表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
32/180

報告と問い(後半)


王都の宿。


夜。


窓の外は静かだ。


街灯の光が石畳に落ちている。


部屋の中は落ち着いていた。


アクセルは壁にもたれて腕を組んでいる。


むぎはレインの胸ポケットで丸くなっていた。


小さな体がゆっくり上下している。


ここちゃんはベッドの上。


白い毛を整えている。


ノアが静かに口を開いた。


「レイン」


レインが振り向く。


「ん?」


ノアの視線はここちゃんに向いていた。


「回復能力については、戦闘中にも確認している」


少し間。


「だが、石化解除は別だ」


空気がわずかに張る。


「説明してほしい」


声は冷静だった。


責めてはいない。


純粋な確認だ。


レインが頭をかく。


「説明って言われてもな」


ここちゃんが小さく鳴く。


きゅる。


ノアが続ける。


「石化は呪詛系の状態異常だ」


「通常は高位神聖魔法でしか解除できない」


「それも詠唱と術式を必要とする」


一拍。


「だが今回は」


「詠唱なし」


「術式反応なし」


「即時解除」


レインは苦笑する。


「俺も知らなかった」


ノアの眉がわずかに動いた。


「知らなかった?」


「できるって、今日初めて知った」


レインはここちゃんを見る。


「なあ?」


ここちゃんは首を傾げる。


ノアが静かに言う。


「魔力の流れも既存の神聖系とは違う」


「構造が確認できなかった」


レインが肩をすくめる。


「うちの子は、ちょっと特別なんだ」


ノアの視線がわずかに鋭くなる。


「“特別”では説明にならない」


レインの表情が少しだけ真面目になる。


「理論は分からない」


間。


「でも」


「俺にとっては家族だ」


それだけ言う。


部屋が静まる。


ノアがここちゃんを見る。


ここちゃんは、きゅる、と鳴いた。


白い耳がゆっくり動く。


ノアは小さく息を吐く。


「……分かった」


「今はそれでいい」


視線は消えない。


観察は続いている。


レインはここちゃんを撫でた。


「可愛いだろ?」


アクセルが横で笑う。


「それは否定できないな」


ノアは一瞬だけ目を逸らす。


「……否定はしない」


部屋の空気が、少しだけ緩んだ。


夜は静かに続いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ