戻ったのか
翌朝。
寝台の確認を終えたアクセルは満足そうに頷いた。
「じゃあ次だ」
レインが嫌な予感を覚える。
「何だ」
「登録」
短かった。
「ああ」
レインも納得する。
確かに必要だった。
カインは以前、一時同行という形で白兎の庭へ加わっていた。
だが帝国から戻った後、その登録は解除されている。
正式に戻るなら。
改めて登録しなければならない。
「行くか」
レインの言葉で全員が歩き出した。
サイファの朝は賑やかだった。
市場の準備をする者。
荷車を引く者。
店を開ける者。
そんな中。
「あれ?」
野菜を並べていたおばちゃんが顔を上げた。
「商人のあんちゃん!」
カインが振り返る。
「戻ったのかい!」
少し驚いて。
それから笑う。
「はい」
「戻りました」
「そうかいそうかい!」
おばちゃんは嬉しそうに笑った。
「よかったじゃないか!」
さらに少し進む。
今度は子供達だった。
「あっ!」
「カインさんだ!」
「久しぶりー!」
元気な声が飛んでくる。
カインも思わず手を振った。
「お久しぶりです」
子供達はそれだけで満足したらしい。
笑いながら走り去っていく。
市場へ近付くと。
今度は見知った商人達が声を掛けてきた。
「おーい!」
「カイン!」
手を振りながら近付いてくる。
「戻ったなら月例市出すのか!?」
レインが吹き出した。
「そこかよ」
「大事だろ!」
即答だった。
周囲も頷いている。
どうやら本気らしい。
カインは苦笑した。
「まだ決まっていません」
「ですが」
一瞬考える。
「機会があれば」
その言葉に。
「よし!」
「聞いたぞ!」
「楽しみにしてるからな!」
好き勝手な声が飛んでくる。
カインは困ったように笑った。
だが。
その表情はどこか嬉しそうだった。
魔王の国でも。
外の世界でも。
自分の居場所が分からなかった。
だが。
ここでは。
「戻ったのか」
と声を掛けられる。
「久しぶり」
と言われる。
それが少しだけこそばゆい。
そして。
少しだけ嬉しかった。
やがて。
冒険者ギルドが見えてくる。
見慣れた建物。
見慣れた看板。
レインが肩越しに振り返った。
「ほら」
「次は正式登録だ」
カインは苦笑しながら頷く。
「そうですね」
そして。
白兎の庭はギルドの扉を開いた。




