拠点には布団がいる
俺たちは庭を手に入れた。
だが。
「寝る場所がない」
俺が言うと、アクセルがうなずく。
「床は硬い」
森基準どこ行った。
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ミアと別れ、家具を揃えるために商店が並ぶ通りに出る。
家具屋に入る。
木の匂い。
布の匂い。
店主が顔を上げる。
俺たちを見て、訳知り顔で笑う。
「おや、新居用かい?」
早すぎる。
ミアの拡散能力どうなってんだ。
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まずは寝台。
俺は値札を見る。
……まあ、想定内。
アクセルが寝台の上の布団を押す。
ぎし、と鳴る。
「硬い」
俺も押してみる。
泊まってる宿と変わらない。
「普通だろ」
アクセルはその奥にある寝台の前に移動。
先程のより少し厚みのある布団を押す。
「これは柔らかい」
横になってみる。
沈む。
「……」
数秒。
目を閉じている。
「おい」
アクセルがゆっくり起きる。
「これだ」
「森のがいいって言ってたの誰だ」
「森は森だ」
「家は家だ」
即答。
ぶれない。
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ノアは別の場所にいる。
クッションの山の前。
真剣な顔だ。
俺が近付くとチラリとこちらを見ながら言う。
「これはどう思う」
手にしているのは、小さな丸いクッション。
白くて、ふわふわ。
「……それは?」
「ここちゃん用だ」
真顔。
腕の中のここちゃんを見る。
ここちゃんが俺を見上げる。
きゅる。
……たしかに似合うが。
「買うか?」
ノアは少し考える。
「なくても問題はない」
間。
「だが、あった方が良い」
理屈が弱い。
《ふわふわ度、高》
(評価するな)
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むぎがポケットから逃げだし、クッションの山に潜り込もうとする。
キュ!
「あ!むぎ!」
店主が慌てる。
アクセルがひょいとむぎをつまむ。
「軽い」
「雑に持つな」
アクセルが俺の胸ポケットにむぎを戻す。
むぎは満足そうだ。
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結局。
寝台三つ。
最低限の食卓。
椅子四脚。
棚ひとつ。
以上。
「……多いな」
俺が言う。
アクセルが言う。
「運べるか?」
無理だ。
ノアが冷静に言う。
「荷車と馬が必要だ」
《人手、推奨》
(そうだな)
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ギルドへ戻る。
ドランに声を掛ける。
「何だ」
「引っ越し手伝いの依頼出したい」
ドランは鼻を鳴らす。
「自分でやれ」
「寝台三つだぞ」
ドランが一瞬止まる。
「……依頼、出せ」
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依頼が貼られる。
“白兎の庭、拠点引っ越し手伝い・報酬あり”
即、三人が手を挙げる。
「手伝う!」
「庭見たい!」
「うさぎいるんだろ!?」
目的そこか。
アクセルが小さく言う。
「また囲まれる」
俺は苦笑する。
「明日な」
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その日は宿に戻る。
部屋に入る。
ベッドに腰を下ろす。
「最後の宿か」
少しだけ、感慨がある。
アクセルが横になる。
「明日は柔らかい」
そこか。
ノアは宿のクッションを抱えている。
「まだ悩んでるのか」
「明日買う」
すでに決定しているようだ。
《拠点完成率、上昇》
(黙って寝ろ)
ここちゃんが寝台の上で丸くなる。
むぎが胸ポケットから顔を出す。
明日は引っ越し。
騒がしくなりそうだ。
でも。
それも悪くない。
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