押し切る
ミスリルリザードが前脚で地面を砕く。
次の瞬間、銀の巨体がレインへ一直線に突進する。
《敵対優先度:レイン》
レインが歯を食いしばる。
「狙いが俺に固定されたな」
アクセルが即座にレインの前へ出る。
「俺が受ける」
アクセルの剣とミスリルリザードの頭部が激突する。
キィィィン!!
火花が散る。
だが、ミスリルリザードの突進は止まらない。
銀の巨体がアクセルを押し込む。
アクセルの足が石床を削る。
「重いな」
アクセルが低く言う。
ノアが右手を振る。
横から強い風圧がミスリルリザードの胴体を押す。
銀の巨体の進路がわずかに逸れる。
アクセルが横へ跳ぶ。
ミスリルリザードが岩壁に衝突する。
岩壁が崩れ、落石が降る。
レインが腹部を見る。
先ほど三人で入れた亀裂が残っている。
《腹部下方、損傷部拡大可能》
レインが息を整える。
「腹の亀裂はまだ広げられる」
アクセルが短く答える。
「開かせろ」
ミスリルリザードが振り向く。
尾が横薙ぎに迫る。
《尾部、右側接近》
レインが叫ぶ。
「右だ!」
アクセルが即座にしゃがむ。
銀の尾が頭上をかすめる。
尾が壁を砕く。
衝撃が坑道全体を震わせる。
ノアが雷撃を放つ。
雷撃が腹部の亀裂付近に直撃する。
だが、外側の鱗で弾かれる。
「外側からでは内部に届かない」
ノアが冷静に言う。
レインが両手を構える。
無属性魔法を一点へ圧縮する。
さらに圧縮する。
腕が震える。
《出力上昇、制御維持可能》
レインが言う。
「亀裂に合わせる。アクセル、腹だ」
アクセルが踏み込む。
腹部の亀裂に剣先を差し込む。
その瞬間。
レインが圧縮した無属性の魔力を亀裂へ叩き込む。
ドンッ!!
無色の衝撃が鱗の内側を打つ。
ミスリルリザードの腹部が明確に軋む。
銀の鱗に新たな亀裂が走る。
骨の砕ける感触が伝わった。
「亀裂が広がった」
アクセルが言う。
ノアが短く詠唱する。
「内部へ流す」
雷撃が亀裂の内側へ吸い込まれる。
内部で爆発音が響く。
ミスリルリザードが咆哮する。
巨体が暴れ、尾を振り上げる。
《尾部、上方から落下》
レインが叫ぶ。
「上から来る!」
アクセルが横へ転がる。
銀の尾が地面を砕く。
衝撃で砂煙が上がる。
ミスリルリザードの動きが一瞬鈍る。
レインが低く言う。
「今だ」
アクセルが全身の力を込める。
腹部の亀裂へ渾身の突きを放つ。
剣が亀裂を押し広げる。
レインが最後の魔力を押し込む。
無色の圧が内側から膨張する。
パキッ。
明確な破断音が響く。
ミスリルリザードの腹部の鱗が裂ける。
血が噴き出す。
ノアの雷撃が内部で連続して炸裂する。
銀の巨体が大きくのけぞる。
一歩、後退する。
さらにもう一歩。
ミスリルリザードの脚が崩れる。
銀の巨体が横倒しになる。
ドォォォン!!
地面が揺れる。
砂煙がゆっくり落ちる。
《敵対反応、消失》
レインが息を吐く。
「終わった…」
アクセルが剣を引き抜く。
「終わったな」
ノアが周囲の魔力を確認する。
「他に反応はない」
崩れた岩壁の向こうに、巨大な銀色の鉱脈が露出している。
ミスリルの塊が天井まで続いている。
アクセルが鉱脈を見る。
「このミスリル鉱脈は、王国の軍備を大きく変える規模だ」
ノアが静かに言う。
「国家が黙っていない規模になる」
レインが苦笑する。
「鉱山失踪事件の調査に来ただけなんだけどな」
むぎが胸ポケットで鳴く。
キュ。
坑道の奥で、銀色が静かに光っていた。
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