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再形成


森の奥が、脈打った。


灰緑が、滲み出る。


さっき砕いたはずなのに。


消えたはずなのに。


地面の影が膨らむ。


ノアが言う。


「再形成――」


最後まで聞いていない。


胸ポケットが、震える。


キュ。


むぎ。


次の瞬間。


灰緑が、爆ぜた。


一直線。


迷いがない。


狙いは――むぎ。


心臓が、跳ね上がる。


どくん。


視界が、狭くなる。


考える前に踏み出していた。


三歩。


空間が、固まる。


止まる。


灰緑が、止まる。


だが。


止めただけだ。


押してくる。


重い。


さっきより、重い。


圧が、骨を軋ませる。


《負荷上昇》


(うるさい)


息が荒い。


視界が揺れる。


固定が、削られていく。


押し込まれる。


突破口を探している。


回り込もうとする。


胸の奥が、焼ける。


(通すか)


アクセルが横に来る。


「下がれ」


短い。


だが、俺は動かない。


「無理だ」


固定が悲鳴を上げる。


空気にひびが入る。


灰緑が、あと一寸。


むぎへ。


心拍数が跳ねる。


どくん。


どくん。


頭が痛い。


吐き気がする。


発現したばかりだ。


制御なんてできていない。


分かってる。


でも。


関係ない。


俺はここちゃんとむぎを抱き込む。


覆う。


体ごと。


(絶対に守る)


灰緑が、固定を削り切ろうとした瞬間。


胸ポケットが、強く震えた。


キュ!


小さな体。


震えている。


怖いはずだ。


逃げたいはずだ。


それでも。


鳴いた。


拒むように。


空気が、反転する。


灰緑の先端が、触れた瞬間。


“入れない”。


砕けない。


崩れない。


ただ。


存在できない。


灰緑の一部が、すっと消える。


心臓が跳ねる。


俺の固定じゃない。


むぎだ。


灰緑が、揺らぐ。


理解できない。


むぎが、さらに強く鳴く。


キュ!


拒絶。


今度は中心が、抜け落ちる。


塊が、歪む。


維持できない。


存在が、薄くなる。


俺の固定は、押さえつける力。


むぎのは――


通さない力。


《解析》


くさえもんの声が響く。


《対象の存在拒絶を確認》


《暫定定義:否定》


(否定……)


灰緑が崩れる。


消える。


森に風が戻る。


固定が、解ける。


膝が、抜ける。


倒れかける。


アクセルが支える。


「……顔色が悪い」


息が荒い。


指が震える。


頭が、重い。


発現したばかりだ。


無理をしている。


分かってる。


それでも。


ここちゃんとむぎを抱き直す。


むぎの小さな体。


まだ震えている。


俺は額を寄せる。


「大丈夫だ」


声がかすれる。


「絶対に守る」


理屈じゃない。


計算じゃない。


命令でもない。


選んだ。


俺が。


森は静かだ。


だが、奥にまだ気配がある。


終わっていない。


それでも。


今は。


守れた。


俺の心臓は、まだ速い。


どくん。


どくん。


だが、目は逸らさない。


何度でも。


通さない。



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