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十章 衝撃の真実




「お遣いなんて一人で充分だろ!?俺は彼女ともっと話したかったのに!!?」


 手が離れた瞬間、俺は抗議の大声を張り上げた。それを如何にも五月蝿そうに耳を塞ぎ、人差し指を突き付ける。

「いいか、これ以上あいつに質問するな。今度したら、私達の関係は今日限りだと思え」

「脅迫になんて屈しねえぞ!知ってんだぞ俺は!お前が肌身離さず持ってるそのロケットの中身!バッチリ彼女の写真を入れてるくせに、五年もほっぽっとくとか何様だよ!?」

「っ!?見たのか貴様!!」

 この切り札に、さしもの天才トレジャーハンターも動揺を隠せないようだ。流れは我にあり!一気に畳み掛ける。

「ああ見たね。それがどうした?」

「重大なプライバシー侵害だ!コンビ解消だけでは気が済まん!このエロ狐、瞑洛に着いたら覚えていろ!!」

 相棒は中指を突き上げ、怒り心頭に言い放つ。

「それはこっちの台詞だ、このむっつりスケベ!!」席に帰って吠え面掻くなよ!

 お互い背を向けた所で、丁度船内を巡回していた女性船員を発見。喧嘩に驚いていたが、俺がすかさずニコッと笑って上手く誤魔化す。ユアンも頬を引き攣らせ、何とか平素を取り戻して声を掛けた。

「済まん。乗る間際でトラブルに巻き込まれ、買う筈だった連れの飲み物が用意出来なかった。その、少し身体が弱い奴でな……済まないが、何かホットドリンクを用意してくれないか?」

 突然の申し出に、しかしお姉さんは朗らかに頷いた。

「まあ、それは大変でしたね。構いませんよ、すぐに席までお持ち致します。紅茶、コーヒー、緑茶やココアなら御用意出来ますが、如何致しましょう?」

 ユアンはそこで少し考え、ホットミルクは出来るか?と尋ねた。

「ええ。―――はい、お砂糖は多めで」

「それとホットコーヒーを二つ頼む」

「ええ、確かに承りました。お席は―――はい、ではお戻りになって少々お待ち下さい」

「ああ、済まない」

「ところでお姉さん。このサービスってお幾ら?」

「勿論無料ですよ、可愛らしい赤狐さん」

 気立ての良い職員だな。通り掛かってくれてありがとう。

 彼女と別れてからトイレを済ませ、俺達は小晶さんの待つ船室へ向かう。

「シャーゼは名前か?苗字は?」

「フィクスだ。何だ、知らなかったのか?パスポートにちゃんと書いてあるぞ」

「え!?」マジかよ!

「生憎偽造を依頼する程暇でもない。貴様、素性が知りたいなら真っ先に調べるだろう普通。こいつを盗み見る余裕があるならな」

 まだかなり根に持ってやがる。うーむ、大事な秘密を無断で見たのは確かにこっちが悪い。鳳凰亭に戻ったらお詫びのマッサージでもしてやるか。


「ただ」「待て―――大声を出すな」


 長い睫毛を伸ばした黒髪の麗人は、瞼を閉じて静かに寝息を立てていた。

「長距離歩いて疲れたんだな」動くだけで折れてしまいそうな細い脚を覗き込む。

 向かい合わせに再び座ったユアンは、視線で肩を降りるよう言う。大人しく従い、音を立てないように硬い布の椅子へ降り立った。


 パサッ……。


 無音で隣に移動し、保温性のあるキャメルのコートを肩上から掛ける。こうして見ると美男美女の恋人同士が寄り添っているようにしか見えない。悔しいが滅茶苦茶絵になってる。

 銀髪を掻き上げ、すっかり脱力した彼女の掌に触れる。

「相変わらず尋常でない冷たさだ……チッ、神父め。きちんと体調管理しているのか?」

「彼女、病気持ち?顔色悪いけど」小声で質問する。

「まぁな。強いて言うなら『死ねない』病だ」

「え?不死なのこの子?」

 だから不死省とか言っていたのか。

「ああ。第七の最重要人物にして、身柄の所在一つで国際問題に発展しかねん厄介者だ」

「本気で?」

「阿呆な畜生相手に嘘を吐いてどうする?」

 おお……暴言はともかく、思わず背筋がゾクゾクしてきたぞ!これぞ王道、身分違いの恋!!興奮で全身の赤毛が逆立つ。

「ネイシェ?」

「ユアン」

 俺は椅子に正座し、向かい合って相棒を見上げる。

「任せろ。全力で応援してやる。俺が未亡人相手に培ったスキルも、ロハで惜しみ無く伝授して進ぜよう」

「?何を言っているんだ突然?」

 俺は無言のまま眠り姫に視線を移す。見れば見る程愛くるしい娘さんだ。この偏屈屋がノックアウトされてしまったのも納得出来る。


「安心しろ。俺が必ずお前を幸せな家庭へ導いてやる」


 沈黙。

「―――ネイシェ」

「何だ?」余りに幸福な想像に、早くも頭がクラクラしてきたのか?

「お前は大きく二つの誤解をしている」

 徐に人差し指を立てる。

「一つ目。知らんのも無理は無いが、第七には基本的に生殖能力が無い」

「あ、そなの?」

 まあそれは些細な問題だ。子供が出来ない事を差し引いても、小晶さんは(夜的な意味でも)食べちゃいたいぐらい可愛い。

「もう一つは、随分前から気付いてはいたんだが……」何故かそこで額に掌を当てた。「ネイシェ。お前、確か宿の主人以外にも人間の愛人が何人かいたよな?」

「まるで節操無しみてえに言うなよ。俺はちゃーんと十人の未亡人と、不義理の無い健全なお付き合いをしています」

 正確には人間六人、獣族の馬と猫が一人ずつ、龍族二人だ。因みにHにまで発展しているのはその内の七人で、生まれた子供は三人。勿論性欲が満たされればオールOK、などと言う下劣な考えは毛頭無い。基本はあくまでプラトニックラブだ。

「なら、何故気付かん」

「へ?」


「小晶は『男』だ。どう逆立ちしても『お嬢さん』ではない」





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