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白兎の庭の歩み


 しばらくの間。


 食堂には穏やかな空気が流れていた。


 重い話は終わった。


 秘密も明かした。


 それでも誰も席を立たない。


 レインは苦笑した。


「なんか変な感じだな」


「そりゃそうだろ」


 アクセルが言う。


「今までで一番驚いた」


「否定しない」


 レインも頷いた。


 するとカインが静かに口を開く。


「ですが、少し安心しました」


「安心?」


「はい」


 カインは微笑む。


「色々納得がいきましたので」


「私もだな」


 テラが腕を組む。


「聞きたいことも山ほどある」


 ノアも頷いた。


「情報不足だった」


「だろうな」


 レインは肩を竦める。


「俺も全部話したことなかったし」


 少し考える。


 そして。


「せっかくだ」


「今までのことも整理するか」


 全員がレインを見る。


「まず、この世界に来てすぐだ」


 レインはここちゃんを撫でながら話し始めた。


「森に転移した」


「右も左も分からない状態だったな」


 今思えばよく生きていたと思う。


「そこで負傷したアクセルを見つけた」


「倒れてはいない」


 アクセルが即座に言う。


「負傷はしてただろ」


「していた」


「じゃあいいだろ」


 レインは苦笑する。


 テラが吹き出した。


「そこでここちゃんがアクセルを癒した」


 カインが目を瞬く。


「最初から回復を?」


「ああ」


「俺も驚いた」


 ここちゃんはきゅる、と鳴く。


「それが縁でアクセルと行動するようになった」


「借りを返しているだけだ」


「長い借りだな」


「まだ終わっていない」


 短い返事だった。


 だがアクセルらしい。


「その後、新規ダンジョンを見つけた」


「むぎがいきなり走り出して焦って追いかけた」


 レインは続ける。


「そこでノアと出会った」


 ノアが小さく頷く。


「精霊大陸の転移迷宮調査中だった」


「転移罠で飛ばされた」


「あの時は本当に意味が分からなかったな」


 突然現れたノア。


 転移迷宮。


 知らない言葉ばかりだった。


「その件で王都に呼び出された」


「大陸間転移について話を聞くためだ」


 カインが静かに聞いている。


 この辺りは知らない話だ。


「そこで依頼を受けた」


「コカトリスとミスリルリザードだ」


 アクセルが頷く。


「あの蜥蜴は硬かった」


「硬かったな」


 レインも同意した。


「そこでここちゃんが回復と石化解除をした」


 テラが頷く。


「その話は聞いてた」


「ギルドでも有名だったぞ」


「そんなにか?」


「そんなにだ」


 即答だった。


 レインは苦笑する。


 ここちゃん本人は膝の上で丸くなっていた。


「その後だ」


「テラがノアを連れ戻しに来た」


「来たな」


 テラも頷く。


「仕事だったからな」


「それで俺達はノアに同行した」


 そして。


「靄の調査だ」


 少しだけ空気が変わる。


「そこで固定を得た」


 レインは手を開く。


 淡い光が指先に浮かぶ。


「むぎもあの時だな」


 胸ポケットから顔を出したむぎを見る。


 むぎは何も知らない顔で鼻を動かしていた。


「それで靄を消した」


 ノアが頷く。


「助かった」


 テラも頷いた。


「あれは危なかった」


 レインは話を続ける。


「その後にカインと出会った」


 カインが微笑む。


「商人として、ですね」


「ああ」


「それからティリのダンジョン」


「試験機」


「帝国」


 一拍。


「そこでカインと別れた」


「はい」


 カインが静かに頷く。


「それからテラを呼んだ」


「呼ばれたな」


「そして王都近郊の遺跡調査だ」


 古い遺跡。


 読めない文字。


 謎の地図。


 魔法陣。


 色々あった。


「それで」


 レインは最後にカインを見る。


「今だな」


 短い言葉だった。


 だが十分だった。


 カインは小さく笑う。


「戻りました」


 レインは周囲を見回した。


 アクセル。


 ノア。


 テラ。


 カイン。


 ここちゃん。


 むぎ。


「これで全員揃った」


 改めて口にすると不思議な気分だった。


 本当に色々あった。


「こうして聞くと」


 カインが呟く。


「本当に色々ありましたね」


「ああ」


 レインは頷く。


「ありすぎた」


 テラが笑う。


「一年も経ってないんだよな」


「濃すぎる」


 アクセルが言う。


 ノアが頷く。


「異常密度」


「評価するな」


 レインが即座に返す。


 拠点に笑いが広がった。


 白兎の庭は。


 いつの間にか、ずいぶん賑やかになっていた。


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