第37話 虚栄の骸
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【個体詳細:骸骨兵士】
・状態:ユニーク個体
【スキル】
ユニークスキル
・『虚栄』
貧弱な身でありながら、「自分は特別な存在である」という根拠なき自負により、
従属命令を跳ね除けて自我を維持する。
スキル
・『不死者の特権』
睡眠、食事、呼吸を必要とせず、疲労も感じない。
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「……『虚栄』?」
(なにか珍しい、すごいスキルなのかしら……?)
「根拠なき自負……従属命令を跳ね除けて……」
隣からルーナがウィンドウをのぞき込んできた。
「あっ、ユニーク個体だ~」
「ユニーク個体?」
「うん。ふつうはね、同じ種類の子はみんな同じ強さなの~。でも、たまにすごく強かったり、特殊なスキルを持って生まれたりする子がいるんだよ。そういう子のことをユニーク個体って呼ぶの~」
「へぇ……じゃあ、この子は特別なスキルを持った当たり個体ってことね」
「うん。ホネホネさん、すご~い」
ルーナに褒められた骸骨兵士は、満足そうに、あばら骨の浮き出た胸をこれでもかと大きく反らせてみせた。
だが、私は画面の説明文を二度見して、思わずこめかみを押さえた。
(……待ちなさい。『根拠なき自負』って、要するにただの勘違いじゃないの!!)
強い魔力や特殊能力で自我を保っているのかと思いきや、まさかの根拠のない勘違いと強い思い込みだけで従属命令を弾いていたのだ。
(だからサボったりしていたのね……)
「つまり、これが、この子が他と違う理由ってこと?」
「うん~」
「戦闘力が上がるわけでも、何かできるようになるわけでもないのね?」
「そう~」
「ただ、自我を持つだけ」
「おもしろいね~」
「おもしろいかどうかは、聞いてないわよ!」
私は頭を抱えた。
よくよく読んだら、全く役に立たないスキルじゃないの。ユニークスキルなんて大層な名前がついているから、てっきり凄まじい隠された能力かと思ったのに。
視線を上げると、当の骸骨兵士は、威風堂々とした立ち姿で胸を張っていた。
「……あなた、褒められてないわよ」
骸骨兵士は、カタ、と首をかしげた。意味が分かっていないのか、それとも分かっていないフリをしているのか。
「はぁ……」
ため息をついて画面に目を戻したとき、ふと、別の疑問が頭に浮かんだ。
「ねぇ、ルーナ。ユニーク個体って、そもそもどうやって生まれるの?」
「うーん……野生の魔物なら、たまに生まれるって聞いたよ~。でも」
ルーナは、少しだけ首をかしげた。
「ショップで呼んだ子がユニークになるなんて、聞いたことないかも~」
「……そう」
この子たちは、召喚券で呼び出された魔物だ。同じ券で呼んだ骸骨兵士は十五体いる。その中で、この一体だけがこうなっている。
「……そもそも、ショップで召喚される魔物って、何なのかしら?」
口に出してから、自分でもその問いの重さに少し驚いた。
「どこから来るの? ……創造神が作ってるのかしら」
「えっと……」
ルーナは困ったように眉を下げた。
「わかんない~。考えたこと、なかった」
「ルーナも知らないのね……」
ルーナは、骸骨兵士の顔をじっと見上げた。
「でもね、アトラちゃん。ユニーク個体の子って、たいてい何か特別な事情があるって聞いたことあるよ~」
「事情?」
「うん。たとえば野生の魔物なら、親がとんでもなく強かったり~。変な生まれ方したりとか~」
「じゃあ……骸骨兵士のユニーク個体なら、生前はすごい人物だったとか?」
「もしかしたら、だけどね~」
ルーナは微笑んだ。
「だから、この子もホネホネさんになる前は、すっごく強い英雄だったりしたのかも~」
その瞬間、骸骨兵士が「ガタッ!」と豪快に音を立てて胸を張った。まるで『よくぞ見破った!』と言わんばかりの誇らしさだ。
「……あなた、絶対言葉を理解して聞いてるわね?」
「カタッ」
「そんな得意げにしないで。ただのルーナの推測よ」
「カタカタッ!」
骨の鳴る音が、どこか嬉しそうに響いた。
(生前は英雄……? この、『虚栄』のスキルしか持っていない勘違いの骸骨が……?)
やっぱり信じられない。
私は呆れて肩を落としかけて――ふと、ステータスウィンドウの片隅にある小さな一行に目が止まった。
ユニークスキル
「……ユニーク、スキル」
この言い方を、最近どこかで見た気がする。
自分のステータス画面を呼び出した。名前をつけたあとは、ほとんど開いていなかった画面だ。
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│ 【名前】 アトラ
│ 【種族】 人種(異界)
│ 【職業】 ルーナ専属お世話係
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│ 【スキル】
│ ユニークスキル
│ ・『地球の知識』
│ ・『システム介入(限定)』
│
│ スキル
│ ・『解析』
│ ・『水魔法』
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「……同じだわ」
声が、思わず漏れた。
「アトラちゃん、どうしたの~?」
「私のスキルも、『ユニークスキル』って書いてあるの」
ルーナが、横から画面をのぞき込んだ。
「ほんとだ~。アトラちゃんも、ユニークスキル持ってたんだね~」
「私は魔物じゃなくて、人間よ」
「人間でもどんな種族でもユニークスキルは持つことあるよ~」
「そうなの?」
「うん。実はね、私も、ユニークスキル持ってるよ~」
「えっ……ルーナも?」
初めて聞く話に、思わず聞き返した。ルーナは、あっさりうなずくだけで、それ以上何も言わない。
(……何のスキルなの? 聞いてもいいのかしら)
問いかけようとした、そのとき、遠くの空から、かすかに羽音が聞こえてきた。
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