表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
176/189

発言回数調整


 夕食後。


 食卓にはお茶だけが残っていた。


 アクセルはソファで横になっている。


 ここちゃんはその横で丸くなっていた。


 むぎはテラの肩。


 ノアは静かに本を読んでいる。


 カインがお茶を淹れる。


「どうぞ」


「ありがとう」


 テラが受け取る。


 短いやり取り。


 以前より自然だ。


 だが、まだ少しぎこちなさも残っている。


 レインは湯飲みを傾けた。


 まあ。


 そのうち慣れるだろう。


 そう思った時だった。


《関係構築率40%》


 レインの手が止まる。


《テラ・カイン間》


《関係構築率40%》


「いたのか」


 思わず声に出た。


 全員がこちらを見る。


「誰がだ」


 アクセルが顔だけ向ける。


「どうした?」


 テラが首を傾げる。


「何かありましたか?」


 カインも見る。


 ノアも静かに視線を向けていた。


 レインは固まる。


「あ」


 しまった。


「いや」


「何でもない」


 慌ててお茶を飲む。


 全員が変な顔をした。


 だが深くは聞かない。


 すぐに元の空気へ戻った。


 レインは小さく息を吐く。


(お前久しぶりに出てきたと思ったら何言ってんだ)


《発言回数調整》


(は?)


《失敗》


 レインが額を押さえる。


(何してた)


《レベル上昇を試行》


(レベル?)


《レベルが上がりませんでした》


(お前レベルなんてあったのか?)


 一拍。


《ありません》


 レインは天井を見上げた。


(いやなんなんだよ)


 返事はなかった。


 その時だった。


 むぎがテラの肩の上で動く。


 キュ。


 小さく鳴いて。


 前足でテラの髪を引っ張った。


「ん?」


 テラが顔を上げる。


「どうした?」


 手を差し出す。


 むぎは迷わずその手へ乗った。


 そして。


 食卓の上へ降ろされる。


 キュ。


 鼻がひくひくと動く。


 何かを探すように。


 ゆっくり歩き始めた。


 全員の視線が集まる。


 むぎは止まらない。


 真っ直ぐ。


 カインの方へ向かっていく。


 カインが目を瞬く。


 だが動かない。


 むぎを驚かせないように。


 じっとしている。


 やがて。


 小さな前足がカインの指にかかった。


 むぎはそのまま袖へ。


 腕へ。


 よじ登っていく。


「え」


 カインが固まる。


 むぎは止まらない。


 肩。


 首元。


 さらに上。


 深青の髪を前足で掴む。


「え、え」


 完全に追いついていない。


 むぎは器用によじ登る。


 数秒後。


 頭の上へ到達した。


 しっかりと髪を掴む。


 落ちないように足を踏ん張る。


 そして。


 胸を張るように顔を上げた。


 キュ!


 満足そうだった。


 食卓が静まる。


 最初に口を開いたのはテラだった。


「……珍しいな」


 むぎは基本的にレインの胸ポケットだ。


 テラの肩に乗るようになったのも最近のこと。


 そのむぎが。


 自分からカインへ登った。


 レインも少し驚いていた。


 カインは頭の上を見ようとして失敗する。


「これは……どうすればいいのでしょう」


「そのままでいい」


 アクセルが即答した。


「そうなのですか」


「ああ」


 ノアも小さく頷く。


「問題ない」


 問題ないらしい。


 カインは困ったように笑った。


 頭の上では。


 むぎが相変わらず満足そうに髪を掴んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ