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巣の奥


黄色い瞳が闇の中で瞬いた。


羽音。


湿った空気が揺れる。


「来る」


アクセルの声が落ちる。


「視線を合わせるな」


ノアは静かだ。


影が落ちる。


急降下。


コカトリス。


《上方反応》


「上!」


俺が叫ぶ。


キィィィン!!


アクセルの刃が受け止める。


衝撃が床を震わせる。


ぱき、と嫌な音。


石像の肩にひび。


「石像に気をつけて!」


俺が叫ぶ。


「人だ!」


アクセルが攻撃を受け止めながら答える


「分かっている」


コカトリスが跳ぶ。


石像の背後へ回り込む。


《右、接近》


「右!」


アクセルが半歩ずらす。


尾が床を抉る。


石片が飛ぶ。


石像の足元すれすれ。


危なすぎる。


「上に誘え!」


アクセルが足場へ跳ぶ。


石像から距離を取る。


ノアが短く息を整える。


詠唱は短い。


空気が震える。


コカトリスの翼の下で、風が逆巻く。


羽ばたきが乱れる。


上昇気流が崩れる。


「数秒しかもたない」


「十分だ」


アクセルが滑る。


低い姿勢。


一閃。


血が散る。


コカトリスが暴れる。


尾が振られる。


《左、振動増大》


「左へ流せ!」


ノアが風を走らせる。


尾が壁へ逸れる。


岩が砕ける。


石像は無事。


二撃。


三撃。


刃が閃く。


最後に、横薙ぎ。


首が落ちる。


羽音が止まる。


黄色い光が消える。


静寂。


砂が、ゆっくり落ちる。


《反応消失》


「……終わりか」


俺は石像を見る。


ひびはある。


だが崩れていない。


小さく息を吐く。



「……Bランクは奥か」


アクセルが奥を見る。


コカトリスが出てきた暗がりへ進む。


通路は削られている。


羽根が散乱。


湿度が高い。


奥に小さな空洞。


三体。


Bランクの石像。


剣を抜いた姿勢。


盾を構えたまま。


振り向いたまま。


止まっている。


「奥へ押し込まれたな」


ノアが足元を見る。


「短時間で石化」


「奇襲か」


俺は壁を見る。


そして止まる。


「……なんかこの削れ方、今までと違くない?」


爪痕ではない。


丸く、鈍く削られている。


床に、銀色の粉。


ノアがしゃがむ。


指先で触れる。


「ミスリル」


むぎが胸ポケットで震える。


キュ。


さっきより強く。


ゴリ……。


低い音。


石を噛み砕く。


重い。


確実に、奥から。


《高密度、硬質反応》


(硬質度ってなんだよ?)


アクセルが言う。


「コカトリスじゃない」


俺は頷く。


「……見にいくしかないな」


石像はそのまま。


奥へ進む。



羽根はない。


代わりに砕けた鉱石。


壁は滑らかに削られている。


削られているというより。


喰われている。


通路が広がる。


天井が高くなる。


開けた空間。


中央。


巨大な影。


鈍く光る銀の鱗。


四足。


低い体躯。


口元で鉱石を噛み砕く。


ゴリ……。


音が腹に響く。


ゆっくりと首がこちらへ向く。


瞳が鈍く光る。


石化の黄色ではない。


深く、重い光。


むぎが強く鳴く。


キュッ。


《超高硬度個体、推定Aランク上位以上》


(おい、推定ってなんだ)


ノアの声が低く落ちる。


「……ミスリルリザード」


アクセルが剣を構える。


「なるほどな」


俺は息を吸う。


空気が重い。


圧がある。


コカトリスとは違う。


純粋な質量。


純粋な硬度。


銀の怪物が、ゆっくりと立ち上がる。


地面が震える。


鱗が軋む。


「来るぞ」


アクセルが踏み込む。


銀色の巨体が、一歩前へ出た。



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