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第27話 魔物を召喚しよう

画面に浮かび上がったリストをスクロールしながら、私は目を走らせる。


┌───────────────

│ 【下位魔物召喚リスト】

│ ・番犬型ゴーレム(1,500 PT)

│ ・ウッドゴーレム(1,200 PT)

│ ・骸骨兵士(1,000 PT)

│ ・プチデビル(800 PT)

│ ・スライム(500 PT)

│ ・魔導コウモリ(500 PT)

│ ・ゴブリン(300 PT)

│ ・マンドラゴラ(200 PT)

└───────────────


「横に載ってる数字は、ショップで召喚した時の通常価格ね」


「えぇー、すごーい! いっぱい種類がある〜」


ベッドの上から乗り出してきたルーナが、システム画面をのぞき込んできた。


「ちょっと待って……これ、凄まじいコスパじゃない!?」


私は画面の数字を見つめたまま、頭の中で素早く電卓を弾いた。


「一番高い『番犬型ゴーレム』は1体1,500 PT……。これを召喚券で20体呼んだら、それだけで30,000 PT分よ!? 15,000 PTで買った基本セットから、実質15,000 PT分も得がでるわ!」


最高効率の数字を叩き出し、一人でホクホク顔になっていると、横からじーっと視線を感じた。


「アトラちゃん、もしかして一番高いやつだけで固めようとしてる〜?」


「い、いや? 決してそんな、得しようとか考えてないわよ……? アハハ……」


あからさまに目をそらす私に、ルーナはジト目を向けながら首を横に振った。


「ダメだよ〜アトラちゃん。それ、戦闘としてはあんまり得策じゃないもん〜」


「な、なにがよ。高い魔物=強いのはわかりきったことでしょ」


「だってね〜、ゴーレムさんは身体が重くて動きがゆっくりなんだよ〜? 20体全部ゴーレムさんにしたら、広いお城の敷地をぜんぶ守るなんて無理だし、足の速い敵が来たらどうするの?」


「……うぐっ」


ルーナの至極まっとうな指摘に、胸がウッと詰まる。


(た、確かに……!まさか、ルーナが正論を言うなんて……!)


「じゃあ、ルーナはどれを召喚すべきだと思うの」


「う~ん。まず、魔導コウモリは必須だと思う。少なくとも3体は欲しいかな」


「魔導コウモリを3体……索敵と上空からの偵察用ね。なるほど、悪くないわね」


私は魔導コウモリの詳細画面を開いた。


──────────────────

【個体詳細:魔導コウモリ】

・分類:飛行/偵察型(下級)

・通常価格:500 PT


【基本性能】

・戦闘能力:☆☆☆☆☆(直接攻撃力はほぼ無いに等しい)

・移動速度:★★★☆☆(高速飛行/小回り◎)

・耐久力 :☆☆☆☆☆(一撃で消滅するレベル)


【所持スキル】

・『超音波』

障害物を通過して動体を感知する。隠密中の敵も検知可能。

───────────────────


「なるほど、良い性能じゃない。よし、3枠はこれで確定ね」


納得して頷いたところで、ある疑問が頭をよぎった。


「魔導コウモリで3枠使うから、残りは17枠ね。……そういえば、この魔導コウモリとか、下位の上にあたる中級種を召喚しようとしたら、一体いくら位するのかしら?」


ふと思いついた私は、ショップ画面の検索バーにキーワードを入力してみた。


すると、画面に中級種たちの召喚価格がズラリと表示された。


┌───────────────

│ 【検索結果:キーワード『中級種 召喚』】

│

│ ・骸骨騎士    : 500,000 PT

│ ・デビル     : 300,000 PT

│ ・大魔導コウモリ : 100,000 PT

│

│ (該当件数:1,280件)

└───────────────


「……た、高ッ!!」


画面に映る数字を見た瞬間、私は思わず叫んでいた。


「ルーナ……これ、見てよ。桁が一つも二つも違うじゃない」


「ほんとだ〜。中級さんって、高いんだね〜」


ルーナは画面をのぞき込んだまま、のんびりと言った。


「感想はそれだけなの? 500,000 PTよ? チョコが50,000箱買えるわよ」


「え、そんなにチョコ買えるの〜!? すごい!」


「そこは食いつくところじゃないわよ……」


私は肩を落として、深々とため息をついた。


私はシステム画面の残りの召喚枠(残り17枠)をまじまじと見つめた。


「……ルーナ。中級種は買えないけど、この召喚券の20枠って、私たちが思ってる以上に貴重な手札だったわ」


「うん……そうだね〜」


さっきまで「とりあえず一番高いゴーレム20体で!」などと考えていた自分を、心の中で全力で叩きのめす。


「気を引き締め直して、残り17枠の厳選に取りかかりましょう!」


「はぁーい」


私は気合いを入れ直し、再び下位魔物リストへ視線を巡らせた。そして――最下段あたりに並ぶ名前を見て、露骨に嫌そうな顔をした。


「……ねぇ、この『ゴブリン』ってやつ、パスでいいわよね?」


「え〜? ゴブリンさん、たくさん増えるのに〜?」


「……増える?」


聞き捨てならない単語に、私は思わず『ゴブリン』の詳細画面を開いた。


──────────────────

【個体詳細:ゴブリン】

・分類:地上/近接型(下級)

・通常価格:300 PT


【基本性能】

・戦闘能力:★☆☆☆☆(武器を持てば、そこそこ戦える)

・移動速度:★☆☆☆☆(身軽/小回り◎)

・耐久力 :★☆☆☆☆(数発で倒れる)


【所持スキル】

・『繁殖』

一定時間ごとに、同種の個体が1体増える。

(最大数:召喚数の5倍まで)

───────────────────


「ちょっと待って……『繁殖』って、本当に増えるの!? 召喚券1枚で、最大5体ってこと!?」


「そうだよ〜。だからゴブリンさんは、たくさん増えるのにな〜って思ったの〜」


「300 PTが5体分で、1,500 PT……。番犬型ゴーレム1体と、同じ値段じゃない!」


数字だけ見れば、とんでもない効率だ。思わず指が止まる。


(……でも、あの緑色でヌメヌメした見た目が、5体……)


想像した瞬間、ぞわりと背筋が寒くなった。


「うぅ……効率は魅力的だけど……やっぱり、見た目がちょっと……」


「え〜? ゴブリンさん、悪い子じゃないよ〜?」


「ルーナ、この世界にも、やっぱりゴブリン族っていう種族がいるの?」


「うん、いるよ〜。街で普通にお買い物したり、商売したりしてるよ〜」


「えっ、ゴブリンが街で買い物!?」


思わぬ返答に、私は思わず目を丸くした。私の知るゴブリンといえば、洞窟に群れて人を襲う粗暴な怪物の代名詞なのだが。


「うん。この世界だとね、ちゃんと会話ができて高い知能を持ってる人たちしか『ゴブリン族』っていうまともな種族として認められてないんだよ〜。言葉も通じないで暴れるだけのやつは、ただの『野良の魔物』扱いなの〜」


「へえ……! ちゃんと知能を持っているかどうかが、種族と魔物の境界線なのね……」


異世界ならではの種族事情に感心しつつも、私は画面のゴブリンの名前をソッと視界の端へ寄せた。


「……とりあえず、ゴブリンは却下! さて、それじゃあ残り17枠、一気に決めちゃいましょう!」


お読みいただきありがとうございました!

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