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天使とサイナス  作者: 七数
5章 【破】
113/117

107話 「ユーランシー天上決戦⑧」

(なんでしょうか…この感覚。

まるで目の前にいるのにいないかのような気配。

このお嬢さんに何が起きた?

強さが全く読めない。)


「ギャラリス、慎重に行きましょう。

あのお嬢さんには何かが起こりました。

私にも感じることが出来ないほどの脅威的な何かが」


「うるさい!私とあなたで敵わない相手はこの国の連中にいない!

黙って合わせなさい!」


ハインケルはこんな時にも自己中心的なギャラリスに対して呆れる。

が、得体の知れない存在ならば逆にその方が今は良いまである。

最初から実力を測ることなく殺しに行く。

それが最善であるとそう脳が訴えかけている。


「意志『善喰』」


「意志『厄疫』」


二人は意志を発動さてヨーセルへとそれぞれの武器を生成しながら攻撃を仕掛ける。

互いの速度は先までの戦闘で研ぎ澄まされており、

当然今までのヨーセルならば反応なんて出来ない。

が…二人が剣を振りかぶった段階で二人の上半身と下半身が切断されていた。

そして切断面から亀裂が体のあちこちに広がっていき小さく破裂する。


「はっ?」


二人は何が起こったか分からないまま地面へと落ちる。


「な、何が!何が起きたんだっ!!ハインケルッ!」


「私に言わないでくださいよっ!

私にも何が起きたかなんてっ、」


ハインケルは切られた段階で本能的に治癒を初めていたため、その追撃に反応することが出来た。

手で地面を強く押し、間一髪のところでその攻撃を回避した。

だが治癒がハインケルより遅れたギャラリスは後方の建物と共に跡形もなく吹き飛んで消え失せる。


「ギャラリスッ、」


ハインケルは治癒を終えたとはいえ焦っていた。

ギャラリスが塵すら残らず消し飛ばされたことでも、天恵が目の前の女よりも減っているからでもない。

間違いなく自分一人では目の前の女には勝てないというのを直感していたからだ。

そしてハインケルの手は無意識に震えていた


(なんだ…この震えは…何に対して怯えているんだ?

いや、これは私の震えじゃない…

悪我の意思の…)


ここでヨーセルが動きを止めて南側を遠く見つめる。


(よそ見?今がチャンス、殺すならっ、)


ハインケルが攻撃を仕掛けようとしたら、見覚えのある男に攻撃を止められる。


「アンジ・ディシィッ!!お前、生きてっ、」


ディシはヨーセルの所まで下がる。


「ディシさん」


「ヨーセル…、行ってこい。

俺では勝てない…ヨーセル…事象の意思者を殺してこい。」


「ですが…」


「大丈夫…信じてくれ。

あいつは俺が必ず殺す。」


ヨーセルは感じていた。

ディシにも何か変化が起きたということ。

悪我の意思に勝てる程に成長していること。


「お願いします。」


そしてヨーセルは南国へと走り出す。


「良かったのですか?あのお嬢さんがいれば私など殺すのは容易でしょう?」


「そうだろうな。

だが、お前は俺が殺す。

俺が殺さないとだめだ」


「できると良いですねっ!」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「さてと、…来たのか」


「アンバー…」


「やぁ、ヨーセル。久しぶりだね」


ヨーセルはランスロットの足元にいるアレルの死体に目をやる。

その後にもう一度ランスロットを見る。


「やはり君はそうだと思っていたよ。

セルシャも目をつけるくらいだから間違いないとは思っていたけど、対面すると本当にバカみたいだね。」


ランスロットは目の前の存在に好奇心と恐怖が混在していた。

ランスロットの頬に汗がスーッと流れる。


「アンバー…あなた、どんな思いで私と話してたの。

どんな思いでスタシアのあの背中を追いかけたの。

どんな思いで…スタシアと戦っていたの」


「質問が多いな。

簡単に全部まとめて答えてあげるよ。

なんとも思ってなんかいないさ。

僕は僕の目的のために自分のすべきことを全うしているだけ。

そのためにスタシアは邪魔な存在だから葬るために戦った。

まぁ、結果的にボコボコにされたんだけどね。」


「…」


「でも君に対しては好奇心があったよ。

僕だけじゃない。

僕らをまとめてる空虚の意思者であるセルシャ…

それとさっきから君が言っているスタシアだって好奇心で君を気にしていた。」


「スタシアは…」


「スタシアは違うとか言うの?

現実を見なよ。現に君は特別になった。

僕やスタシア、セルシャなんかよりもずっと高貴な存在へと生まれ変わった。

そして同じ天命の意思である僕らがその前兆を見逃すはずがないでしょ。」


「もう…いいよ。アンバー。

あなたとは仲良く出来ると思ってた。」


「事実仲良くできてただろう?」


「アンバー。あなたを殺す」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「お前を殺す前に一つだけ質問がある。

ヨーセルに何が起こった?」


「あなたを殺す前に質問に答えてあげますよ。

私が知りたい。

あれは同じ人間の尺度で測って良い存在ではなくなっていた。

目の前に立たれてもまるで存在が認識できないほどに異質。

あれを前にして初めてランスロットやセルシャが言っていた意味が分かりました。

推測にすぎませんが、あのお嬢さんは『先駆の意思者』

になった。」


「!?…先駆、」


「あなただって何度も飽きるくらい聞いたことがあるでしょう?

この国の王族であるアシュリエル家で産まれた英雄。

アシュリエル・ミレーという存在を。

始まりの意思『先駆の意思』を唯一宿った存在。

それと同じ存在が今、この場にいるんですよ。

あのお嬢さんは今ここで殺しておかなければこの大陸にとって大きな災いを起こす。」


「そうか…それならお前を殺した後にゆっくりと対策を考えるとする。

もう喋ることは無い。」


「ふっ、忘れた訳では無いですよね?

あなたは一度私に負けている。

スタシア・マーレンの想いに対してろくな返事も出来ずに…」


「いや、もうしたさ。しっかりとな。」


「…?、何を言ってるんだか。

頭がさらにおかしくなったのですね。可哀想に、」


ディシは短剣を生成、ハインケルは鎌を生成し、互いに武器をぶつけ合う。


(先程よりも力がっ、それにこの男…天恵の上限が存在していない!?

いや、上限は存在している。

ならばなんだ、この天恵の量は…

まるで二人分の天恵を有している程の…)


「あいにく俺は心の中が読めるんだ。

お前が思っていること通りだよ。

俺は一回死んだ。

だが生き返って二人分の天恵を手にした。」


スタシアはディシに対してサイナスを使った際に

意志でディシの破壊された心臓を治癒した。

そして、


信愛の意思 サイナス『愛者の絆』

・この世界で禁忌とされた死者の完全蘇生。

対象の肉体を0から完璧に作り出し、天恵も上限分作り出す。

・『愛者の絆』は自身に使うことが出来ず、自身が死んだ時のみ他者に使うことが可能。


スタシアとディシが言葉を交わした空間はスタシアの心の中であり、あの空間の綺麗さがスタシアの心の綺麗さに直結していた。

そしてあの場でディシを受け入れた瞬間からスタシアはディシの新しい肉体と天恵の生成を始めており、

それと同時に現実に残っている破壊された心臓、失った天恵、傷だらけの体を『愛憎』によって治癒した。

そして新しく生成した体と現実に残っている治癒した体を 『意思』によって合成させた。

つまりディシの身体機能も天恵も二人分が足し合わされたもの。


(ありがとう…スタシア。あとは任せてくれ)


「意志『共鳴』」


(意志…アンジ・ディシィに与えた攻撃が私に返ってくるという認識で間違いない…)


だが、ディシは短剣を自分の腹部へと突き刺す。

と、同時にハインケルの腹部から血が吹き出す。


「っ!?!?」


「残念だったな…」


『共鳴』は即死や致命傷になりうる攻撃の身代わりは不可能。

逆を取ればハインケル程の強者ならば腹部を突き刺す程度では致命傷にならない。


(仮に致命傷になり得ないとは言え、ありえない事だ。

なぜ自身を攻撃して私に返ってきた?

まさかっ?)


ディシはスタシアと同様に努力で類まれな天恵の操作を手に入れた。

スタシアには劣るがその優秀さはアレルと同等以上。

そのため『共鳴』の攻を三人まで選ぶことが出来る。

その攻は個々ではなく全て繋がっている。


ディシは自分に攻と守の二つを付け、ハインケルには攻のみを付けた。

ディシ(攻)がディシ自身(守)に攻撃し、

そのダメージがハインケル(攻)へと移されたのだ。


(馬鹿げてるっ、少しでも天恵ミスをしたら自滅することになる。

どれほどの細かな天恵操作がいると思って…)


「っ!!」


ハインケルは即座に治癒を始め、鎌を真ん中で真っ二つに折る。


「サイナスッ!!『叶嶽(きょうがく)(つたえ)』」


ハインケルのサイナスに即座に反応したにも関わらずディシは視界が見えなくなり、音も聞こえず、服や手に持つ短剣の感覚すら無くなる。


悪我の意思 サイナス『叶嶽の伝』

・対象の五感を全て失わせる。

そして五分の制限時間内に対象を殺すことが出来なければ使用者の五感の一つが永久に失われる。

また攻撃をする際、毎回自身の五感のどれか一つを失う必要がある。

攻撃が終了した段階でその部位の五感は治る。


(視界も音も剣を持つ感触も何も無くなった。

何も感じない…。

五感を失う類のサイナスかっ、

あぁ、そういう事か…こいつに使い道なんてないと思ってた。

けどこういう時のためだったんだな…)


「サイナス『使命の(しるべ)』」


結命の意思 サイナス『使命の道』

・『共鳴』の効果を拡張したもの。

対象にとって致命傷になりうる行為を自身が受けた際、自身と対象のどちらともに共有させる。


(っ!?目が!音も何も感じないっ!?

そうですか、これがあなたのサイナス!)


ディシとハインケルは極限の集中に入っており、

互いにもう五感など必要がなかった。


「「最後に信じるのは己の直感のみ」」


見えることなんてない、聞こえることもない、自分が武器を持っているかどうかすらも分からない。

だが、確かにそこにいると確信していた。


ハインケルとディシの武器がぶつかり高い音を出し続ける。

二人はその音も感触も感じることは出来ない。


「意志『共鳴』」


ディシのサイナスは『致命傷または即死になりうる行為を自身と対象に共有させる』である。

つまり意志とは違い、それ以外の攻撃は共有されない。

だがサイナス中に意志を発動した場合、ディシは天恵が尽きるまで相打ちか勝ちの二択しか無い。


ディシは目の前の人物を直感で切りつけ続ける。

どこを切れているか、どこを切られているかなどは今はどうでも良い。

痛みなんてない、死ぬまで切り続けるという信念のみ。


すると光が差し込む。

先程まで感じていたのに酷く久しく感じる光。

自分が地面を踏んだ時になる小さな石を潰した音。

肌に服が触れる感触と手に持つ血だらけの短剣。

そして目の前には身体中を切り刻まれ、最終的に首が切り落とされたハインケルの姿があった。

肩を上下に揺らしながら息を乱している自分。

それとは対照的に既に死んでいてピクリとも動かないハインケル。


「はぁ…はぁ…、、勝った…、ありがとう…スタシア」


その場にうつ伏せで倒れる。

天恵は全く減っていないし外傷も無い。

だが久々に感じるただの疲れ。


(ヨーセル…ごめん、、頼んだ…)


ディシはその場で気を失う。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ふふっ、ふふふ、予想以上だ。

私が求めていた世界が…もう目の前にあるっ!

やっと出てきてくれたんだね…

先駆の意思…お姉ちゃん。」


セルシャは円卓を囲む椅子のひとつに一人で座りながら不気味に笑う。

読んで頂きありがとうございます!

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