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帝国の試験機


小部屋は静かだった。


円形の石室。


削り出しの石壁。


中央に、装置がある。


金属枠。


拳ほどの水晶。


刻印の入った環。


そこに、細い管が繋がっている。


レインは一歩踏み込んだ。


その瞬間。


耳の奥が鳴る。


強くなって、弱くなる。


一定じゃない。


「……なんだこれ」


アクセルが眉を寄せる。


レインは空気を探るように手を動かす。


「魔力の濃さがバラついてる」


ノアが水晶を見る。


「揺れてる」


アクセルが短く言う。


「乱れてるな」


水晶の光が、不規則に揺れる。


カインは刻印を見ていた。


指が止まる。


「……帝国研究院の刻印です」


レインが視線を向ける。


「帝国?」


カインは頷く。


「試験機でしょう」


一拍。


「魔力循環を安定させる装置です」


アクセルが装置を見る。


「これがか」


短い。


水晶が強く揺れる。


カインは視線を外さない。


「本来は、です」


ノアが一言。


「揃ってない」


レインは装置を見る。


違和感と重なる。


短い沈黙。


頭の奥に声。


《機構干渉可能》


一拍。


《無属性魔力制御による接触確認を推奨》


レインは小さく息を吐く。


手をかざす。


触れない距離。


魔力を流す。


無属性。


触れた瞬間。


引かれる。


「……っ」


レインの指先がわずかに揺れる。


もう一度、流す。


同じ場所に引かれる。


強い。


吸い込みが強い。

掃除機のように引かれる。


「吸ってる」


もう一度、魔力を流す。


引き込みが強くなる。


体勢がわずかに崩れる。


「……強いな」


カインが言う。


「干渉は危険です」


レインは視線を落とす。


考える。


…このままじゃ動かせない。


一瞬だけでも鈍れば。


「…一瞬でいい」


自分に言い聞かせる。


手をかざす。


魔力を流す。


固定。


流れに噛ませる。


吸い込みが、わずかに鈍る。


その瞬間。


レインは位置を押す。


ずらす。


魔力を吸っていた管の先端が外れる。


空を吸う。


水晶の光が暴れる。


石壁が軋む。


ぴし、と小さな音。


アクセルが低く言う。


「来るぞ」


レインは動かない。


外した位置を維持する。


吸えない。


流れが途切れる。


一瞬。


光が弾ける。


そして。


落ち着いた。


静かになる。


耳鳴りが消える。


ノアが言う。


「……止まった」


カインが装置を見る。


「外殻は無傷です」


アクセルがレインを見る。


「何した」


レインは手を下ろす。


少しだけ間を置く。


装置を見たまま言う。


「魔力を吸ってた場所を、ずらした」


短く。


「吸えなくした」


それだけだった。


ここちゃんが腕の中で耳を動かす。


きゅる。


むぎが胸ポケットから顔を出す。


キュ。


小部屋は静まり返っていた。


装置は、もう動かない。



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