何を売る
薬草の納品を終える。
報酬を受け取り。
ギルドを出る。
そのまま市場へ向かった。
「買い物か」
アクセルが聞く。
「ああ」
レインは頷く。
「月例市の準備だ」
久しぶりの出店。
やると決めた以上。
何を売るか考えなければならない。
市場は賑わっていた。
野菜。
果物。
肉。
香草。
様々な品が並んでいる。
レインは歩きながら考える。
前回はスパイス串だった。
評判も良かった。
だが。
「同じだけじゃ面白くないんだよな」
テラが言う。
「何か考えがあるのか」
「子供向けだな」
レインは答えた。
「前はスパイスだっただろ」
「ああ」
「辛味は子供にはきつい」
市場を見回す。
何かないか。
甘いもの。
食べやすいもの。
頭の中で考える。
真っ先に浮かんだのは焼肉のタレだった。
甘い。
食べやすい。
子供は好きだ。
だが。
「無理だな」
レインは即座に諦める。
醤油がない。
再現できる気がしなかった。
なら。
はちみつ。
甘味はこれでいい。
近くの店先に並ぶレンネを見る。
少し酸味も欲しい。
そこまではいい。
だが。
レインは首を傾げた。
「……なんか足りないな」
肉だ。
肉を焼く。
香りが立つ。
食欲を引く。
そこが弱い。
しばらく考える。
そして。
「ああ」
フィルニルだ。
刻んで少し混ぜる。
香りも出る。
悪くない。
むしろ結構うまそうだった。
《フィルニル香気》
《集客上昇確率70%》
レインは空を見上げた。
(お前その数字どこから出した)
《推定》
(雑だな)
返事はなかった。
アクセルが聞く。
「決まったか」
「ああ」
レインは頷く。
「スパイス串はそのまま」
「もう一種類作る」
カインが興味深そうに聞く。
「どんなものですか」
「はちみつ」
「レンネ」
「フィルニル」
「塩」
カインが少し考える。
「面白そうですね」
「ああ」
ノアも頷いた。
「甘味と酸味」
「悪くない」
テラも小さく笑う。
「試作だな」
「そうなる」
レインも笑った。
どうせ一度で決まらない。
いつものことだ。
アクセルが言う。
「食えば分かる」
「だな」
結局それだった。
市場を歩く。
はちみつを買う。
レンネを買う。
必要な肉も確認する。
準備は整った。
あとは作るだけだ。
レインは荷物を持ち直した。
「また試作だな」
「ああ」
アクセルが頷く。
「問題ない」
ノアも言う。
テラは少し笑っている。
カインもどこか楽しそうだった。
白兎の庭は市場を後にする。
久しぶりの月例市へ向けて。
まずはいつもの試作から始まろうとしていた。




