何度目だ
翌日の朝。
拠点の前に荷車が三台並んでいた。
家具屋。
大工。
鍛冶屋。
三人勢揃いである。
「来たぞ」
「来たな」
「来た」
短い。
非常に短い。
そして。
作業は始まった。
カインの部屋へ入る。
客用布団。
客用の枠。
それを確認するなり。
大工と鍛冶屋が解体を始めた。
迷いがない。
慣れた手付きだった。
あっという間に分解される。
回収。
終了。
カインは目を瞬かせた。
「早いですね」
「何度もやってるからな」
鍛冶屋が当然のように答える。
そこへ。
新しい寝台が運び込まれた。
家具屋が配置する。
大工が枠を取り付ける。
寸法も確認しない。
迷いもない。
そして。
その横では鍛冶屋と家具屋が袋を開けていた。
中には大量のバネ。
慣れた手付きで並べていく。
固定する。
確認する。
終わる。
流れるような作業だった。
枠が完成する。
同時に。
ポケットコイルが置かれる。
布団を乗せる。
終了。
誰も無駄な動きをしない。
あまりにも自然だった。
レインがぽつりと言う。
「早いな」
三人が同時に振り返った。
「何度目だと思ってやがる!」
見事に揃っていた。
一瞬静まり返る。
そして。
レインが吹き出した。
ノアも肩を震わせる。
テラも笑った。
カインも思わず笑う。
職人達は不満そうな顔をしていた。
だが。
どこか誇らしげでもあった。
アクセルが寝台へ近付く。
手で押す。
座る。
寝る。
寝返りを打つ。
全員が見守る。
いつもの光景だった。
しばらくして。
アクセルが起き上がる。
「これだ」
一言だった。
大工が鼻を鳴らす。
鍛冶屋が腕を組む。
家具屋が胸を張る。
「当たり前だ!」
三人同時だった。
そして。
荷物をまとめる。
「じゃあな」
「何かあったら来い」
「壊すなよ」
嵐のように去っていく。
部屋には静けさだけが残った。
カインはしばらくその場に立っていた。
新しい寝台を見る。
アクセルが退いたばかりの寝台へ近付く。
手で押す。
沈み方を確かめる。
それから。
そっと腰を下ろした。
心地良い。
柔らかい。
だが沈みすぎない。
思わず小さく笑う。
そして。
少しだけ嬉しそうに目を細めた。
その様子を見て。
レインも何も言わずに笑った。




