表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

41/87

王都を出る


翌朝。


王都の門が開く。


石畳の道を抜け、外へ出る。


振り返ると、塔が高い。


石の街は朝日に白く光っている。


「終わったな」


俺が言う。


アクセルは前を向いたまま答える。


「用は済んだ」


ノアが静かに付け足す。


「王都は、拠点ではない」


短い滞在。


だが、名は残した。


それだけで十分だ。



街道を進む。


しばらくして分かれ道に出た。


右は大通り。


安全だが遠い。


左は森沿い。


早いが魔物が出る。


俺は足を止める。


「どうする」


アクセルは迷わない。


「左だ」


ノアが言う。


「魔物出現率は上がる」


アクセルはうなずく。


「出たら斬る」


即答。


俺は笑う。


「軽いな」


「問題ない」


確かに。


ミスリルリザードを倒したばかりだ。


狼程度でどうこうはない。


「じゃあ左で」


帰り道は決まった。



森沿いの道は、静かだ。


風が抜ける。


王都のざわめきが嘘みたいだ。


アクセルが小さく言う。


「落ち着く」


「森の匂い?」


「違う」


少し考えてから。


「見張られていない」


俺は一瞬だけ笑う。


ああ、そういうことか。


ノアが淡々と補足する。


「都市は常に視線がある」


アクセルはうなずく。


王は記憶すると言った。


王都は覚えた。


だが森は――


何も覚えない。



昼。


鍋を火にかける。


王都で買った乾燥ハーブを取り出す。


「今日はこれ入れるぞ」


アクセルが見る。


「薬だ」


「違う。神の調味料だ」


「神?」


「気分の話」


鍋にひと振り。


香りが立つ。


アクセルが一口食べる。


噛む。


「悪くない」


「だろ?」


アクセルは続ける。


「だが、鍋でも焼いても同じだ」


「そこか」


ノアが小さく言う。


「香りの層は増えている」


アクセルは首を傾げる。


「匂いは腹に入れば同じだ」


ブレない。


《味覚評価:良好》


(お前は黙れ)


《神認定:未確認》


(そこに食いつくな)



午後。


森の奥でガサリと音がする。


アクセルの手が自然に剣にかかる。


狼が二匹、飛び出す。


アクセルが一歩前に出る。


一閃。


早い。


「ほらな」


「本当に軽いな」


アクセルは剣を払う。


「この道の方が近い」


理由はそれだけだ。



干し果物の袋を確認する。


「数は足りるな」


アクセルが覗く。


「囲まれるのか」


「たぶんな」


アクセルは少し考える。


「なら、やるしかない」


「何を」


「囲まれたら、耐える」


戦闘前提か。


「歓迎だぞ」


アクセルは間を置く。


「……押し返さなくていいのか」


やっと理解した顔。


ノアが肩を揺らす。



数日後。


森を抜け、街道に出る。


遠くに、見慣れた外壁が見えた。


サイファだ。


石は粗い。


塔も低い。


だが。


「帰ってきたな」


アクセルが短く言う。


「静かだ」


「今はな」


ここちゃんが、きゅる、と鳴く。


むぎがキュ、と続く。


《予測:高確率で包囲》


(だからその言い方やめろ)


門番がこちらに気づく。


目が見開かれる。


次の瞬間――


門の内側が、ざわついた。


俺たちは顔を見合わせる。


アクセルが小さく言う。


「来るぞ」


俺は干し果物の袋を持ち直す。


「戦闘態勢?」


「歓迎態勢だ」


そして門をくぐる。


次は、静かじゃない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ