ツヴァイに向けて
ダンジョン攻略を果たし、一夜明けた。二つあるテントは一つをメイがもう一つのテントには、十六夜、流星、容静、フェル、エルが広いテントを区切り、それぞれ個室で眠っていた。その中で十六夜は、朝一番に起きていた。
「ふぁ~。まだ早いな。四時、五時くらいか」
十六夜はテントから外に出て、気持ち良い風と朝日を浴びていた。
「暇つぶしにそこら辺の散歩でもするか」
十六夜はテントから散歩に出掛けた。静かな森の中を散歩する事数分後。森の中で開いた場所に出た。其処には様々な花が咲いており、動物達も何匹か日向ぼっこをしていた。
「中々だな。まだ朝飯まで時間あるし俺も」
そう言い、十六夜は草の上に寝転がった。多少ゴロゴロしながらも、ゆったりとした時間を過ごしていた。すると其処に、エルが周りを見ながら、此方に向かって歩いてきた。
「あの十六夜さん」
「エルか。どうした」
「用事はないんですが」
いきなりエルが来たことに十六夜は少し驚いたが、訊きたいことがあったので、たずねてみる事にした。
「なぁ、エル。お前と一緒に居たシロの事を聞いてみたいんだが」
陽気な声で訊いているが、シロに関して話したくないなら話さなくていいと、暗に十六夜は言っていた。それを理解した上でエルは話し始めた。
「シロとは、私が小さい頃に近くに合った森の中で会いました。その時、まだ私は子供でしたが、シロは一匹の大人になったばかりのシルバーウルフでした。その頃からシロは私と一緒に遊んでいました。私は友達が一人もいませんでした。でもシロがいつも一緒にいてくれました。ですから私は寂しくはなかったんです。私が誰かに捕らわれた時には、いち早く駆けつけて助けてくれました。
封印された時にも後にも、シロが一緒にいてくれた事は、封印されていてもずっと感じていました」
エルは昔を懐かしみながらも、悲しい口調でシロの事を話した。十六夜はいつもと違い、静かに話しに耳を傾けていた。シロのあらましを知った十六夜は、改めてエルに訊いた。
「なら俺は憎むべき対象だろう。お前をずっと見守ってきた、シルバーウルフと違って俺は、戦いを楽しんでいた。知らなかったなんて言い訳をするつもりもない。俺は、お前の親を殺したも同然なんだからな」
十六夜は不思議だった。子供も頃から今まで一緒に居た存在を殺されて、何故エルは平然としていられるのか。
「シロが伝えてくれたんです」
「何を」
十六夜は反射的に、エルへ聞き返した。
「十六夜さんの・・・を」
エルの言葉は小さかったが、確かに十六夜の耳に届いた。十六夜はそれに、自重の笑みを浮かべていた。
「そろそろ戻るか」
「そうですね」
二人で広場からテントに向かった。エルは心底嬉しそうな表情を浮かべ、十六夜の表情は…
歩きながらも十六夜は、また来れるしな。頭の中で考えながらも皆が居るテントにエルと戻って行った。
テントに着いた後、エルは直ぐにフェルの方へ向かって行った。
「あ、十六夜。どこ行ってたの」
「暇つぶしに散歩してきたんだよ」
「十六夜っち、朝飯はもうできてるっすよ。フェルっちが呼んでたっす」
「なら食いに行くか。立ち話も何だしな」
三人はテントの中に向かった。
「十六夜さん達も朝ご飯ですか」
フェルが三人に問い掛ける。
「ああ」 「うん」 「うっす」
「皆さん。メイさんが話があると」
そう言ったのはダンジョン内で仲間入りしたエルだった。因みに、エルはテントの家事全般をフェルと協力し一緒に働いていた。
「分かった、飯食ったら行く」
返答し、エルはメイの所に向かった。三人は朝飯を食べた後、五人でメイの元に出向いた。フェルとエルは起きた時、二人で先に食べていたそうだ。
「で、何の用だメイ」
「来たか。実はな、ツヴァイには一日で着く」
「へぇ」 「「は」」 「「え」」
十六夜と男二人、女二人でそれぞれの反応をしたが、十六夜は直ぐに聞き返した。
「どういう事だギルドマスター、話が違うぞ」
「実は、私が此処に居る事が秘書にばれてな、直ぐに帰って来るようにとワイバーンを寄越したんだ」
十六夜は少し不機嫌だったが、直ぐに霧散した。興味が他の事に湧いたからだ。
「飛竜とワイバーンで何が違う」
ギルドマスターに聞いた。
「言うならば強さだろう。飛竜は人に関して、殺す事は殆どない。だが、ワイバーンは個体によっては殺戮もしている。飛竜よりも力も我も強い、大体は王達の専属なのだが、冒険者もワイバーンをテイマーしている」
「その一匹が此処に」
「今すぐに帰って来いと、通信魔法で秘書に言われたしまった」
「ならさっさと行こうぜ。お前等もいいだろ」
十六夜は、四人に確認を振り向きながら問う。四人は同時に頷いた。
「分かった。準備が整ったら伝えてくれ」
メイが言い終わると、全員準備に取りかかった。




