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月例市での役割


 試作は終わった。


 フィルニルを少し減らす。


 レンネを少し増やす。


 はちみつは入れすぎない。


 焼いて、食べて、また少し変える。


 そうして。


 みんなの意見を元に味が決まった。


 月例市で出すのは二種類。


 カインと作ったスパイス串。


 そして、子供向けの串だ。


 食卓の上には炭焼台。


 炭はまだ赤く光っている。


 ノアの膝の上では、ここちゃんが撫でられて目を細めていた。


 むぎはテラの肩で丸くなっている。


「問題は役割だな」


 レインが言う。


 月例市は一日だ。


 だが忙しい。


 誰が何をするか決めておく必要がある。


「販売は私がやりましょう」


 カインが言う。


「助かる」


 レインは頷く。


 元商人だ。


 その辺は任せた方が早い。


《カイン、販売担当推奨》


《商人経験あり》


(また出たな)


「串打ちは私でいいな」


 テラが言う。


「ああ」


 今日も手際が良かった。


 任せて問題ない。


《テラ、串打ち担当推奨》


(だな)


「焼く」


 アクセルが短く言う。


「俺も焼く」


 レインも頷いた。


 注文が重なれば一人では回らない。


 炭焼台は二台使う予定だ。


《アクセル、焼き担当推奨》


《処理能力高》


(処理能力ってなんだよ)


《大量処理能力です》


(まあ間違ってないな)


「私は?」


 ノアが聞く。


「説明係じゃないか?」


 レインが答える。


「二種類あるしな」


 ノアは小さく頷いた。


「問題ない」


《ノア、商品説明担当推奨》


《ここちゃん併用時、集客率向上》


(そこかよ)


 ノアは何も知らずにここちゃんを撫でている。


 ここちゃんは気持ち良さそうだった。


 否定はできない。


 たぶん集まる。


 一通り決まった。


 珍しくまともだった。


 レインは少し感心する。


(で、お前は?)


 少しの間。


《……》


(考えてるな)


《役割なし》


 レインは危うく吹き出しかけた。


(即答かよ)


《……》


(なんだ、落ち込んだか?)


 また少し間が空いた。


《落ち込んでいません》


(落ち込んでるだろ)


 返事はなかった。


 その代わり。


《販売終了予測》


(ん?)


《一時間三十二分》


(根拠は)


《勘》


(雑だな)


 レインは小さく息を吐いた。


 くさえもんが戻ってきた。


 それはいい。


 いいのだが。


 相変わらずだった。


「どうした」


 アクセルが聞く。


 レインは首を振る。


「なんでもない」


 説明しても伝わらない。


 そもそも説明できない。


 月例市はもうすぐだ。


 まずはそっちに集中することにした。


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