昇格
翌日、王都冒険者ギルド。
朝からギルドマスターに呼び出された。
レオンハルトが書類を閉じる。
「鉱山調査依頼は正式に完遂と認定する」
アクセルが短く答える。
「了解」
ノアも頷く。
レオンハルトが続ける。
「コカトリス討伐」
「ミスリルリザード討伐」
「鉱山夫および冒険者の全員救出」
対象が並ぶ。
言葉にされると重い。
レインが小さく息を吐く。
レオンハルトの視線が向く。
「レイン」
「はい」
「今回の功績を加味し、ランクをCへ昇格する」
一瞬、部屋が静まる。
「……C?」
レインが聞き返す。
レオンハルトが淡々と答える。
「国家依頼の完遂」
「高難度魔物討伐への直接関与」
「救出行動の主導」
「十分だ」
アクセルが言う。
「妥当だ」
ノアも言う。
「適正な評価だな」
レインが頭をかく。
「なんか、急だな」
レオンハルトが椅子にもたれる。
「Dなんて低ランクじゃ王宮対応が面倒だ」
「Cなら多少は話が通る」
実務的な理由。
レインが苦笑する。
「そんなもんか」
レオンハルトの目が鋭くなる。
「実務上の都合はある」
「だが、功績は事実だ」
「お前が指示を出さなければ、生存者を救えなかった」
レインが少し黙る。
くさえもんの声が静かに響く。
《昇格処理、確認》
(……やめろ)
レオンハルトが続ける。
「白兎の庭は王都でも正式登録とする」
「ノアは一時所属扱いだ」
ノアが軽く頷く。
「観察継続のため、それが都合がいい」
レオンハルトが書類をまとめる。
「王宮への報告はすでにあげた」
「3割の鉱脈権利は王宮と交渉中だ」
「確定次第通知する」
レインが眉を上げる。
「それ、王族に睨まれないか?」
「取る」
レオンハルトが断言する。
「発見者の権利だ」
⸻
部屋を出る。
ギルドホールの視線が集まる。
「Cに上がったらしいぞ」
「やっぱりか」
噂は早い。
レインが肩をすくめる。
「落ち着かねぇな」
アクセルが言う。
「いずれ慣れる」
むぎが胸ポケットで鳴く。
キュ。
ここちゃんが腕の中で丸くなる。
きゅる。
レインが撫でる。
「Cだってさ」
ここちゃんは気にしていない。
「お前はSでもSSでも関係ないもんな」
ここちゃんが、きゅる、と鳴く。
⸻
ギルドを出る。
王都の空気が、ゆっくり動いている。
DからCへ。
たった一段。
だが、確実に上がった。
レオンハルトの言葉が頭に残る。
王宮への報告は、すでに上がっている。
つまり――
あとは王宮次第だ。
レインが空を見上げる。
「巻き込まれてるだけなんだがな」
ノアが横に立つ。
「だが、中心にいる」
レインがため息をつく。
「面倒だな」
ノアが言う。
「楽しそうじゃないか」
ここちゃんが、きゅる、と鳴く。
むぎが小さくキュと返す。
王都の鐘が鳴る。
次に動くのは――王宮だ。
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