魔道具屋
店の扉を開ける。
からん。
小さな鐘が鳴った。
「いらっしゃいませ。」
奥から男が姿を見せる。
三十代ほどだろうか。
革の前掛けを身に着けた店主は、手を拭きながらこちらへ歩いてきた。
カインが取り外した蛇口を差し出す。
「修理をお願いしたいんですが。」
店主は蛇口を受け取ると、一目見て頷いた。
「ああ、この型ですね。」
慣れた手つきで工具を取り出す。
ねじを外し、中を覗き込む。
「部品交換で済みますよ。」
「夕方にはお返しできます。」
レインはほっと息を吐いた。
「良かった。」
店主が店の奥へ手を向ける。
「店内をご覧になりますか。」
「生活用の魔道具を中心に扱っています。」
「ああ。」
レインたちは店内へ足を踏み入れた。
棚が並ぶ。
魔石の淡い光が店内を照らしていた。
並んでいるのは生活を支える魔道具ばかり。
魔導コンロ。
魔導蛇口。
魔導湯沸かし。
魔導照明。
魔導洗濯桶。
見たことのない物もある。
だが。
(……似てるな。)
形は違う。
材質も違う。
動力も電気ではなく魔石だ。
それでも。
生活を便利にするという発想は、元の世界にもあった。
(結局。)
(考えることは同じか。)
店主が棚へ目を向ける。
「魔道具といえば、やはりドワーフですね。」
「中央大陸でも作られていますが、本場にはまだ及びません。」
「ドワーフの皆さんは魔法が得意ではありません。」
「その代わり、魔石を利用した魔道具の研究を続けてきたと聞いています。」
ノアが静かに頷く。
「種族ごとの歩み。」
「興味深い。」
テラが一つの桶の前で足を止めた。
「これは?」
店主が蓋を開く。
「魔導洗濯桶です。」
桶の内側には洗濯板のような細かな凹凸。
中央には丸い押さえ具が付いていた。
「衣類をこちらで押さえて。」
「魔石の力で桶がゆっくり回転します。」
「凹凸へ擦り付けながら汚れを落とす仕組みですね。」
ノアが桶の中を覗き込む。
「水流も?」
「ええ。」
「水の魔石で水流も起こします。」
「手洗いよりずっと楽ですよ。」
アクセルが桶を眺める。
「よく考えたもんだ。」
店主が笑う。
「これは旧型です。」
「最新型は回転方向を自動で切り替えますし、水流も強弱を付けられます。」
レインは店内をゆっくり見回した。
魔法ではない。
魔石を使い、人の暮らしを支える技術。
その積み重ねが、この店には並んでいた。
ふと。
一つの魔道具の前で足が止まる。
四角い箱。
厚みのある扉。
側面には魔石を収める差込口が二つ。
札には、
――魔導保冷庫。
「これは……。」




