、、そして ミレー女王に先駆と天恵を与えた原因でもある意思の意思 について、必ずその目的を暴きたい。

そう思いました。

それでミレー女王から先駆を引き継ぎました。

その時に約束しました。」


「約束ですか?」


「もし真実を知った際に納得出来る程の理由がなかった場合はこの世界を全て、先駆の意思を使って壊すと。

例えあなた方が止めようとも。」


ヨーセルのその発言に全員が固唾を飲む。

この場にヨーセルに敵う者などいなかった。


「ですが、我々には先にやるべきことがあります」


「やるべき事…?」


「空虚を殺すことです」

呼んで頂きありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ