第42話 武器ガチャ
「……やっぱり、買うしかないわね」
私は、武器ガチャの説明画面をじっと見つめた。
十枠すべてに武器が出るうえ、通常販売で十本揃えれば、合計で1,500 PT以上はかかる。しかも、中級武器以上が一つは確定している。
それに対して、購入価格は1,000 PT。
(普通に十本買うより、お得なのは間違いないわね)
もちろん、どんな武器が出るかは分からない。扱いにくい武器ばかり十本出る可能性だってある。
それでも、手ぶらのまま戦わせるよりはずっといい。
「アトラちゃん、それ、やっぱり買うの~?」
隣から、ルーナが画面をのぞき込んできた。
「ええ。少なくとも骸骨兵士、十体分の武器は手に入るもの」
「早く買おう! 早く!」
ルーナは、なぜか私以上に乗り気だった。
「どうしたの? そんなに急いで」
「だって、何が出るか分からないんでしょ~? ちょっとした宝箱みたいで、面白そうなんだもん~」
「……言われてみれば、そうね」
私は小さく息を吐いた。
確かに、何が出るか分からないという意味では、宝箱に近いのかもしれない。ただし、これは遊びではない。明日の戦いに向けた、大切な準備だ。
「じゃあ、買うわよ」
私は改めて画面を確認し、購入確定ボタンに指を伸ばした。
すると、ショップの画面が切り替わり、目の前に小さな鍵のマークがついている十個の箱が5個ずつ横二列に並んだ。
「すご~い!」
ルーナが身を乗り出し、画面を食い入るように見つめる。
「一つずつ開けていくみたいね」
どうやら、箱をタップすると、何が出たかわかるようだ。
「……これ、地球のソシャゲみたいね」
何が出るか分からない箱が並んでいて、一つずつ開けていく。演出まで妙に凝っていて、どこか見覚えがある。
「そしゃげ? よく分からないけど、早く開けようよ~!」
「はいはい。じゃあ、まずは一つ目ね」
私は最初の箱を選択した。
すると、枠全体が淡く光り、中央に武器のシルエットが浮かび上がる。
光が弾けると、そこに表示されたのは――。
【戦闘用メイス:300 PT】
「あら、メイスね」
「おお~! いきなり武器が出たよ~!」
「そりゃあ、武器ガチャだもの」
私は苦笑しながら、表示された価格を確認する。
戦闘用メイスは通常販売で300 PT。悪くない結果だ。
「じゃあ、次も開けよう~」
「そんなに急がなくても、まだ、たくさんあるんだから……」
そう言いつつ、私も少しだけ次の結果が気になっていた。
二つ目の枠を選択する。
【鉄製の片手剣:150 PT】
「ショートソードか。これは普通ね」
「次はどんなのかな~?」
ルーナはすっかり夢中になっている。
そして三つ目。
再び枠が光り、表示されたのは――。
【戦闘用メイス:300 PT】
「……あら?」
「わぁっ! またメイスだよ~!」
ルーナがぱっと顔を輝かせた。
「同じものがでることもあるのね」
「すごいね~! これ、当たりじゃない?」
「そうね。これだけで600 PT分だもの」
購入に使ったのは1,000 PT。そのうち600 PT相当を、もう回収できたようなものだ。
(これは、思ったよりもいい買い物だったかもしれないわね)
「アトラちゃん、次! 次、開けよう!」
「分かったから、そんなに急かさないで」
私は四つ目の枠に指を伸ばした。
【兵士用の長槍:200 PT】
「槍ね。これなら間合いを取って戦えるわ」
「おお~! 長い武器だ~!」
続いて五つ目。
【ハンドアックス:150 PT】
「斧だね~! これもカッコいい~!」
「そうね。これなら骸骨兵士にも扱えそうだわ」
私は表示された武器を確認し、次の箱へ視線を移した。
すると、隣からルーナが私の袖をくいくいと引っ張ってきた。
「ねえねえ、アトラちゃん!」
「なあに?」
「次はわたしが開けてもいい~?」
「えっ?」
思わずルーナの顔を見た。
「わたしもやってみたい! 箱を開けるの、楽しそうなんだもん~!」
どうやら、すっかりガチャの面白さに目覚めてしまったらしい。
「……別にいいけど、変なところを触らないでね?」
「やった~!」
私が画面を少しルーナの方へ傾けると、彼女は嬉しそうに身を乗り出した。
「じゃあ、これ!」
ルーナが六つ目の箱をタップする。
箱が淡く光り、パッと開いた。
【鉄製ダガー:100 PT】
「おお~! ちっちゃい剣だ~!」
ルーナは間髪入れず、七つ目の箱をタップした。
【鉄製ロングソード:200 PT】
「おおっ! 今度は長い剣だよ~!」
「これは使いやすそうね。剣は何本あっても困らないし」
「ふふ~ん。わたし、引きがいいんじゃない?」
「まだ二つ開けただけでしょう?」
「でも、いい感じだよ~!」
ルーナはすっかり得意げだった。
そして、続けて八つ目の箱をタップする。
【鉄製バトルアックス:250 PT】
「あっ、また斧だ!」
「今度はさっきのより大きいわね」
「こっちの方が強そう~!」
「見た目だけじゃ分からないけど……攻撃力は期待できそうね」
「ねえねえ、これも当たりかな~?」
「少なくとも、外れではないと思うわよ」
「やった~!」
ルーナは自分のことのように喜んでいる。
私は苦笑しながら、画面に並んだ八つの結果を確認した。
武器の種類には多少の偏りがあるものの、今のところはどれも骸骨兵士たちに持たせられそうだ。
残る箱はあと二つ。
「それじゃあ、次は九つ目だね~!」
「ええ。せっかくだから、最後までお願いしようかしら」
「任せて~!」
ルーナは嬉しそうに、九つ目の箱へ指を伸ばした。
「それじゃあ、いくよ~!」
タップした瞬間、箱がこれまでとは明らかに違う輝きを放った。
「あれ?」
画面いっぱいに金色の光が広がり、箱の周囲にきらきらとした粒子が舞い始める。
「わぁ~! なんだか、いつもと違うよ~!」
やがて光が収まると、そこには一本の美しい剣が浮かび上がっていた。
【上級武器:ミスリルソード 45,000 PT】
「…………え?」
私は一瞬、表示された文字の意味が理解できなかった。
「ええええっ!? よ、四万五千!?」
思わず画面に顔を近づける。
何度見直しても、そこに表示されている数字は変わらない。
45,000 PT。
「ちょ、ちょっと待って……! これ、上級武器なの!?」
銀白色に輝く刀身。これまでに出てきた鉄製の武器とは、見た目からしてまるで違う。しかも、販売価格は45,000 PT。
今回のガチャに使ったポイントは、たったの1,000 PTだ。
(よ、45倍よ!? これ一本で、ガチャに使ったポイントの45倍もするの!?)
「アトラちゃん、どうしたの~? そんなにびっくりして」
「どうしたもこうしたもないわよ! これ、すっごく高い武器なの!」
「へえ~! そんなに高いんだ~!」
「高いなんてもんじゃないわ! 45,000 PTよ、45,000 PT!」
思わず同じ数字を繰り返してしまう。
まさか、こんなものが出るなんて思いもしなかった。中級武器以上が一つ確定しているとはいえ、せいぜい少し高めの武器が出るくらいだと思っていたのに。
(まさか上級武器、それも扱いやすい剣が出るなんて……!)
「えへへ~。わたし、すごいの引いちゃったね~!」
「すごいどころじゃないわよ! 大当たりよ、大当たり!」
ルーナは嬉しそうに笑っているけれど、私はそれどころではなかった。
画面に表示されたミスリルソードを、もう一度じっくりと眺める。
(これがあれば、骸骨兵士たちの戦力もかなり上がるはず……!)
「ねえねえ、アトラちゃん。そんなに喜んでるってことは、これ、すっごくいいものなんだよね~?」
「もちろんよ! まさかこんなものが手に入るなんて……!」
私は興奮を抑えきれないまま、残る最後の箱へと目を向けた。
(……いけない。まだ一つ残っているんだった)
正直、もう十分すぎるほどの結果だ。
これ以上の当たりなんて、そうそう期待できないだろう。
「さあ、最後の一つも開けちゃおう~!」
「ええ! ……でも、これ以上のものはさすがに期待できないわね」
お読みいただきありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけましたら、ページ下の【★評価】や【ブックマーク】で応援していただけると嬉しいです!




