#17 結婚式、披露宴のあとは舞踏会
ルミウス様へ招待状を届けるためにドラクロスへ行っていたノクス様が戻ってきた。なんだか、すごく疲れた様子で。
「兄が…、結婚式へ出席するそうだ。」
「いくら弟であるノクス様のためとはいえ、あの竜帝陛下が、人間の国なんかへ足を運んでくださるのですか!?ノクス様、よくルミウス様を説得できましたね。」
「いや。俺は、別に来なくとも構わないと言ったんだ。そしたら、来るなと言われると行きたくなると言い出して、追いかけ回してきたんだ。」
ノクス様は、ルミウス様の留守を狙って執務室の机へ招待状を置いて逃げるつもりでいたけれど、見つかってしまったの。それで、結婚式に来なくても構わないと捨て台詞を吐くと、竜化して逃げたそうよ。そしたら、ルミウス様も竜化して追いかけてきて、二人は竜の姿でしばらく追いかけっこをしていたらしいわ。
(竜帝と皇弟の追いかけっこ…。見てみたいわね。)
ルミウス様って、ノクス様をからかうのがお好きなのかしら?竜帝ともあろうお方が弟を追いかけ回すなんて、意外と子どもみたいじゃない??でもその話を聞いて、お二人の仲のよさがうかがえたわ。
「昔からあいつは、飛ぶのがバカみたいに速いんだ。飛ぶのだけはな…。」
私ははじめ、私たちの結婚については、竜帝で、ノクス様の兄でもあるルミウス様の意見に従うつもりでいたの。私をドラクロスで保護するかしないかで意見が割れていたとき、ルミウス様は折れてくださった。だから今度は私が譲歩し、ルミウス様を立てなければと思っていたのよ。
だけど記憶を取り戻した今は、ルミウス様から認めてもらえなくても構わないと思うようになったの。だってね。ルミウス様は、これまで一度だってノクス様と番の結婚を心から祝福してくれたことなんてなかったんだから!!
それで私とノクス様は、自分たちの好きなように結婚式を計画したのよ。
そして。結婚式当日を迎えた。
私たちの挙式は、宮殿の礼拝堂で執り行われた。
グレゴリオ様から宮殿の礼拝堂で式を挙げたらいいと提案されたときは、王室の方々のための礼拝堂で挙式だなんて気が引けるからお断りしたのだけれど…。思えば、ドラクロスの皇弟殿下のノクス様は、皇族なのよね。ノクス様の地位を考えた結果、宮殿の礼拝堂で挙式することにしたの。
式を挙げた私とノクス様が、礼拝堂から庭園へ移動すると、晴れ渡った空の下で披露宴がはじまった。
「ジャスティン、心の準備はいい?挨拶まわりへ行くわよ。」
「ティア、そこは俺の名を呼ぶところだろう?」
「ジャスティンの番探しはここからなんです。」
「こいつの番なんて心底どうでもいい。これは、俺とティアの結婚式なんだぞ。」
「自分も、番様のお心遣いが親切心からきてるんじゃないと知ってるんで、気が乗らないっす。」
私はやる気のないノクス様とジャスティンを引き連れ、招待客への挨拶まわりをはじめた。
会場には、様々な種族が集まっている。この人脈は、好奇心旺盛なグレゴリオ様に同行し、あちこちの国々を訪れた恩恵によるものなのよ。
人間の国だけでも、数多くの国からお越しいただいているけれど、人間の中にジャスティンの番はいなかった。でも正直私は、ホッとしているの。竜人と人間の間には子孫を残せないもの。
それから、獣人たちのもとをまわって歩いた。
真っ先にキツネの獣人のところへ向かったら、ジャスティンから、『悪意を感じるっす。』とただでさえ細い目をさらに細くして言われたわ。次に犬の獣人のもとへ向かおうとしたら、ジャスティンは不服そうにさらに目を細めた。これはもう、目を閉じていると言ってもいいわね。でも社交的な犬獣人たちは会場のあちこちに散らばり、他種族と交流していたため、犬獣人への挨拶は個別にすることにしたわ。先に、同族でまとまっているところから挨拶しようと、ネコの獣人のもとへ行った。ネコ獣人たちからの結婚の祝福には、なにやら含みが感じられたわ。前にマタタビ畑を燃やしちゃったこと、根に持ってるのかしら??うさぎの獣人たちは、はじめての場所に警戒している様子で、チモシークッキーや葉野菜の飲み物など、うさぎの好きなものを用意したのになかなか手を出そうとしなかった。どうやら、食事中の無防備な姿を晒したくないみたい。ネズミ獣人は、警戒しつつも次々と食べ物を口にしていて、まったく警戒することなく食事に夢中になっているのはトラ、ライオン、ヒョウの獣人たち。それで、一番食欲旺盛なのはモグラの獣人だったわ。会場のすみの方に固まっていたのは、ハリネズミの獣人たち。名前にネズミがついているけれど、ネズミ獣人とは仲間ではないそうよ。
そのあとも、ジャスティンに招待客を引き合わせていった。狼、蛇、鳥、クジラやイルカの獣人たち等々…。
それから、クリオネ。
そして。私は、この披露宴会場で、番合う二人の運命的な出逢いに立ち会ったの。
お相手は、うさぎの国の公爵令嬢であるミリアーナ様。対面したお二人は、胸を押さえて見つめ合っている。私と出逢ったときの、ノクス様のように。
「番合っていると本来はああして、出逢った瞬間に、お互いに相手が番だとわかるのね…。」
ノクス様への罪悪感から、胸がちくちくと傷む。私にはその感覚がわからないから…。
「ノクス様、ごめんなさい…。私、ノクス様が番だって分かれてあげられなくて…。」
「ティア…。」
ノクス様は、私の肩へ腕をまわして抱き寄せた。
「あれ?今回は、殿下と会った際、番様も胸を押さえて膝をついてたっすよね?」
「確かに、胸は苦しかったけど…。あれは、暴走竜のブレスによる毒のせいよ。」
「あのブレスに毒は含まれてなかったすよ。」
「毒、じゃない…??」
あのとき、番と出逢ったノクス様は、胸を押さえて膝をついていた。それは私も同じだったけど、胸が苦しいのは暴走竜のブレスのせいだと思っていた…。
「だったら…。あの、"きゅん"っていう胸が締めつけられる痛みは、番に反応していたからなの?私…、ノクス様が番だと分かれていたの??」
ノクス様と顔を合わせると、彼は幸せそうに笑って、私をぎゅーっと抱き締めた。
「いやぁ、本当にめでたい日っすね。殿下も幸せそうですし、その上、やっと陛下の番様が見つかったんすから。」
そう…。番との運命的な出逢いを果たしたのは、ルミウス様なのよ。私は、ジャスティンの番を見つけたかったのに!!
「主の番が見つかって嬉しそうね。ノクス様の側近と言いながらも、結局、あなたはルミウス様の犬なのよ。」
「もう。なんすか、そのトゲトゲしい言葉。陛下と番様の出逢いを喜んで、なにが悪いんすか?280を超えて、やっと巡り逢えたんすからね。」
「ジャスティンっ!年の話はするな。」
「あら、ノクス様。今更じゃないですか。今の私は、記憶を持ってるんですからね。」
「そうっすよ。まさか、番様と264歳差があるのを気にしてるんすか?」
「ジャスティンっ!!」
どうやらノクス様は、私との年の差を気にしているみたい。264歳差であることをね。そんな彼を、微笑ましく思うと同時に不安を覚えるの。彼の容姿は、約250年前のパトリシアの記憶にある姿とまったく変わりないから。そして。気にするべきなのは年の差ではなく、この先、私だけが年老いていくという現実なのよ。
「今だから言えるっすけど。陛下は、弟である殿下の方が先に番を見つけたことを悔しがっていたんすよ。しかも先を越された上、殿下は何度も番と出逢うというのに、陛下はいつまでたっても番と出逢えず…。」
「もしかして…。これまで一度も、ノクス様と番の結婚を祝福してくれなかったのは、先を越されておもしろくなかったからなの!?」
「我が兄ながら、なんて心の狭い男なんだ。」
「そんなこと言って。もし殿下が逆の立場だったら、絶対同じ態度をとっていたはずっすよ。お二人は、双子だけあって似てますからね。」
「二人の言動が似ているのなら、ルミウス様も、あの頃は若かったから受け入れられなかったのかしら?」
「ティアまで…。」
パトリシアに素っ気ない態度をとっていたわけを若かったからだと言っていたことを蒸し返したら、ノクス様がしゅんとしてしまった。
そのとき、ルミウス様とミリアーナ様の様子を見ていたジャスティンが驚きの声を上げた。
「うわぁ。陛下の番様、獣化してどこかへ行ってしまったっすね。」
うさぎの姿になったミリアーナ様は、突然猛ダッシュして姿が見えなくなり、ルミウス様の目の前にはミリアーナ様の抜け殻となったドレスだけがポツンと置かれてあった。
「あれが、"うさダッシュ"と呼ばれるものなんすね。番である陛下と出逢って、興奮が最高潮に達したんすかね?」
脱ぎ捨てられたドレスを見た私は、ノクス様へあげた魔道具を獣人たちへも広めることを思いついたわ。シャルロッテが100年前につくった、竜化・人間化する際に服の着脱ができる魔道具は、ノクス様とジャスティンの分しかないから。
招待客たちへ注目するよう声をかけ、ジャスティンに竜化してもらった。そして、ジャスティンが人型に戻ると、招待客たちから歓声が上がった。人間たちからは、竜化と人間化に対して驚きの声が、獣人たちからは、服を着たまま竜の姿になっても服が破れることなく、人間の姿に戻った際、服を身につけていることに感嘆と拍手が起こった。
この魔道具の反響は大きく、私はハネムーンから戻ったあと、しばらく魔道具の対応に追われることになるの。
「陛下、おめでとうございます。ティアが、結婚式でジャスティンの番を見つけると言い出したときは、見つかるわけがないと思っていたが、まさか、兄上が番と出逢うとはな。」
「私が一番驚いているよ。まさか私も、ノクスと同じように人間の国で番と出逢うとはな。…いや、今だから言うが。これまでに何度か、私の番もノクスと一緒で人間なのではないかと思ったことがあったんだ。私たちは双子だからな。兄弟そろって人間が番なのかもしれない、と。」
「しかし、相手は人間ではなかったな。ルミウスの番は、うさぎの獣人か。うちの国は、うさぎの国とは交流がなかったから出逢う機会もなかったのだろうな。」
「あぁ、これまで接点はなかったな。あの見た目だが、うさぎは気が強く、竜であろうと上に立たれるのを嫌うからな。」
ルミウス様は、番と出逢えた嬉しさと、種族が違う不安を抱えているようだった。ドラクロスの人たちは、竜人の血に誇りと強い拘りを持っているから。
「ルミウス様、うさぎの獣人である番様が帝城でどのような扱いを受けるか、さぞかし不安でしょうね。私は経験者なので、よくわかりますわ。」
人間の私が、帝城でどのような扱いを受け、蔑んだ視線を向けられていたかを知るルミウス様は言葉を詰まらせている。
「人間の私ほど落胆されないにしても、竜帝の番というお立場であるからこそ、純血を重んじる竜人たちが集まる帝城では嫌な思いをすることもあるでしょうね。」
「そのような思いは、私がさせない。」
「あら??私は、ルミウス様に言われたのですよ?『弟の番が人間なんて』や、『脆弱な上に、歩くこともできないのか』とか、『また人間なのか』と。」
「私は、そのようなことをルナティア殿に対して言った覚えはないぞ。」
「そうですわね。言い間違えましたわ。私にではなく、ノクス様の番たちにですわね。ルミウス様もまた、純血支持者なのです。ですから私が、そのような者たちから、ルミウス様の番様をお守りいたします。」
「つまり、純血支持者である私から、ミリアーナ嬢を守るということか??私は、番であるミリアーナ嬢を傷つけるようなマネは絶対にしない。」
「では、せいぜいまわりの純血支持者の思想からミリアーナ様をお守りください。私は、心ない言葉に傷ついたミリアーナ様を慰め、ルミウス様より親密な仲になってみせますわ。」
私が得意気に頷くと、ジャスティンがため息を吐いた。
「うわぁ。それが、番様なりの意趣返しすか?本当は自分の番を見つけて、今陛下へ言った仕打ちをするつもりだったんすね!?」
「仕打ちだなんて人聞き悪わね。ノクス様と番たちの仲がこじれたのは、ジャスティンのせいでもあるのよ。だから、あなたと番を引き離して、身を持って体験してもらおうと思っているだけよ。でもそれは、あなたが招いた結果なのだから、そのときは甘んじて受け入れることね。」
「自分、番が見つからなくてもいいっす…。」
ジャスティンが嘆いていると、頭上に大きな影が現れた。帝城で、私が宝石をあげたブラックドラゴンを筆頭にドラゴンたちが飛んでいた。
「ルミウス様が連れてきたのですか?」
「いや…。私は知らない。」
庭園の開けた場所に誘導すると、ドラゴンたちは私のもとへ降り立った。
「まぁ、セルシオ!あなた、私とノクス様の結婚を聞きつけて、わざわざ祝いに来てくれたの!?」
「ティアは、この黒竜に名前をつけていたのか?」
「私はセルシオと呼んでますけど、セルシオールという名前は本人から教えてもらいました。」
「そうか、ティアは動物たちと意思疎通が図れるのだったな。」
ノクス様の話から、私がドラゴンと会話できることを再確認したルミウス様は、なんだか難しい顔をしているわ。それに、ドラゴンたちの出現には辺りも騒然としていた。その中で、ひときわ大騒ぎしているのがドワーフたちだった。
「見てみよ!あの娘、ドラゴンたちを従えておるではないか!?やはり、あの娘は人の皮をかぶった魔王なんじゃ。」
「ほれ見たことか!儂は、番がドラクロスの皇弟だと聞いたときから嫌な予感がしていたんじゃ。しかも、あの竜帝までも、あの娘には頭が上がらんようだ。」
「これは儂らの想定していた中でも、最悪の展開になりそうじゃな。あの娘は、竜人の番とともに世界を征服するつもりなんじゃ!」
私はドワーフたちのもとへ行き、彼らのバカげた妄想を否定する。
「ちょっと!!世界征服なんてしないわよ!?どうしたら、そんな発想に至るのかしら??」
「おい、こら!儂らに近寄るでない。この厄災の申し子が!!」
「おい。ティアの招待客だからと大目に見てやるのも限界があるからな。」
ノクス様の低い声に、ドワーフたちが震え上がっている。
「ところで、来てくれたのは三人だけなの??私は、女性に来てもらいたかったのよね。」
ジャスティンの番を見つけたいのに、ドワーフから来てくれたのは、おじいちゃん三人組だった。
「そうじゃ。儂ら三人は、国のために生け贄になったのじゃ。」
(生け贄??なんのことかしら?)
「仕方ないわね。それなら、私たちの方がドワーフの国へお邪魔するわよ。ついでに、ノクス様へ剣をつくってくれない??」
「あ"ぁー。駄目じゃ、駄目じゃ。儂らが生け贄になった意味がなくなるではないか。儂らは、そなたを国へ来させぬために、この式に参列しておるというのに。」
「それに、そなたに剣を譲る際、二度と国へ来ないでくれと約束したことを忘れたわけではあるまい?」
「しかも、番殿に剣をつくってくれじゃと!?やはり、世界征服を目論んでおるのではないか!?」
ドワーフたちの妄想があまりにもひどいから、私はこれが、ドワーフたちによる演出だと気づいたの。
「ああっ!わかったわ。これは、披露宴の余興なのね!?」
ドワーフたちが勢いよく否定すると、そんな彼らに憐れみの目を向けるエルフがいた。
「あの様子を見る限り、ドワーフの奴らも被害に遭ったようだな。」
「あら、あなた。エルフの里の場合、ルナティアを侮辱したこちらに非があるんじゃない。」
「そうよ、パパ。ルナは私を助けてくれただけじゃなく、家まで送ってくれたのに、里のみんなは人間だからって、騎士団の人たちをバカにしたんだから。」
「それは、確かに我々が招いたことなんだが…。怒ったからといって、里を半壊することはないだろ??」
エルフからは、以前、奴隷商から助けたラナとその両親が来てくれている。
「ルナ!!結婚おめでとう。そのウエディングドレス、すごく似合ってる!」
「ありがとう、ラナ。こちらの方も、ご家族?」
私は、ラナたちと一緒いるエルフへ視線を向けた。
「セルリアンはね、エルフの里の外の世界に興味があるの。だから、うちの家族が人間の国へ行くと聞いて一緒に来たのよ。招待状にも、他のエルフも誘っていいって書いてあったから。」
女性を誘ってほしかった…。そんなことをラナには言えず、苦笑いを浮かべている私を見て、ジャスティンが笑っている。
「番様が詳しく書かなかっただけで、彼らは間違ってないっすからね。」
そう…。私は招待状に、"誘い合わせて"とだけ書いて、肝心なことを書いていなかったの。連れて来て欲しいのは、女性であるということをね…。
「…いいえ。万が一ってこともあるわ。ジャスティン、彼を見てなにも感じない!?」
「わはは。感じないっす。」
がっかりする私の目の前で、セルリアンがジャスティンに飛びかかった。
「この魔道具、見せてもらってもいいか!?」
セルリアンはエルフにしては珍しく、他種族や、魔道具に興味を持っていた。
「首の魔道具は先ほど実演していた、服を着脱するものだろう。では、腕につけているのはなんの魔道具なんだ?」
「ああ、これっすか?これは、竜気を閉じ込める魔道具っす。この披露宴会場にいる竜人は、全員つけてるっすよ。新郎である、殿下もっす。」
シャルロッテは、竜人たちが喧嘩した際に放った竜気を浴びても平気だった。一方、魔力のなかったヴィオラは、使用人の弱い竜気にさえ耐えられなかった。そのことから、竜気への耐性は魔力量によって違うと考えられるわ。
結婚式の招待客を危険に晒すわけにはいかないため、ノクス様はもちろん、竜人たちには全員、竜気を閉じ込める魔道具をつけてもらっている。
だけど。"竜気は人間を死に追いやる"と言い切るには症例が足りないから、ノクス様と話し合って今の段階では公にしないことにしたの。
それにね。この腕輪の魔道具をつけてもらっているのには、他にもちゃんと理由があるのよ。
「この竜気を閉じ込める魔道具は、披露宴のあとにある武闘会のハンデなのよ。」
「舞踏会のハンデ??」
「踊る方の舞踏会じゃなく、格闘の方っすよ。結婚式に"ぶとうかい"っていったら、普通は踊る方だと思うっすよね。しかも番様は新婦なのに、自分も武闘会に出場するつもりだったんすよ。」
首を傾げるセルリアンに、ジャスティンが説明すると、まわりから驚きの声が聞こえてきた。
『"舞踏会"ではなくて、"武闘会"??』
訓練場には、披露宴の準備や給仕に追われた使用人たちも招いた。使用人たちは、うちの伯爵家とノクス様の大公家からも動員されていて、その中にはジャスミンの姿もあった。
様々な種族が対戦する武闘会は盛り上がり、会場は熱気に包まれた。出場したかったのに止められた私と、グレゴリオ様はうずうずしながら観戦していたわ。
ちなみに。
武闘会の優勝者は、ジャスティンだった。腕輪をつけていたのに、さすが竜帝の犬だわ。
ただね…。ジャスティンの試合は盛り上がらなかったわ。だって、秒で相手の動きを制圧するんだもの。それも、全試合よ!?
もう!空気を読んでほしいわ!!観客はね、もっとドンパチする試合が見たいのよ!!




