二度目の月例市
朝。
月例市。
サイファの通りは朝から賑わっていた。
荷車が行き交う。
呼び込みの声が飛ぶ。
焼いた魚の匂い。
果実酒の香り。
色々な匂いが風に乗って流れていく。
その中で。
白兎の庭は慌てない。
準備は終わっていた。
テラが串を並べる。
アクセルが炭を確認する。
レインは味付けした肉を見直す。
カインは代金箱を置いた。
店先にはノア。
腕の中にはここちゃん。
むぎはテラの肩に乗っている。
前回とは違う。
何をするか。
全員が知っていた。
「始めるか」
「ああ」
炭の上へ串を置く。
じゅう、と音が鳴る。
肉の脂が落ちる。
香りが立つ。
スパイス。
そして。
はちみつとレンネの甘酸っぱい香り。
フィルニルも混ざる。
風が運んでいく。
《販売終了予測》
(またか)
《一時間三十二分》
(まだ始まってないぞ)
《勘です》
(はいはい)
レインは串を返した。
その時だった。
「あっ!」
声が飛ぶ。
「商人のあんちゃん!」
振り向く。
市場の商人だった。
「戻ってたのか!」
「戻りました」
カインが笑う。
「今回はちゃんと出るんだな!」
「そのつもりです」
商人は満足そうに頷いた。
「じゃあ一本くれ!」
早かった。
まだ焼き始めたばかりだ。
カインが笑いながら代金を受け取る。
最初の客だった。
⸻
しばらくすると。
香りに引かれた客が足を止め始める。
「二種類あるのか?」
冒険者が聞く。
ノアが答える。
「ある」
「こちらはスパイス」
「こちらは甘い」
分かりやすい。
「どっちが人気だ?」
「まだ分からない」
正直だった。
冒険者は笑う。
「じゃあ両方だな」
カインが代金を受け取る。
レインとアクセルが焼く。
渡す。
流れは悪くない。
⸻
「うさぎ!」
今度は子供だった。
ノアの腕の中のここちゃんへ一直線。
ここちゃんは特に気にしていない。
撫でられる。
きゅる。
「かわいい!」
「かわいいな」
親も笑う。
そのまま屋台を見る。
「何売ってるんだ?」
「串」
ノアが答える。
「二種類ある」
「甘いのはどっち?」
ノアははちみつレンネ串を指した。
「こちら」
「じゃあそれ!」
子供が即決した。
親も一本買う。
レインは思わず笑った。
くさえもんの分析。
少し当たっているかもしれない。
⸻
串は順調に減っていく。
スパイス串。
はちみつレンネ串。
どちらも売れていた。
テラが新しい串を補充する。
アクセルは黙々と焼く。
カインは代金を受け取る。
ノアは説明する。
ここちゃんは撫でられる。
むぎはテラの肩の上で周囲を眺めていた。
忙しい。
だが。
悪くない。
レインは串を返す。
香りが上がる。
笑い声も聞こえる。
月例市はまだ始まったばかりだった。




