招待
楽しかった月例市も終わった。
通りの賑わいは消え。
白兎の庭もいつもの日常へ戻っている。
朝。
庭でストレッチをしながら。
レインはふと思い出した。
「……そういえば」
月例市。
鍛冶屋の親父との約束だ。
今度招待する。
あの時そう言った。
約束は守らないとな。
大工と家具屋にも声をかけないと。
串の準備と。
酒も準備しよう。
レインは立ち上がった。
「ちょっと出てくる」
アクセルが頷く。
「ああ」
⸻
最初は鍛冶屋だった。
工房へ入る。
親父がすぐに気付く。
「おう!」
顔が明るい。
分かりやすい。
「来たか!」
期待していたらしい。
レインは笑った。
「約束したからな」
「いつにする?」
親父は即答した。
「次の安息日だ!」
「三日後!」
早い。
迷いがなかった。
「分かった」
「大工と家具屋にも声かけろよ!」
「ああ」
最初からそのつもりだった。
⸻
次は大工だ。
木材を削っていた手を止める。
「どうした」
レインは鍛冶屋との約束を話す。
ついでに。
いつもの礼も兼ねていることを伝えた。
大工は笑う。
「おう」
「酒はたくさん準備してくれよ」
「そこか」
「そこだ」
即答だった。
レインも笑う。
⸻
最後は家具屋だった。
店へ入る。
家具屋は顔を上げる。
「おや」
そしてレインの周囲を見回した。
「また増えるんですか?」
「増えない」
レインが即答する。
家具屋は少し残念そうだった。
何故だ。
「鍛冶屋との約束だ」
事情を説明する。
招待の話もする。
家具屋は穏やかに笑った。
「それはありがたい」
「楽しみにしていますよ」
レインは頷く。
「待ってる」
家具屋は手を振った。
レインも軽く手を上げる。
これで全員だ。
安息日まであと三日。
白兎の庭は少しだけ賑やかになりそうだった。




