2.僕の決意
あの夢を見てから何をするにも考えてしまう。
普通ならただの夢だと忘れられるはずなのに、あの光の言葉は僕を包み込んで四六時中まとわりついてきた。
光の最後の言葉を思い出す。
「結末は変えられないけど、その結末をどう迎えるのかは変えられる。」
僕が死ぬのは決定事項だ。いつ死ぬのか、どう死ぬのかは分からない。
もしかしたら今日かもしれない。
何をどう変えるかは一刻も早く考えなければならない。
すぐに頭に浮かんだもの、もちろん彼女である。
彼女に何かを残したい。僕が生きていた証を残したい。
他人から見たら、気持ち悪いオタクの妄想かもしれない。
でもこれまで、どんな大変なことも辛いことも彼女のおかげで乗り越えてこれたのだ。
大学の課題とバイトで眠れなかった日々も、ライブに行けることを楽しみに耐えることができた。
週末の終りのみえない気が遠くなるバイトも、次の日彼女とオンラインで話せるから頑張れた。
彼女はブログでよく言う。
「どんな時も私は、私たちは皆さんの味方です。」
僕は彼女にこんなにも助けられているのに、僕は彼女に何もしてあげられていない。
認知してもらえるほどお金もかけていないし、長文で想いを伝えられるほど時間を買えていない。
こんな彼女の世界の外側、いや、彼女は自分のファンを外側なんて言わない。
こんな彼女の世界の片隅にいる僕に、何ができるのだろう。
動画配信を始めて、彼女への愛を叫ぶところを世界に晒そうか。
音楽作りを始めて、彼女への愛を歌おうか。
友人や家族にバレるのも怖いし、世界に顔や名前を晒す覚悟もない。
その時ふと思い出した。彼女のとある日のブログ。
彼女の趣味は読書であった。時々、読んだ本やおすすめの本を紹介するブログを書く。
その日のブログには、偶然ネットで読んだ短い物語について書かれていた。
『先日、ネットで誰でも無料で読める小説を漁っていると、とある作品に出会いました。
いいね数は一桁ほど、人気な作品というわけではなかったのですが、主人公が置かれている状況とどこか似ているものを感じ、感情移入しながら読んでいました。
物語の最後には、作者が主人公に宛てて紡いだメッセージがありました。それは、私へのメッセージでもありました。その言葉は、私と主人公のモノとして大切にしまっておきますが、これからどんな時も私のそばにあり続けるんだと思います。』
僕は、これだと確信した。
顔も名前も晒す覚悟のない中途半端な自分にぴったりな彼女へ残す「僕が生きた証」。
小説を書こう。
世界でたった一人。彼女だけへの物語を。




