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第3話 怠惰な女王を動かす方法

私は頭を抱え、何度も深呼吸をした。

怒っても始まらない。このぐうたら女王に常識をぶつけてもしょうがない。


(……落ち着きなさい、私)


幸いなことに、権限を譲渡されたことで、私の目の前には半透明のショップ画面が浮かんでいる。


ルーナはすでに「あとはよろしく〜」とばかりに目を閉じ、すやすやと寝息を立て始めていた。


銀色の髪がベッドの上に広がり、長いまつげが白い頬に影を落としている。黙って寝ている姿だけなら、本当に絵画のように美しいのに


(……黙ってさえいれば、だけど)


(呆れてる暇もないわね。とにかく、今できることを探すのよ)


私は気を取り直し、目の前に浮かぶ交換ショップの画面を開いてみた。

ファンタジー的な剣やポーションに混ざって、なにやら見慣れたアイテムがずらりと並んでいる。


「……これって」


さっきのシステム通知にあった『地球』という言葉を思い出す。


システムが言うには『地球』という異世界のアイテムらしい。けれど──記憶を失っているはずの私でも、それらがどういう用途の道具なのか、なぜか当たり前のように理解できた。



(……なんで私は、この『地球』の道具を知っているのかしら?)


自分の素性に対する疑問は深まるばかりだが、今は考えている時間はない。私は思考を切り替え、ショップ画面を必死に捜索し始めた。


記憶を失った私には行く当てもない。この城を失えば路頭に迷うし、負けるなんて絶対に嫌だ。何としても4日後の敵からこの城を守らなければならない。



(……とはいえ、何か戦えるものはないの……?)


画面をスクロールしていくと、威圧感溢れるアイテムがずらりと並んでいた。


『伝説の聖剣:100,000,000 PT』

『古代竜召喚券:50,000,000 PT』


「買えるわけないでしょこんなの!! 桁が違いすぎるわよ!!」


思わず画面に向かって絶叫した。いまの保有ポイント(10,000 PT)では逆立ちしても届かない。


(数億ポイントあれば、これが一体どれだけ買えたかしら。……考えない。考えたら泣けてくるわ)


けれど、愚痴を言っている暇はないのだ。何でもいいからこの襲撃に備えられるものを手に入れなければ。


必死になって「安くて実用的なもの」を探し続ける。

ひとつずつ値段を確かめていく。7桁、8桁。そんなのばかりが並ぶ中で5桁の値札を見つけるだけでも一苦労だった。



検索を重ねるうち、私の視界にようやく希望の光となるアイテムが引っかかった。


『城防衛基本セット:15,000 PT』

(※防衛用魔導障壁、自動迎撃タレット、トラップ、下位魔物召喚券など)


(……ちょっと待って、自動迎撃タレットって何よ。ファンタジー世界に急に近代科学みたいな技術が混ざってない!? ……でも、私とルーナの二人しかいないこの城で、全自動で撃退してくれる防衛設備は喉から手が出るほど欲しいわね。)


だが、すぐに一つの大きな問題にぶち当たった。


「……待って。価格が15,000 PT……!?」


私は慌てて古城のステータス画面を二度見した。

現在の保有上限は10,000 PT。


(上限が10,000 PTのままじゃ、この防衛セットが買えないじゃない!!)


必死に頭の中で電卓を叩く。


今のポイントは10,000。

毎時間100 PTで、敵襲までの4日間なら+9,600 PT。

合わせて19,600 PT。15,000 PTには、上限さえ解放すれば届く。


(……いける! 今すぐ『地下の祭壇』に行って上限さえ解放しておけば、当日までに15,000 PT貯まって防衛セットが買える……!!)


逆に言えば、上限解放を怠ればポイントが溢れて破棄され、防衛セットが買えずに私たちは詰む。


勝利への道が完璧に組み上がった。


(……やるしかないわね。たとえ階段が長かろうが何だろうが!)


だが、問題はどうやってあの怠惰なルーナを地下まで連れて行くかだ。普通に「城の防衛のために行って」と頼んだところで、寝返りを打たれて無視されるのが目に見えている。



(何か……あのぐうたらを強引に動かせる“餌”はないかしら……?)


私はショップ画面をパラパラと繰り、『地球のスイーツカテゴリー』を開いてみた。


そこには色鮮やかな現代のスイーツがずらりと並んでいた。


ショートケーキ、フルーツパフェ、濃厚なアイスクリーム、焼きたてのクレープまで、目移りするほどの絶品スイーツが並んでいた。


どれも、見ているだけでおなかが鳴りそうだった。記憶がなくても、胃袋は正直らしい。


(……どれにする? ケーキやパフェ? いえ、ダメよ。あのぐうたらは絶対にベッドの上で寝転がったまま食べる気よ。……アイスクリーム? 私たちが地下へ降りている間にドロドロに溶けるのが目に見えているわね……。……なら、一口サイズで持ち運びしやすく、たくさん入ってるもの)




(これだわ……!)


私は迷わず購入ボタンを押した。


お読みいただきありがとうございました!


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