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次の目的地


 四つの陸地がつながった地図。


 その横には、現代の地図。


 そして。


 壁画に残されていた三角の印。


 俺は、ドワーフ大陸の上に置いた指をそのままにしていた。


「次に確かめるなら、この大陸か」


 ノアが頷く。


「可能性は高い」


 精霊大陸の転移迷宮付近。


 サイファ付近。


 二つの印は、ノアが転移する前と後の場所に重なった。


 なら。


 ドワーフ大陸に重なる印も、無視はできない。


「行ってみるか」


 顔を上げる。


「待て」


 すぐにテラの声が飛んだ。


「まだ何も分かってない」


「行くって決めたわけじゃないだろ」


「今の言い方は決めたやつの言い方だ」


「そうか?」


「そうだ」


 テラは腕を組んだまま、地図へ視線を落とした。


「行くこと自体に反対しているわけじゃない」


 指先で、中央大陸とドワーフ大陸の間を示す。


「だが、まずどうやって渡る」


 そこにあるのは海だ。


 歩いて越えられる距離ではない。


「船だろ?」


「どこから出ている」


「……知らん」


「誰でも乗れるのか」


「知らん」


「向こうに着いたあと、自由に動けるのか」


「それも知らん」


 テラが俺を見る。


「何も知らないじゃないか」


「だから今から調べるんだろ」


「最初からそう言え」


 肩をすくめた。


 確かに。


 ドワーフ大陸へ行く。


 それだけ決めても仕方がない。


 船がどこから出るのかすら知らない。


「それに」


 テラが今度はドワーフ大陸を指す。


「この印も、大陸のどこかを大まかに示しているだけだ」


「ああ」


「そこに何があるのかも分かっていない」


 遺跡なのか。


 魔法陣なのか。


 それとも。


 まったく別の何かなのか。


 今の段階では、何一つ断定できない。


 分かっているのは。


 太古の地図にあった三角の印を、今の大陸の位置へ合わせると。


 その一つがドワーフ大陸に重なる。


 それだけだ。


「ノア」


 テラが顔を向ける。


「それでも調べたいんだな?」


「ああ」


 ノアは迷わなかった。


「転移迷宮」


「サイファ」


 二つの地図へ視線を落とす。


「印の位置が一致した」


 そして。


 ドワーフ大陸へ。


「ここも確かめたい」


「分かった」


 テラが頷いた。


「なら俺も協力する」


 ノアが顔を上げる。


「ただし」


 テラは続けた。


「行けば何か見つかる、で動くな」


「先に情報を集める」


「ああ」


「船」


「向こうの事情」


「それから、印がある辺りについて何か情報がないか」


 ノアが頷いた。


「分かった」


「となると」


 椅子の背へ体を預けた。


「ドワーフ大陸そのものを知ってるやつに聞くのが早いな」


 カインが地図へ目を落とす。


「私も、詳しいことまでは分かりません」


「以前いた国にも、ドワーフ製の武器や魔道具は運ばれてきていましたが」


 一度、言葉を切る。


「職人本人が国の外へ出てくることは多くなかった、とは聞いています」


「閉鎖的ってことか?」


 アクセルが尋ねる。


「少なくとも」


 カインは少し考えてから答えた。


「外から品物が入ってくることと、向こうの事情を知っていることは別だと思います」


 顎へ手を当てた。


 ドワーフ大陸から届いた軽石。


 保冷庫に使われている金属。


 蛇口。


 洗濯桶。


 ドワーフ製の品物なら、この街にもある。


 交易があるのは間違いない。


 だが。


 物が来ることと。


 自分たちが向こうへ行けることは別だ。


「知らないなら、知ってるやつに聞けばいい」


 アクセルが椅子の背へ体を預ける。


 テラが横目で見た。


「珍しくまともだな」


「珍しくは余計だ」


「でも誰に聞く?」


 腕を組んだ。


 魔道具屋の店主。


 あそこなら、ドワーフ大陸から品物が入ってくる経路くらいは知っているかもしれない。


 だが。


 もっと直接聞ける相手がいる。


「……ドランだな」


 アクセルが頷く。


「あいつ、ドワーフだしな」


「あいつって言うなよ」


「本人の前じゃ言ってない」


「そのうち言うだろ、お前」


 地図から顔を上げた。


 サイファの冒険者ギルドを預かるギルドマスター。


 ドラン。


 ドワーフでありながら、今はこの街で暮らしている。


 ドワーフ大陸の今の事情をどこまで知っているのか。


 船のことまで分かるのか。


 それは聞いてみなければ分からない。


 だが。


 最初に話を聞く相手としては、一番いい。


「ドランなら」


 指を折る。


「向こうへ行く方法」


「入るのに何か条件があるのか」


「大陸の中がどうなってるのか」


「その辺は知ってるかもしれない」


「そうですね」


 カインが頷く。


「まずドランさんに聞くのがよいと思います」


「ギルドマスターですし、渡航について何か情報を持っている可能性もあります」


「ああ」


 テラも頷いた。


「魔道具屋へ聞くなら、その後だ」


「品物の経路を知っていても、大陸の中まで詳しいとは限らない」


「じゃあ決まりだな」


 ノアを見る。


「まずドランに聞く」


「それから」


 地図の上。


 ドワーフ大陸へ視線を戻した。


「本当に行けるのか考えよう」


「分かった」


 ノアが頷く。


 まだ。


 目的地が決まったわけではない。


 遺跡があるとも。


 あの印の先に何かが残っているとも。


 分かっていない。


 それでも。


 止まっていた地図の先に。


 次に調べる場所だけは見えた。


 ドワーフ大陸。


 まずは。


 そこへ行く方法を知るところからだった。

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