完売
串は順調に減っていく。
スパイス串。
はちみつレンネ串。
どちらも評判は悪くない。
客は途切れない。
その時だった。
「おお、盛況だな」
聞き覚えのある声。
ドランだった。
隣にはミアもいる。
「こんにちは!」
今日も元気だった。
ミアは屋台の前で立ち止まる。
そして鼻をひくつかせた。
「あれ?」
「今回は前と違う匂いがしますね」
「新しいの作ったからな」
レインが答える。
ミアの目が輝いた。
「ください!」
「両方!」
即決だった。
カインが笑いながら代金を受け取る。
焼き上がった串を渡す。
ミアはまずスパイス串を食べる。
「おいしいです!」
次にはちみつレンネ串。
一口。
少し目を見開く。
「あっ」
「こっちも好きです」
「甘いですね」
ドランも食べる。
無言で二本とも完食した。
「どうだ」
レインが聞く。
ドランは頷く。
「酒ならこっちだな」
スパイス串を指す。
「こっちは子供が好きそうだ」
はちみつレンネ串。
予想通りだった。
ミアも頷いている。
「どっちも売れそうですね」
「売れてるぞ」
レインが周囲を見る。
実際。
客は減っていなかった。
ドランがニヤリと笑う。
「またやるって言っただろ?」
レインが顔をしかめる。
「言ってない」
「気が向いたからまた出したんだろ?」
覚えていたらしい。
ちょっとドヤ顔なドラン。
レインは手を振る。
「ほら邪魔だ」
「ギルマスなんだから仕事しろ」
ミアが吹き出した。
ドランも笑う。
周囲もつられて笑っていた。
⸻
その後も客は続く。
匂いにつられて来る者。
ここちゃんにつられて来る者。
両方につられて来る者。
気づけば。
仕込んだ肉はかなり減っていた。
前回より多い。
だが。
減り方も早い。
レインが箱の中を確認する。
「だいぶ減ったな」
《終了予測修正》
(またか)
《二時間十一分》
(伸びてるじゃねぇか)
《修正しました》
(適当だな)
返事はなかった。
客は続く。
串は減る。
焼く。
渡す。
焼く。
渡す。
気づけば。
「最後です!」
カインの声が響いた。
最後の一本が渡される。
屋台の前から客が消える。
炭だけが静かに赤く光っていた。
「完売だな」
アクセルが言う。
「ああ」
レインは息を吐いた。
前回より多く仕込んだ。
それでも売り切れた。
悪くない。
いや。
かなり良かった。




