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天使とサイナス  作者: 七数
5章 【破】
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101話 「ユーランシー天上決戦②」

ミリィノに吹き飛ばされたギャラリスを追うように私とミリィノもホールディングスの外へと降りる。

普段と変わらないユーランシーの街並み、綺麗な道の中で不気味な女と対面する。


前回、この女に私達は2対1でもやり切れない程の実力を見せつけられた。

私は一日も自己研鑽を怠ったことは無いがそれでも届かない実力差がこの二人と私の間にあるような気がしてならない。

それに…


「ミリィノさん…私がいてはミリィノさんは、、」


アレルから聞かされた。

ミリィノは一人の時に一番力を発揮するということを。

遠回しにアレルは言ってくれたが、つまり私が足でまといだということ。

そしてそれは今も変わらない。

間違いなく私では遠く及ばない。

ならば私はアレルの方へ援護に行くべきではないだろうか?

ゼレヌスがアレルの方へ向かっているが、恐らくそれでも足りない程にアレルの方の気配は大きい。


ミリィノは私の言いたいことを察したのだろう。

少し悩んだ様子を見せてから口を開く。


「ヨーセルさん、今の私では縛毒に勝てません。

ヨーセルさんだけでも勝てないです。

ならば今一番可能性があるのは二人で戦うこと。

良いですか?

私の動きに合わせる必要は無いです。

ただ本気で天帝を殺すつもりだけを原動力に戦ってください。」


「分かりました。必ず殺しましょう。」


「話は終わったかしら?

待ってあげたんだから楽しませてちょうだいね」


「誰も待ってなんて言っていませんよ。

いや、お前なんかに敬語は不要だ。

縛毒…ここでお前は殺す」


「やってみなさい!カウセル・ミリィノ!!」


縛毒が叫ぶと同時に、私とミリィノは左右に展開しながら剣を振りつける。

縛毒はそれに対して地面を片足で勢いよく踏みつける。

その衝撃によって縛毒を中心に地割れが起こっていき、私は足場が不安定になり、重心がぶれて剣を満足に振り切れずに体が縛毒の方へと進んでいく。


縛毒は私の頬目掛けて拳をぶつける。

その威力は以前よりもさらに上がっており、真後ろにある建物に吹き飛ばされる。

殴られた衝撃によって脳震盪を起こし、立ち上がることが出来ない。


同様にミリィノも重心をずらされるが、直ぐに体勢を立て直し、ヨーセルを殴りつけるギャラリスに対して後ろから剣を振るう。

だが、まるで後ろに目が付いているかのように直ぐに体を捻り、短剣を生成しミリィノの剣を容易く抑える。

そして空いたもう片方の手に短剣をもう一本生成し、ミリィノの腹部目掛けて突き刺そうとする。

だがミリィノは剣を持つ手を片方離し、自身に向けられたギャラリスの短剣を持つ方の手首をがっしりと掴む。


互いに、離れてもう一度構え直す。


「やるわね、悪くないわ」


「…」


(強くなってる…前よりも、さらに。)


「あら?気づいたかしら?前よりも強くなったことに。

まぁ、当然ね。私の体は半分天恵で出来ている。

半人のスクリムシリって言ったところかしらね。」


「へぇ、ついに自分が醜い化け物と認めたんだ」


「ええ認めたわよ。

こうなった経緯も教えられるわ。

私は一度スタシア・マーレンに頭を潰されて殺されたのよ。

けど生き返った。

これは恥じることでは無いわ!

生まれ変わったの!清々しい気分ね」


「ふっ…生まれ変わってもその醜い顔はどうしようも無かったんだな」


ミリィノが馬鹿にするように笑う。


「舐めるなよ!クソブスが!!」


ギャラリスはその言葉に対して怒り心頭になり、さらに高純度な短剣を作り出す。


「出し惜しみ無しでやりましょう!剣韻!」


「望むところだ。縛毒」


ミリィノは剣韻の意思による剣を作り出す。

その剣の質はギャラリスの短剣を上回るものだった。


「あら、前見た時よりも質が上がってるわね。

神器…とまではいかないけどそれに次ぐほど…」


「武器は質では無い。

使い手次第だ。」


「あら、言おうと思っていたことを言ってくれてありがとう。」


ギャラリスの後ろからヨーセルが歩いて瓦礫の中から出てくる。

既に治癒は終えており、右手に直剣を作り出している。


「あら、生きてたのね。」


「この程度では死なない。」


「まぁ、そうよね。二人が気に入るくらいものね」


「意志『同調』」


ミリィノは意志を発動し、ギャラリスに先程以上の速さでギャラリスに攻撃を仕掛ける。

その反対方向からは少し遅れてヨーセルがギャラリスの足元に剣を振りつける。

だがヨーセルの腕をギャラリスは踏みつけにし、そのまま、骨をへし折る。

ミリィノの剣はギャラリスの左腕を切り落とし、そして直ぐに首へと剣を振るう。

ヨーセルは直ぐに踏まれている側の肩を後ろに引き、

折れた腕を引きちぎり、もう片方の手で剣を生成してミリィノ同様に首に剣を振りつける。


(剣韻の動きが予想以上に早い…、

意志の力は理解しているつもりだけどそれ以上に予想を超えてきたわね。

普通に反応ができなかったわ。

いや、それよりもやばいのはこの女ね。

こいつ普通に人間の尺度で測っていい精神じゃないわ。

折られて抑えられている腕を自分で引きちぎって直ぐに攻撃をしてくるとか…人間じゃないわね。)


ギャラリスは両足を地面に滑らせ、180°開脚させて二人の剣を避けるとそのまま体をひねらせながら二人の足を蹴飛ばす。


「くっ、」


ミリィノは体が回り、頭から落ちそうになるのを片手を着いてそのまま1回転する。


ギャラリスはバランスを崩すヨーセルを集中的に狙い、腹部へと剣を突きつける。

だが、ミリィノがギャラリスのもう片方の手を切り落とす。


「ヨーセルさん!」


ミリィノの声と共に息を合わせて同時に剣を振りつける。

だが、絶望的な状況でありながらギャラリスは笑みをこぼす。

そして二人がギャラリスの間合いに入った瞬間、

二人の腹部をギャラリスのそれぞれの手が貫通する。


「うっ、」


「あら、心臓を狙ったのにやるわね」


ミリィノはギャラリスに剣を振りつけるが、ミリィノの腹部から手を引っこ抜き、ヨーセルに追撃を仕掛ける。


(これでこいつは殺せ…)


ギャラリスがヨーセルの頭を潰そうとするが、

突然、ギャラリスは何かにビビるかのようにヨーセルから距離を取る。

そしてその顔には汗がダラダラと流れていた。


(逃げた…?いや、本能的な回避?

なぜ突然?

いや、それよりも先程の腹部の攻撃。

手が一瞬で再生した…。その再生の勢いを使って腹部を、、

そうか、半分スクリムシリということは再生する時に溜め込むことも出来るのか。)


知性のあるスクリムシリの特性として治癒したい箇所に天恵を溜め込んでから瞬間的に治癒することが出来る。

つまり、信愛の意思 愛憎 の下位互換。

信愛の意思はなんのためも必要が無い完成系であるならば、

スクリムシリの溜める治癒は無駄の多いもの。

だがそんな無駄も優れた天恵技術があれば大きく削減することが出来る。

良い例がセルシャ・イオンだった。

セルシャは過去の天帝の歴史の中でも異質的な強さをした存在だった。

スクリムシリでありながら意思を宿るという最悪に最悪を掛け合わせるかのような奇跡。

そんなセルシャの治癒する速度は2秒にも満たない。

スタシアの 愛憎 の治癒速度 0.43秒と比べても、純粋な天恵技術だけとして見たら理不尽であり異質。


ギャラリスが行った先程の治癒攻撃は次以降は通用しない隙も予備動作も多いもの。

だからこそ確実に仕留めるために心臓を狙ったつもりだった。


(危なかった…意志を使っていなければ心臓を破壊されていた。

あの攻撃…恐らくもう使っては来ないだろう。

隙が多すぎると向こうも理解しているはずだ。

いや、それよりも…)


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

(どういうことだ?何が起きた?自分でも理解できない。)


ギャラリスは先程の自分の逃げるかのような回避行動に自分自身でも理解し難いものがあった。


(腹部を貫通した私の腕で確実に命を奪える攻撃に繋げられたはず。

それなのに頭を潰そうとした瞬間、次の景色には首をきりおとされている。

そんな光景が見えた。

いや、そもそも私の腕を反射神経だけで心臓から腹部へとずらしたというのも理解し難い。

剣韻ですら意志を使ってやっと避けられたんだぞ?

ありえない…ありえないありえないありえない!

私がこんな女なんかにビビったとでも言うのか?

そんなことは絶対にありえない!

ランスロットに気に入られたってだけでも腹立たしいのにこの私を本能的に避けさせただと?

絶対に許さないっ!)


「ルシニエッ!ヨーセルッ!!!」


ギャラリスが短剣を生成し、ヨーセルに対して剣を振りつける。

だがヨーセルはミリィノよりも早く腹部の治癒を終わらせ、ギャラリスの腹部に両手のひらを向ける。


「解恵」


ヨーセルの放った解恵にギャラリスは反射的に天恵で身体強化をし、威力を分散させる。

それでも後ろへと吹き飛び、吹き飛ぶ方向にいるミリィノに心臓部を刺し貫かれる。


「あ゛あ゛っ!貴様らぁ!!」


(やはりかっ、)


ギャラリスは体の構築の半分を天恵で行っており、

その性質はスクリムシリと近いものがある。

その一つが心臓を自由に移動させることが出来るということ。

ミリィノが刺す寸前に心臓を移動させており、破壊されずに済んだ。


「ぶっ殺してやる!!」


ギャラリスは叫びながらミリィノに振り向きざまに剣を振るう。

だが腹部を刺し貫かれているギャラリスは上手く剣を振ることが出来ず、最小限の動きでミリィノはそれを避け、ギャラリスに刺さる剣を下へと振り抜く。


「くっ!!」


(これでも倒れないっ、)


ミリィノは追撃をする。

ギャラリスの背後にはヨーセルも剣を振っている最中だった。


「意志『厄疫』」


「!!!ヨーセルさん!引いてくださいっ!!」


ミリィノはヨーセルにそう叫ぶが、既に剣を振る動作の途中であり、そこから回避行動に出るのは不可能だった。

すぐさまミリィノはギャラリスの横を姿勢を低くしながら通り抜け、ヨーセルを後方に向けて蹴飛ばす。


「ミリィノさんっ!」


「あら、優しいのね!だけどそれは間違った選択よっ!」


ギャラリスの足元には濃い緑色の液体が出る。

その液体はギャラリスの肩幅くらいで広がるのを止める。

ミリィノは本能的にその液体から距離を取る。

だが、ギャラリスはここぞとばかりに距離を詰め、

剣をミリィノの腹部に向けて振る。

間一髪のところで、剣でギャラリスの短剣を弾く。


ミリィノは直ぐにヨーセルを飛ばした方まで後退し、状況を立て直そうとするが体が痺れ、脈が異常に早くなっており、だんだんと気持ち悪さが込み上げ膝を着きながら口から血を吐き出す。


「ミリィノさんっ!な、なんで、避けていたはずなのに」


「ふふっ、攻撃が当たらなければ毒にならないとでも思ったかしら?」


「…空気、、感染…か」


「正解よ。私の意志 『厄疫』は私の通った道に毒を発現させ、そして私自身も毒を纏う。

カウセル・ミリィノ…その雑魚をあの時間で即座に判断して助けたのは見事だったけど、毒の犠牲があなたに変わっただけ。

そしてあなたに変わったことで唯一今私と力が拮抗していた要因が消えた。

あなたたちはもう一方的に壊されるだけの人形」


「はぁ…はぁ…、、ヨーセルさん、、アレルの元へ行ってください。」


「え?」


「こいつは私ができる限り抑えておきます…なので、

アレルの援護に行って…確実に一人を殺してください。

ゼレヌスさんを含んだ三人なら殺せる可能性はあるはずです」


「…嫌です」


「ヨーセルさんっ!お願いですから聞いてください!

この毒は簡単に解毒できるものでは無いとあなたも分かっているでしょう!?

確実に助かる最善はこの判断だけなんですっ、」


「ミリィノさん、バカにしないでください」


「…え?バカになんて…」


「いえ、してます。

あなたはいつもそうです。

自分を犠牲にして、いつも自分ばかりを追い込んで、それなのに他者を見捨てずにギリギリを生きていて…

ふざけないでくださいよっ!

ミリィノさんが精神的に限界だって私は気づいています!!

バカにしないで!

頼れ!他者を犠牲にしろ!巻き込め!それが人間の在り方だろ!」


(…アレル、、あなたも同じようなこと言ってたよね。)


「わかった…ヨーセル。

今から本気を出す…ヨーセルにはもう気を使えない。

でも、ヨーセルは私に気を使って。

毒で本気を出しきれない部分をフォローして。」


「うん、分かった。任せて」


(あら…追い詰められて諦めると思ったのだけど。

しぶといわね。

サイナスを使ってくる可能性もあるわけだけど、

まぁ、さすがに解毒を完全にしてからよね。)


「最高ね!あなたたち!」


「剣韻を奏でます。意志 『同調』」

読んで頂きありがとうございます!

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