白き奇跡(後半)
坑道を戻る。
足音が三つ、静かに響く。
通路の壁際に、Bランク冒険者たちの石像が立っている。
三体。
剣を抜いた姿勢のまま固まっている。
レインが足を止める。
「ここだな」
ノアが石像の表面を確認する。
「石化は進行していない」
「だが長時間の放置は危険だ」
アクセルが言う。
「先に入口側を確認する」
まだ解除はできない。
三人はさらに戻る。
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羽根が散乱した空間に出る。
コカトリスを討伐した場所だ。
その奥に、Cランク冒険者と鉱山夫の石像が並んでいる。
人数が多い。
盾を構えた姿。
振り向いた姿。
膝をついたままの鉱山夫。
レインが小さく息を吐く。
「……全員ここか」
アクセルがコカトリスの死体へ向かう。
「素材を回収する」
アクセルが嘴を外す。
爪を切り取る。
魔石を取り出す。
小型部位を魔法袋へ収める。
胴体はそのまま残す。
「残骸は王都兵に引き渡す」
アクセルが言う。
ノアが頷く。
「産卵期個体なら王宮も調査対象にする」
処理は終わる。
だが石像は動かない。
⸻
ノアが静かに言う。
「石化解除には高位神聖魔法が必要だ」
レインが聞く。
「神殿に頼めばすぐ来るか?」
ノアが首を振る。
「高位神聖魔法を扱える者は王都でも限られる」
「即日派遣は難しい」
アクセルが補足する。
「間に合う保証はない」
坑道が静まる。
レインが石像を見渡す。
重くなりかける空気。
そのとき。
レインの腕が軽くなる。
ここちゃんが、ぴょん、と地面に降りる。
とすっ。
石像の前へ歩く。
ノアが眉を寄せる。
「……何をする」
ここちゃんが、ふるっと身を震わせる。
次の瞬間。
白い光が広がる。
柔らかい。
だが坑道全体を包む純度。
《高位神聖反応を検知》
くさえもんの声が走る。
《解析中》
石像の表面に亀裂が走る。
パキ。
石が崩れ落ちる。
《術式構造、不明》
《詠唱なし》
《……理論外》
中から人の息が戻る。
「は……?」
Cランク冒険者が膝をつく。
鉱山夫が咳き込む。
次々と石が剥がれる。
全員、生身に戻る。
ノアが目を見開く。
「石化を……即時解除した?」
ノアの喉が、わずかに鳴る。
アクセルも言葉を失う。
レインは一瞬目を瞬かせる。
だがすぐに口元が緩んだ。
《危険度判定不可》
《発動源:白色個体》
ここちゃんが、きゅる、と鳴く。
レインがゆっくりここちゃんを見る。
白い毛が、まだ淡く光を残している。
「……お前、そんなことまでできるのか」
ここちゃんは首を傾げる。
レインの口元が自然と緩む。
「ただでさえこんなに可愛いのに」
「うちのここちゃん、まじで有能すぎるだろ」
ここちゃんが、きゅる、ともう一度鳴く。
《評価更新:白色個体、規格外》
「今さらかよ」
レインが小さく返す。
坑道の空気が、ふっと緩む。
絶望しかけた空気が消える。
ノアだけが、まだ静かにここちゃんを見ている。
理屈が、崩れている。
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