フェルとエル
ダンジョン攻略を十六夜達は果たした後、皆それぞれの行動をしていた。十六夜はサリネと一緒にテントに行き、一足先に寝て、流星、容静は互いの武具の能力や戦い方などの確認、メイは飛竜達の騎手に事情説明、フェルとエルの二人はテントの中で話していた。
「エルさん。記憶がどれくらい思い出しましたか」
「まだそれ程思い出せません。あの、フェルシアさんは十六夜さん。いえ、十六夜さん達とはどういった関係なのでしょうか」
フェルは寝間着に似た服装をし、エルはフェルに寝間着を貸して貰っている。どちらもピンクと水色の柄が入っている。
「エルさん。まさか」
「いえ、そういう事ではないです」フェルがエルに問うと、エルは如何にも狼狽ていた。本人は隠しているつもりでも、フェルには一目瞭然だった。
「エルさん。その気持ちは私には隠さなくてもいいです、分かってますから。でも、十六夜さんは過去に色々あったと言っていました」
フェルは、一言目はゆっくりといい、二言目は少し語調を強めてエルに言った。エルにはその一言で、フェルの意志が伝わった。エルは隠している事を白状することに決めた。
テントの一室には重い空気が漂っていた。
「…フェルシアさん。実は、私は記憶をほとんど思い出しています。隠していて、すみません」
「その言葉は、十六夜さんに伝えてください。記憶の事は、最初に十六夜さんが気づいて、私に任せてくれました。同じ女性の私が、十六夜さんが話しやすいからと言って」
最も、十六夜はフェルシアに完全に任せた訳ではなかったが。
「十六夜さんが!!」
エルは十六夜に対して驚きを隠せずにいた。あの時、十六夜達を騙せたとエルは思っていたが、違ったのだ。
十六夜は最初から気付いていた。本当はあの場でエルの嘘をばらすつもりだったが、運が悪いことにメイが一緒にいた。流石の十六夜も、メイが敵になるか、其れとも味方になるかが分からず、フェルにぼかしながら事情を説明し任せた訳だ。
「エルさんは、十六夜さん、流星さん、容静さんの事を本当はどう思っているんですか?」
「十六夜さんについては、記憶の事があっても最初と同じです。流星さんと容静さんは分かりません」
「エルさん。エルさんの過去を、教えて貰えませんか」
「私の過去ですか」
エルはフェルに全てを隠さずに話す事にした。フェルとエルは二人で、まるで親友のように一晩中話していた。
エルは、王女の立場にいた頃の過去は全部と言っていい程思い出していた。だが、自分が封印されていた理由の事は何一つ思い出せなかった。
フェルとエルの二人は、互いの過去について話し合う程に、一晩で仲を深めていた。
フェルはエルの過去を知った後、エルと何度か話した。今は別々の部屋で二人共休んでいた。フェルシアは十六夜に言われた通り魔法を使い、十六夜に大体の事情を話した。
十六夜はフェルシアから大体の事情を聞いたが、欲しい情報はなかった。十六夜は不思議に思っていた、なんでエルは封印されたのかについての理由、情報が知りたかった、何の収穫も無く落胆したが、余り期待もしていなかった。
十六夜はサリネをベッドに寝かしたまま、独り机に向かいメモを書き、独り言を漏らしていた。
「やっぱりか、封印されている奴に理由なんて教えないだろうしな。ふむ、理由については面白そうだが、手掛かりも何も無いんじゃ調べようもないしほっとくか、どっちに転んでも、面白そうだしな」
こうしてダンジョン攻略をした一行の夜は更けていった。




