買い出し
安息日を明日に控えた日。
レインとカインは市へ出ていた。
招待する相手は決まっている。
鍛冶屋。
大工。
家具屋。
酒も料理も少し多めに準備するつもりだった。
通りを歩く。
肉。
野菜。
酒。
必要な物を確認していく。
その時だった。
「あ!」
聞き覚えのある声。
振り向く。
パン屋の娘だった。
「こんにちはー!」
「よう」
元気だな。
相変わらずだった。
少し世間話をする。
すると。
「聞きましたよ!」
「何をだ」
「明日のこと!」
早かった。
レインは少し嫌な予感がした。
「鍛冶屋さんから聞きました!」
やっぱりか。
パン屋の娘は笑う。
「いいなぁー」
ちらり。
こちらを見る。
「楽しそうだなぁー」
ちらり。
もう隠す気もない。
レインはため息を吐いた。
カインは隣で笑いを堪えている。
まぁ、いつもパン屋には世話になっている。
1人増えたところで大して変わらないしな。
「来るか?」
「行く!」
即答だった。
早い。
「ありがとうございます!」
満面の笑みだった。
「じゃあまた明日!」
パン屋の娘は手を振りながら店へ戻っていった。
レインはその背中を見送る。
「どれだけ話が回るのが早いんだよ」
《サイファ拡散点》
《気配察知》
(なんだそれ)
《突撃予測九十パーセント》
レインは空を見た。
嫌な説得力があった。
《情報伝達速度、高》
(知ってる)
ギルド受付。
サイファの情報が集まる場所。
そして広がる場所。
知らないはずがない。
レインは少し考える。
職人三人。
パン屋の娘。
ここまでは確定だ。
そして。
ミア。
たぶん来る。
ドランも怪しい。
「……増やすか」
予定を変更する。
肉を追加。
野菜も追加。
酒も追加。
さらに買う。
追加で買う。
カインが不思議そうに聞いた。
「多くないですか?」
「保険だ」
《適切な判断です》
(お前のせいだ)
返事はなかった。
⸻
拠点へ戻る。
買い込んだ荷物を並べる。
かなり多い。
食卓を見る。
少し考える。
「無理だな」
食卓だけでは足りない。
最初から分かっていた気もする。
レインは庭へ出る。
月例市で使った台を運ぶ。
木箱も並べる。
即席の席を作る。
庭でやる方が早い。
アクセルが運ぶのを手伝う。
「増えたか」
「ああ」
「増えた」
否定できない。
ノアが台を見ながら言う。
「庭の方が広い」
「だな」
テラも頷く。
カインは苦笑していた。
人数はまだ増える気がする。
そんな予感しかしない。
レインは並んだ木箱を見る。
足りるだろうか。
少し不安だった。
だが。
まあ何とかなるだろう。
白兎の庭の安息日は。
少し賑やかになりそうだった。




