次の目的地
市場を出て、そのまま駅へ向かった。
買った物はテラたちが分けて持っている。
ここちゃんは俺の腕の中。
むぎは胸元にいるままだ。
きゅる。
キュ。
「明日の朝でいいよな?」
テラが尋ねる。
「ああ。そのつもりだ」
昨夜、鉄床亭の部屋も一泊延長してある。
今日のうちに切符を取り、ガンダルフのところへ寄る。
あとは出発の準備をすればいい。
⸻
駅へ着き、ボルカニア行きの受付へ向かう。
一度来ているので、今度は迷わない。
「ボルカニアまで、明日の朝の便を取りたい」
「人数は?」
「五人。それと小動物が二匹」
受付のドワーフが手元を確認する。
「まだ空いてるぞ」
「じゃあ五人分頼む」
料金を払い、切符を受け取る。
「出発は朝。到着は昼を少し過ぎた頃だ」
「ああ。前に聞いた」
「動物は車内で放さず、自分たちで管理してくれ」
「分かった」
切符をまとめて受け取る。
これで。
明日の朝にはグランザを出ることになった。
「本当に早いな」
テラが切符を見る。
「船で何日もかかったあとだから、余計にな」
朝に乗って。
昼過ぎには次の街。
まだ実際に乗っていないせいか、いまいち実感がない。
「乗れば分かる」
アクセルが言う。
「それ、この前も言ってたな」
「ああ」
どうやら本人も楽しみにしているらしい。
⸻
駅を出たあと、冒険者ギルドへ向かう。
グランザへ着いた日に来て以来だ。
受付でガンダルフに会いたいと伝えると、少し待ってから奥へ通された。
「おう。もう出るのか?」
ガンダルフが俺たちを見る。
「ああ。明日の朝、ボルカニアへ行くことにした」
「グランザは見たか?」
「それなりにな」
魔導列車。
露店。
生活魔導具。
市場。
初めて見る物はかなり多かった。
「散湯器も欲しくなった」
「ははっ。あれは便利だからな」
「持って帰れるかは、買う時に確認しろって商人に教えてもらった」
「それが確実だ」
ガンダルフが頷く。
「で、ボルカニアへ行ったら、古い地図や昔の地形に詳しい人を探したい」
「ああ。最初に言ってた話だな」
「向こうのギルドで、話ができる人を探してもらえるか?」
「そのつもりで用意してある」
ガンダルフが卓の引き出しを開けた。
中から一通の封書を取り出す。
「ボルカニアの冒険者ギルド宛てだ」
「もう書いてくれたのか」
「行くって言ってただろ」
封の表には、ボルカニア冒険者ギルド宛ての文字。
裏にはグランザ冒険者ギルドの印が押されている。
「中には、古い地図や昔の地形について調べたい連中だと書いてある。向こうで話を聞けそうな奴を探してもらえ」
「助かる」
紹介状を受け取る。
古い地図そのものをガンダルフに見せる必要はない。
ボルカニアで詳しい人間が見つかれば、その時に必要な範囲で話せばいい。
「ボルカニアって、どんな街なんだ?」
テラが尋ねる。
「でかいぞ」
ガンダルフが即答した。
「大陸の中央にあるだけあって、人も物も集まる。列車も各地へ伸びてるし、工房や研究所も多い」
「グランザより魔導具も多い?」
ノアが尋ねる。
「そりゃ多い。ここは港町だからな。ボルカニアは職人も研究者も集まる」
「それなら、地図以外にも見る物はありそうだな」
「ああ。ただし」
ガンダルフが俺たちを見る。
「でかい街だからって、何でも一か所にあると思うなよ。知りたいことが決まってるなら、まずギルドで聞け」
「分かった」
闇雲に歩き回るより、その方が早い。
⸻
「ほかに聞いとくことはあるか?」
ガンダルフに尋ねられ、少し考える。
今のところ。
ボルカニアまでの列車は取った。
紹介状もある。
着いてから、古い地図や地形に詳しい者を探す。
「今は大丈夫そうだ」
「なら、あとは行ってこい」
「ああ。世話になった」
「ドランに会ったら、ガンダルフが名前くらいは覚えてたって言っとけ」
「それでいいのか?」
「直接会ったこともねぇからな」
ガンダルフが笑う。
「同じ時代に冒険者やってた奴が、今も中央大陸でギルドマスターやってる。それが分かっただけでも面白ぇよ」
「伝えとく」
俺たちは席を立った。
ここちゃんを抱き直す。
胸元では、むぎが鼻を動かしている。
きゅる。
キュ。
「じゃあな」
「おう。気をつけて行け」
ガンダルフに見送られ、部屋を出た。
⸻
鉄床亭へ戻る。
部屋へ入ると、まずここちゃんを敷物へ下ろした。
きゅる。
むぎも胸元から出し、壁際の敷物へ戻す。
キュ。
市場で買った荷物も、ここでようやく収納へ入れた。
リイス。
麦。
野菜。
香辛料。
一つずつ片づけていく。
「これで明日の準備は大体終わりだな」
テラが言う。
「ああ」
切符もある。
紹介状もある。
朝に出て、昼過ぎにはボルカニア。
船旅の時のように、何日分もの食事を準備する必要もない。
「明日は朝飯食って、そのまま駅だな」
「ああ」
グランザで過ごす最後の夜になる。
初めて来たドワーフ大陸。
その玄関口だったこの街から。
明日は、さらに大陸の中へ進む。
次の目的地は。
中央の街、ボルカニアだ。




