蛇口が壊れた
朝。
レインは台所へ向かった。
蛇口をひねる。
……出ない。
「ん?」
もう一度ひねる。
やはり水は出なかった。
「壊れたか」
アクセルが椅子から立ち上がる。
「魔石切れか」
レインは流し台の下を覗き込む。
青い魔石は淡く光っている。
「いや。魔石は生きてる」
ノアが歩いてくる。
蛇口へ手を添え、静かに目を閉じた。
「魔力は流れてる」
「なら蛇口側だな」
レインが軽く回す。
かた。
小さく音が鳴った。
カインがしゃがみ込む。
蛇口を一度眺め、小さく頷く。
「古い型ですね」
「中の部品でしょうね」
レインが聞き返す。
「直るのか」
「ええ」
カインは穏やかに答える。
「魔道具屋へ持って行けば、修理してもらえますよ」
「買い替えじゃないんだな」
「部品が残っていればですけどね」
「ドワーフ大陸製は丈夫ですから、修理しながら長く使う人が多いですよ」
テラが蛇口へ目を向ける。
「だから残ってるのか」
カインが頷く。
「これも、おそらくドワーフ大陸製ですね」
レインは蛇口を見つめた。
そういえば。
「……魔道具屋って行ったことないな」
アクセルが頷く。
「俺もない」
ノアが顔を上げる。
「私は精霊大陸で一度」
「研究用の魔道具を見に行った」
テラも続く。
「俺もある」
「生活用品が多かったな」
カインが微笑む。
「サイファでは私も初めてですね」
レインが笑う。
「じゃあ案内頼む」
「分かりました」
レインは取り外した蛇口を手に持つ。
ここちゃんが足元へ駆け寄る。
きゅる。
「散歩じゃないぞ」
ぴょん。
聞いていない。
レインの足元を一周する。
胸ポケットから、むぎも顔を出した。
キュ。
アクセルが小さく笑う。
「一緒らしいな」
ノアがしゃがみ込み、ここちゃんを抱き上げる。
「店の中は歩かせられない。」
きゅる。
ここちゃんは大人しく腕の中へ収まった。
レインは苦笑する。
「行くか。」
白兎の庭は、初めての魔道具屋へ向かった。




