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魔導保冷庫


 俺は一つの魔道具の前で足を止めた。


 四角い箱。


 厚みのある扉。


 側面には魔石を収める差込口が二つ並んでいる。


 札には、


 ――魔導保冷庫。


「これは?」


 店主が笑みを浮かべた。


「食材を冷やして保存する魔道具です。」


「肉や魚、果物などを長持ちさせられます。」


 扉を開く。


 中は金属で覆われていた。


 ひんやりとした空気が流れ出る。


「外側は、ドワーフ大陸で採れる軽石です。」


 店主が側面を軽く叩く。


「断熱性が高く、その名の通り軽い石なんですよ。」


「内側は金属ですので、それなりに重さはありますが、石だけで作るよりずっと軽くなっています。」


 持ち手を握る。


 少しだけ持ち上げた。


「……」


「思ったより軽いな」


 店主が頷く。


「据え置き用ですから、普段動かすことはありませんが、掃除の時などは助かると好評ですね。」


 続けて、保冷庫の側面を指差す。


「こちらが、今流通している最新型になります。」


 視線を向ける。


「魔石が二つ?」


「ええ。」


「普段は一つだけで保冷します。」


「もう一つ魔石を入れますと、冷却能力が上がりまして。」


 一拍。


「下段だけですが、冷凍もできます。」


「冷凍?」


「はい。」


「肉や魚を長く保存できます。」


「氷も作れますので、夏場は重宝されています。」


 保冷庫の中を見つめた。


 冷えた果物。


 凍らせた肉。


 便利なのは間違いない。


 視線が値札へ落ちる。


「……高いな。」


 店主が苦笑する。


「軽石も金属もドワーフ大陸から運ばれてきますし、こちらは最新型ですから。」


「保冷だけの型より少し値が張ります。」


 アクセルも値札を見る。


「高いな。」


 テラが腕を組んだ。


「便利ではある。」


 カインも頷く。


「食材を無駄にしなくて済みそうですね。」


 ノアが保冷庫を見つめる。


「長期保存ができるのは魅力。」


 俺は腕を組んだまま保冷庫を見る。


 便利だ。


 それは認める。


 だが。


 ここはサイファだ。


 市場も近い。


 困れば買いに行けばいい。


「……夕方まで考えるよ。」


「蛇口も取りに来るしな。」


 店主が頷く。


「かしこまりました。」


 俺たちは魔道具屋を後にした。


 店を出てしばらく歩く。


 ここちゃんはノアの腕の中。


 むぎは俺の胸元だ。


 アクセルが口を開いた。


「悩むくらいなら買えばいい。」


「ミスリル鉱脈の金があるだろ。」


 苦笑する。


「あるにはあるけどな。」


 その一言で。


 テラとカインが足を止めた。


「……ミスリル鉱脈?」


 カインも驚いたように俺を見る。


「初耳ですね。」


 ノアが二人へ視線を向けた。


「話してなかった?」


 頭をかく。


「そういや。」


「ミスリルリザードを倒したあと、鉱脈が見つかってな。」


「発見者の権利で三割もらった。」


 テラは呆れたように息を吐く。


「お前……。」


「そういう話は先にしろ。」


 カインは苦笑した。


「それなら資金に余裕があるのも納得です。」


 肩をすくめる。


「買えないわけじゃない。」


「でも。」


「便利だからって勢いで買うのも違うだろ。」


 そう言って、帰り道を歩き出した。

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