ギルドへの報告と帰還宣言
王宮を出て、その足で王都ギルドへ向かった。
腕の中にはここちゃん。
胸元にはむぎ。
二匹とも、王宮を出てから変わらず静かにしている。
「次はギルドか」
俺が言うと、アクセルが頷いた。
「ああ」
「素材を売る」
「あ、それが残ってたな」
王との謁見が終わって、少し気が抜けていた。
でも、まだ王都でやることはある。
鉱山から持ち帰ったミスリルリザードの素材。
それに、戻る途中で回収したコカトリスの素材もある。
あれをまだ処理していない。
それに。
さっき王宮で決まったことも、レオンハルトには伝えておいた方がいい。
「じゃあ行くか」
きゅる。
「ここちゃんもお疲れ」
胸元からも小さく。
キュ。
「むぎもな」
あと少しだ。
⸻
王都ギルドへ入る。
扉を開けた瞬間、何人かの視線がこっちへ向いた。
前より見られるようになった気がする。
(……慣れないな)
アクセルは気にせず受付へ向かう。
俺とノアも続いた。
受付の前で声をかける。
「すみません。素材を売りたいんですけど」
「素材ですか?」
「はい。ミスリルリザードとコカトリスの素材です」
「確認します」
少しして。
奥からレオンハルトが出てきた。
「お前たちか」
「どうも」
「王宮帰りか?」
「はい」
レオンハルトの視線が、俺たち三人を順に見る。
「それで、素材を売ると?」
「そうです」
アクセルが自分の魔法袋へ手をかけた。
「ここでいいか」
「ああ」
ノアも自分の魔法袋を出す。
「私の方にもある」
「そうだった」
鉱山で回収した素材は、アクセルとノアの魔法袋に分けて入れていた。
二人がそれぞれ魔法袋から素材を出していく。
ミスリルリザードの鱗。
爪。
魔石。
続いて、コカトリスの嘴。
爪。
魔石。
鉱山と、その帰りに回収して持ち帰った素材だ。
レオンハルトがそれを見る。
「これを売るんだな」
「はい」
ノアも頷いた。
「分かった」
アクセルも異論はないらしい。
「ああ」
これで一つ。
王都で残っていた用事が片づく。
⸻
査定を頼んで、俺たちは待つことになった。
具体的にいくらになるのかは分からない。
ミスリルリザードを倒した時だって、売るところまで考えて戦っていたわけじゃない。
コカトリスも同じだ。
ただ。
回収した素材を王都まで持ってきた以上、こうして処理できるところまで来た。
「なんか、やっと終わってきた感じするな」
アクセルがこちらを見る。
「何がだ」
「王都でやること」
数えてみる。
鉱山へ行った。
報告した。
昇格した。
買い物もした。
王にも会った。
そして今、素材を売っている。
「色々あったな」
「ああ」
短い返事。
でも、本当にそれに尽きる。
ノアは黙って座っている。
ここちゃんは俺の腕の中。
むぎも胸元から動かない。
しばらくして、査定が終わった。
持ち込んだ素材を売却する。
売却代金は、決めていた通りに分けた。
俺も自分の取り分を受け取る。
(虹色霊花の時ほどじゃないな)
一瞬そう思って。
(まあ、今回は分けた後だし、あれは伝説級だったしな)
あの時とは条件が違う。
(比べるものでもないか)
自分の取り分を、腰の魔法袋へしまうように手を動かす。
そのまま。
実際には無限収納へ送った。
外から見れば、いつも通り魔法袋へしまったようにしか見えない。
「よし」
これで今回の素材の換金も終わった。
⸻
「そうだ、レオンハルトさん」
「何だ」
「王宮で、鉱脈の話も決まりました」
レオンハルトが俺を見る。
「どうなった」
「確認の結果、ミスリルで間違いないそうです」
一拍。
「それと、三割の権利も王から正式に認められました」
レオンハルトは少し黙った。
「そうか」
「はい」
それ以上、俺から説明できることはない。
三割。
そこまでは決まった。
でも、その先がどうなるのかまでは聞いていない。
「とりあえず、決まったのはそこまでです」
「分かった」
レオンハルトも、それ以上は聞かなかった。
鉱脈の三割と。
今売った討伐素材。
同じ鉱山の一件で手にしたものだけど、話は別だ。
こっちは倒した魔物から回収した素材。
向こうは、王に認められた鉱脈の権利。
素材を売ったからといって、鉱脈の話まで終わるわけじゃない。
ただ。
今の俺たちにできることは、もうない。
⸻
「それと」
もう一つ。
レオンハルトへ伝えておく。
「俺たち、明日の朝にサイファへ向けて王都を出ます」
「そうか」
「王都での用事も、これでだいたい終わったので」
アクセルが頷く。
「ああ」
帰りの食料も、もう揃えてある。
二匹の分もある。
だから、ここからまた買い出しに行く必要もない。
あとは宿へ戻って、明日の朝に出ればいい。
そこで。
ノアを見る。
「ノア」
「何?」
「明日の朝、サイファへ向けて出るけど、ノアはどうする?」
ノアはこちらを見る。
答えるまで、ほとんど間はなかった。
「一緒に行く」
「サイファまで?」
「ああ。サイファまでは行く」
「分かった」
それなら。
帰りも三人と二匹だ。
正式に仲間になったとか。
そういう話ではない。
ノアにはノアの事情がある。
今はサイファまで一緒に行く。
それだけでいい。
アクセルも特に何も言わなかった。
ノアを見る。
「明日の朝だ」
「ああ」
話は決まった。
⸻
ギルドを出る。
腕の中で、ここちゃんが鼻を動かす。
胸元のむぎも、小さく顔を出した。
「終わったぞ」
きゅる。
キュ。
「王都で残ってる用事は……もうないよな?」
アクセルが答える。
「ああ」
ノアも短く続けた。
「ない」
「よし」
王都に来て十日目。
やることは、ほとんど終わった。
討伐素材の換金も終わった。
王宮で決まったことも伝えた。
帰る準備も、もうできている。
だから。
「明日の朝、サイファへ向けて出るか」
「ああ」
アクセルが答える。
ノアも頷いた。
ここちゃんは腕の中。
むぎは胸元。
明日の朝。
俺たちは王都を出る。




