表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/87

再集


森は静かだった。


だが、それは自然な静けさではない。


押さえ込まれたような沈黙。


霧が消えたはずの空間。


そこに、何もない。


それが、逆におかしい。


ノアが低く言う。


「……消えていない」


アクセルが舌打ちする。


「見えないだけか」


森の奥。


葉が揺れる。


風はない。


揺れが止まらない。


一定の方向へ。


こちらへ。


むぎが震える。


キュ。


短い。


次は強い。


キュッ。


胸ポケットの中で、小さな爪が布を掴む。


冷たい。


空気が、冷たい。


息を吸うと、喉がわずかに痛む。


灰緑。


今度は一本ではない。


糸のような霧が、四方から集まる。


絡み合う。


密度が上がる。


さっきより、明確だ。


アクセルが剣を抜く。


「囲まれているな」


テラが鋭く言う。


「動くな。散るな」


ノアの目が細くなる。


「……反応している」


「何にだ」


答えは、すぐに出た。


霧が、揺れる。


方向が定まる。


一斉に。


俺ではない。


アクセルでもない。


ノアでもない。


むぎ。


灰緑が、わずかに脈打つ。


呼吸のように。


そして、伸びる。


速い。


さっきとは違う。


迷いがない。


一直線。


「むぎ!」


胸ポケットの中で、むぎが鳴く。


キュッ!


悲鳴に近い。


距離が、足りない。


間に合わない。


そう思った瞬間。


俺は前に出ていた。


腕を上げる。


むぎを覆う。


背中に、冷気。


靄が触れる寸前。


アクセルが叫ぶ。


「レイン!」


テラの弦が鳴る。


ノアが手を伸ばす。


だが、届かない。


灰緑が、迫る。


視界の端で、霧が揺らぐ。


俺の視界が、狭まる。


ただ一つ。


胸ポケット。


むぎ。


触れるな。


その思考が、言葉になる。


「触るな」


空気が、歪む。


音が、削れる。


森の奥で、何かが裂ける。


灰緑の先端が、止まりかける。


だが、完全ではない。


軋む。


押し込まれる。


世界が、引き絞られる。


――止まれ。


その瞬間。


森の光が、凍りついた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ