1.ある日
11月の終わり頃、ひんやりとした言葉にできない冬の匂いがする季節。
僕は体調を崩していた。ベッドの上でそろそろやばいと怖くなった。
「明日、病院に行こう。」少しの風邪や体調不良では病院に行くことはなかったが、体の異変を感じざるを得ず、とりあえず近くの内科に行くことを決意した。
なぜか怖くてたまらなくて涙が出てきた。
大丈夫、明日病院に行くから、と自分に言い聞かせて目を閉じた。
翌朝、今までの体調不良が嘘であったかのように身体も心も元気になっていた。
結局、病院は行かなかった。
昼頃、ベッドでくつろいでいるうちに眠りに落ちた。そして、夢を見た。
黄色のような金色のような、とにかく眩しい光が僕に話しかけてきた。
「突然だけど、君はもうすぐ死にます。」
僕はぼんやりと考える。夢の中であるとはっきり分かるし、眠っていても僕の頭の中はいたって冷静であると分かった。
「なんかよくある展開ですね。僕、小説とかアニメとか映画とか好きなんで、そうゆう展開よく分かりますよ。」
嘲笑しながら「話す光」に話しかけた。
そして光は答える。
「まあ、たしかによくある話だわな。でも事実だし、仕方ない。受け入れるか受け入れないかはあなた次第だし。」
僕は考えた。たしかに、もうすぐ死にますって言われて「漫画とかでよくある話でしょ〜」と聞き流したけど時間が経つにつれその現実を体感していくという物語をどこかで読んだような観たような気がする。
「仮にもうすぐ死ぬとして、いつ死ぬとかどうしたら防げるとか教えてくれるんですか?」
光は答える。
「いや、申し訳ないが教えられない。結末は変えてはいけない。そういうルールになっているんだ。世界は。」
まあ、そんなところだろうと思っていた。僕、死ぬのか。夢のなかだけど、僕の頭の中は冷静だし光の言葉も本当の忠告として受け入れた。
「結末は変えてはいけないけど、その結末をどう迎えるかは変えられるだろ?君は、自分自身の結末を知ってこれから何をするにも考えてしまうはずだ。」
光に答えようとしたところで、目が覚めた。これは夢だった。
しかし、いつもの夢なら起きた瞬間まで覚えていても、だんだん消えていって思い出せなくなるのに、
眩しい光も、その声も言葉も、はっきりと覚えていたしこれからも忘れることはないだろうと確信できた。
そして、初めに頭に浮かんだのは、れのちゃんだった。
親でも友達でもないところに申し訳なさを感じるが、やはり僕にとって本当に大切な存在なのだ。
僕がいつどこで死んでも、彼女は気づくこともなく「気づく」という概念すらなく、変わらない日々を過ごしていくんだろうな。もしかしたら、僕が死んだその日は、彼女にとって何か良いことがあった幸せな日になるかもしれない。
彼女は僕の人生に欠かせない存在なのに、僕は彼女の人生の目にも見えない細胞の中の細胞くらいの存在であることに悲しくなる。
ベッドに仰向けになりながら、顔を右に向ける。
涙が一粒。目から溢れて鼻を横切ってさらに溢れてベッドに染みた。
どうしようもなく辛く悲しい気持ちになると、顔を右に向けるのは僕の癖である。




