増えている
石になった鉱山夫を横目に、ゆっくり進む。
足音は三つ。
やけに大きい。
坑道は緩やかに下っている。
湿度が上がる。
「……奥、広いな」
アクセルが低く言う。
視線は足元。
目は上げない。
⸻
開けた採掘場に出る。
天井が高い。
足場が組まれている。
そして。
「……おい」
声が漏れた。
一人じゃない。
二人。
三人。
五人。
石像。
倒れかけた姿勢のまま。
走ろうとしたまま。
盾を構えたまま。
「……多い」
アクセルの声が重い。
ノアがゆっくり周囲を見る。
触れない。
観察する。
「石化方向が一定していない」
「……どういうことだ」
俺が小さく聞く。
ノアは少しだけ間を置いて答える。
「一方向からではない」
「だが、群れとは限らない」
アクセルが足場を見上げる。
「移動速度が高い」
「一体でも、これだけ散らせる」
⸻
石化した冒険者の盾が床に転がっている。
Cランクの紋章。
最初の調査隊だろう。
盾は前に構えられている。
だが、石像の向きは違う。
振り向いた瞬間。
止まった。
「……追い込まれたか」
俺が呟く。
アクセルが低く言う。
「まるで狩りだ」
短い。
冷たい。
⸻
ノアが壁の爪痕を指差す。
浅い。
だが鋭い。
「痕跡からして単体の可能性が高い」
「複数ではない」
俺は息を吐く。
「一体で、これかよ……」
アクセルが答える。
「産卵期なら凶暴化する」
「縄張り意識も強い」
「近づいた者を排除する」
ああ。
それで王都近郊。
繁殖。
嫌な想像が浮かぶ。
⸻
むぎが胸ポケットで小さく震える。
キュ。
さっきより、強い。
俺はそっと胸を押さえる。
「……近い」
アクセルの耳が動く。
「右上」
俺は目を上げそうになって、止める。
壁を見る。
足元を見る。
視線は逸らす。
⸻
微かな羽音。
近い。
ゆっくり。
だが確実に。
石像の並ぶ空間で。
まだ石になっていない“何か”が動く。
ノアが低く言う。
「視線を合わせるな」
アクセルが一歩前に出る。
「俺が前に出る」
ここちゃんが腕の中で、きゅる、と鳴く。
坑道の奥。
暗闇の中で。
黄色い何かが、わずかに動いた。
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