表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
99/134

ティリギルドへの報告


 迷宮の丘を下りると、ティリの街が見えた。


 サイファよりずっと小さい。


 石の通り。


 低い家。


 荷車がゆっくり進んでいる。


 アクセルが肩を回した。


「香草探しの遠出のはずだったんだがな」


 レインが笑う。


「ついでに迷宮見てみるか、だったよな」


 むぎが胸ポケットから顔を出す。


 キュ。


 ここちゃんが腕の中で耳を動かした。


 きゅる。


 ノアが言う。


「結果は興味深い」


 カインは静かに街を見ていた。


 中央の建物。


 冒険者ギルド支部。


 大きくはない。


 レインは扉を押した。


 中は静かだった。


 昼の時間。


 冒険者は数人だけ。


 受付の女が顔を上げる。


 見慣れない顔を見る目。


「依頼ですか?」


 レインは首を振る。


「迷宮の報告」


 女の表情が変わる。


「……少々お待ちください」


 すぐ奥へ向かった。


 アクセルが小さく言う。


「迷宮って言っただけで反応したな」


「普通は討伐報告だからな」


 レインが答える。


 すぐに奥の扉が開いた。


 整った衣服。


 落ち着いた視線。


 男が歩いてくる。


「ティリギルドマスターのヤムザです」


「報告を」


 短い言葉。


 レインが答える。


「一層で隠し通路を見つけた」


 ヤムザの眉がわずかに動く。


「続けてください」


「通路の奥に小部屋」


「そこに装置があった」


 カインが補足する。


「刻印がありました」


「帝国研究院のものです」


 ヤムザの手が止まった。


 帳面の上で、ペンが動かない。


「……帝国研究院」


 小さく繰り返す。


「機能は」


 カインが続ける。


「迷宮の魔力を安定させる装置と思われます」


 ヤムザは帳面に書き込む。


「状態は」


 レインが答える。


「魔力の流れがおかしかった」


 一拍。


「強くなったり、弱くなったりしてた」


 ヤムザのペンが動く。


「処理は」


「止めた」


 短く言う。


「装置を止めたら、違和感は消えた」


 レインは肩をすくめる。


「壊してはいない」


 ノアが言う。


「揺れは消えた」


 カインが地図を差し出した。


「隠し通路の位置です」


 ヤムザはそれを受け取る。


 しばらく見ていた。


 それから帳面を閉じる。


 ゆっくり言う。


「……この件は」


 少し間。


「この支部では判断できません」


 レインが眉を上げる。


「そこまでか」


 ヤムザは頷いた。


「帝国研究院の刻印」


 一拍。


「王国領の迷宮」


 さらに続ける。


「人工の装置」


 視線を上げる。


「私の判断権限を越えています」


 アクセルが小さく息を吐く。


「面倒な話だな」


 ヤムザは続ける。


「王都へ上申します」


 レインが聞く。


「俺たちは?」


「発見者です」


 ヤムザは淡々と言う。


「確認の連絡が来る可能性があります」


 アクセルが苦笑する。


「ただの遠出だったんだがな」


 レインがむぎを見る。


 むぎが鳴く。


 キュ。


 ここちゃんが耳を動かす。


 きゅる。


 ヤムザは静かに言った。


「小さな発見でも、扱いが大きくなることはあります」


 それだけだった。


 ティリのギルドはまた静かになる。


 だが報告は、もう街を出ていた。


 王都へ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ