表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/84

増えている


石になった鉱山夫を横目に、ゆっくり進む。


足音は三つ。


やけに大きい。


坑道は緩やかに下っている。


湿度が上がる。


「……奥、広いな」


アクセルが低く言う。


視線は足元。


目は上げない。



開けた採掘場に出る。


天井が高い。


足場が組まれている。


そして。


「……おい」


声が漏れた。


一人じゃない。


二人。


三人。


五人。


石像。


倒れかけた姿勢のまま。


走ろうとしたまま。


盾を構えたまま。


「……多い」


アクセルの声が重い。


ノアがゆっくり周囲を見る。


触れない。


観察する。


「石化方向が一定していない」


「……どういうことだ」


俺が小さく聞く。


ノアは少しだけ間を置いて答える。


「一方向からではない」


「だが、群れとは限らない」


アクセルが足場を見上げる。


「移動速度が高い」


「一体でも、これだけ散らせる」



石化した冒険者の盾が床に転がっている。


Cランクの紋章。


最初の調査隊だろう。


盾は前に構えられている。


だが、石像の向きは違う。


振り向いた瞬間。


止まった。


「……追い込まれたか」


俺が呟く。


アクセルが低く言う。


「まるで狩りだ」


短い。


冷たい。



ノアが壁の爪痕を指差す。


浅い。


だが鋭い。


「痕跡からして単体の可能性が高い」


「複数ではない」


俺は息を吐く。


「一体で、これかよ……」


アクセルが答える。


「産卵期なら凶暴化する」


「縄張り意識も強い」


「近づいた者を排除する」


ああ。


それで王都近郊。


繁殖。


嫌な想像が浮かぶ。



むぎが胸ポケットで小さく震える。


キュ。


さっきより、強い。


俺はそっと胸を押さえる。


「……近い」


アクセルの耳が動く。


「右上」


俺は目を上げそうになって、止める。


壁を見る。


足元を見る。


視線は逸らす。



微かな羽音。


近い。


ゆっくり。


だが確実に。


石像の並ぶ空間で。


まだ石になっていない“何か”が動く。


ノアが低く言う。


「視線を合わせるな」


アクセルが一歩前に出る。


「俺が前に出る」


ここちゃんが腕の中で、きゅる、と鳴く。


坑道の奥。


暗闇の中で。


黄色い何かが、わずかに動いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ